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45 後悔


 昨日、参加すると聞いたばかりなのに、もう今日にも辺境の地に出立するという。

目の前には白い軍服を着た彼が立っていた。無駄に似合っている。

 白は出発の時だけで、戦場につけば黒い軍服に着替える。血が目立たないようにと……。


「お願い。リーンハルト、これだけは持って行って」


 泣きはらした目で差し出す。レティシアが研究を重ねたアミュレットだ。

 今世では死なないために入学当初からずっと研究に研究を重ねてきた。しかし、リーンハルトのために使われるならば本望だ。彼が無事に戻る手助けになるのなら。


「貰えない」

「どうして、私が嫌いだから? いっておくけれど私光魔法だけは学年で最強よ」

「知ってる」

「え?」

「だから、貰えない。それはお前が入学当初から取り組んでいた研究の成果じゃないか。卒業の時発表するといい」


「リーンハルト……、知っていたの?」

 リーンハルトがふいと顔をそらす。

「もう行く」

 レティシアはぎゅっと彼の白い軍服を掴む。


「だめ。リーンハルトがこれ貰ってくれなきゃ離れない! 私もっとすごいの作れるから、これはいらない」

 幼稚でみっともない真似をしていると思う。だけれど必死だった。


「はあ? なにいってんだよ。年単位で光の魔力をアミュレットにしみこませたんだろ。そんなに簡単につくれるものではないだろ」

「え? それも知ってたの?」

 レティシアが驚いて目を見張る。リーンハルトが珍しく一瞬、返答に詰まった。


「その研究は、お前が思う以上に注目されてる」

 その言葉は少し言い訳めいて、彼の頬が少し赤い。


「じゃあ、どれだけすごいものか実証してよ!」

「そうきたか」

どうあっても受け取らせようとするレティシアに、リーンハルトが呆れたようにため息を吐く。


「リーンハルト、受け取ってあげなさい」

 義母のオデットが見かねて言う。


「いや、しかし母上、これはレティシアが何年もかけて研究した……」

「あなたが使ってくれなければ、いったい誰が使うっていうのよ!」

 レティシアが彼の言葉を遮るように叫ぶ。


「分かったよ。分かったからレティシアもう叫ぶな」

 やっとリーンハルトが根負けしてくれた。

「うん、ありがとう」

 レティシアは涙ぐみ何度も何度も頷いた。

 

「これは受け取る。その代わり……」

 リーンハルトがレティシアにだけそっと耳打ちをする。

 今度こそ本当にリーンハルトは出発してしまった。去って行く馬車をレティシアは泣きながら見送った。


「レティシア、任期が終わって無事に帰ってきたら、なぜ俺を嫌っているのか教えてくれ。それとも嫌いなふりをしているのか?」

 

 それが彼が残した言葉。


 ずっとずっとリーンハルトを傷つけてきた。彼はレティシアに嫌われていると思っていたのだ。だが、仲が悪くなるということはそういうことで、それに気づかなかった自分は最低だ。


「ごめんなさい。ごめんなさい。リーンハルト。私ったらまた取り返しのつかないことを……」


 もっと他にやりようがあったはず。独りよがりで、なんて愚かなのだろう。


 ――大切なあなたを傷つけた。何度くりかえしても私は過ちを犯す。


 もう、ループなんて終わればいい。



♢♢♢



 学園の休みが明けた。

 レティシアは教室に入り、友人のもとに向かう。


「ねえ、エレイン。私、討伐隊に入ろうと思う」


 レティシアが思いつめた口調で言うと、エレインが驚きに目を見開いた。


「奇遇ね。私もよ。どうにかなるでしょ」

と花が綻ぶように笑う。


「え? でも危ないわよ」

 レティシアは目を瞬いた。

「何言っているのよ。光魔法師は後方支援だし、あなたが行くなら心強いわ!」

「うん、私も」


 二人の少女はがっちりと握手した。

 


 その日から剣術を習うことにした。しかし、レティシアはもう基準に達していてブラッシュアップということになった。


 そして二人は朝晩乗馬や体力づくりに勤しんだ。


「ねえ、レティシア。あなた授業受けている時より、生き生きしていない?」

「うん、私、体動かすこと大好き。体力には自信があるの」


 強くなって、リーンハルトに会いに行くのだ。







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いろんなことを失敗しながら少しづつ学んでいくレティシアは尊い
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