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43 友達

 その後レティシアは剣術と勉強を順調にこなし見事自力で、魔法師学園に入学する。


 それも「C」クラスからのスタートで大いに喜んだ。

 しかし、よくよく考えてみれば、いつも試験問題は同じで、出る問題も分かっているのに解けない。自分は、やはり馬鹿なのだと思う。


 しかし、それを知らない家族は、

「すごいじゃないか、レティシア、よく頑張ったな」

「あなた、一生懸命勉強していたものね。本当に偉いわ。今日の夕食はごちそうにしましょう」


 義父母はくすぐったいくらいにべたぼめである。


「おめでとう」


 振り返るとリーンハルト。ぶっきらぼうなもの言いだが、祝福してくれている。

 え、なんで少し赤くなって照れているの? 

 まだ嫌われ方が足りていないの? 

 それとも嫌いな相手にも単に礼儀正しいだけ? 


 何かを間違えたのかとどきどきし、レティシアは混乱した。


「レティシア、おめでとう。でもあなた社交はどうするの?」


 ミザリーが言う。顔は祝福するように微笑んでいるのにその金茶の瞳は凍えるように冷たかった。

 彼女はレティシアが魔法師学園に行っても、社交をしてもどちらも気に入らないのだ。

 

 何がそれほど気に食わないのか、どうしてそれほど嫌われるのか……。



 今回はCクラススタートということで、煩わしいマリーナとのかかわりもなくなるだろう。

 そして学園が始まると、やはり彼女は「D」クラスにいた。これ以降彼女がクラスを上がることはない。彼女もレティシアと同じく勉強が苦手なのだ。Dクラスに落ちないように頑張るしかない。

 レティシアは入学早々、アミュレットの研究に勤しむことにした。



 そして入学前の適性検査の結果から、バートンに声をかけられた。

 光属性だと早速目をつけられる。バートンの実験に付き合うという事はリーンハルトとの接点になってしまう。どうしたものかと悩んだ。


 思えば前回はなんでも義弟に相談していた。今回は自分で答えを出さなければならない。ついつい悩むとリーンハルトを目で追ってしまう。レティシアは自分の甘さを戒めた。


 しかし、今までのようにバートンの推薦で入学したわけではないから、協力は義務ではない。だが、学園の教師であり高名な学者なので非常に断りにくい。


 それにもしかしたら、呪いのヒントになるようなことを教えてもらえるかもしれない。天秤にかけた結果、再びバートンの研究に協力することにした。協力とは言っても、ただデータを取られるだけだが……。要はリーンハルトと鉢合わせしなければいいだけだ。


 あの剣術の試合以来、レティシアは彼の目に触れないようにしている。もう充分嫌われたのだから、あとは顔を合わせないのが一番だ。同じ学園にはいるものの学年も属性もクラスも違う。

 何よりも大切な義弟の成長を陰ながら見守ることに決めている。


 あとは彼に「可哀そうな人」などと思わせないように努力するだけだ。レティシアは自分に言い聞かせた。

 

 

 学園のカフェテラスで遠目にリーンハルトを見かけることがある。前回は彼と一緒に昼食をとり、サロンで茶を飲んだ。


 リーンハルトは友人が多く、今世でもアランと仲がよい。よく一緒にいる。それも前回と一緒だ。


 そこでふと不安になる。アランに忠告しておいた方がいいだろうか? リーンハルトもシュミット家も恩返しなど望んでいないと。

 足を踏み出しかけて、ふと立ち止まる。それこそ、彼らにとっては余計なおせっかいだ。


 なんだかんだとリーンハルトとかかわりを持ちたいの?


 レティシアは爪が食い込むほどぎゅっと己の手を握り締める。不甲斐ない。


「レティシアはどうしたの? 座らないの?」


 Cクラスに入って間もなくエレイン・ボルドー子爵令嬢と友人になった。


「あ、うん、ちょっとぼうっとしてしまって」


 レティシアは、ローストチキンの載ったトレイをテーブルに置き、エレインの隣に腰を下ろす。


「あなた、弟さんと仲たがいしたの?」

「え?」

「よく目で追っているわよ」

 慌てて首を振る。

「違うの。あの、ずっと前からそりが合わなくて仲が悪いのよ」

 無意識の行動だった。もっと気をつけねば。


「そう。謝る機会をうかがっているのね」

 そう言って、エレインがサラダを口に運ぶ。

 

「ち、違うわ。まさか! あっちが悪いのよ。それに仲が悪いのはもとからよ。今にはじまったことじゃないわ。ここ数年、会話だってないのよ」

 するとエレインが困ったように眉尻を下げる。


「何にしても話し合うのが一番よ。姉弟なんだし。それにレティシアったら、むきになってて顔が赤い」

 レティシアは慌てて頬に手を添える。確かに熱い。

 一見かみ合わない会話のようだが、彼女は不思議と真実を言い当てる。レティシアの思いに気付いているのだろう。だからと言っていつもそれ以上は踏み込んでは来ない。


「ありがとう、エレイン……」


 不思議な事に今世で初めて素敵な友人が出来た。自分にはもったいないくらい。



 ――二十歳の誕生日が過ぎたら彼に謝るだなんて、そんな虫のいいこと出来ないよね……。


 まだ、それまで生きていることが出来るかどうかも分からない。レティシアは首をふりその思いを振り払った。




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