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12 姉と弟 

 ミザリーは久しぶりにリーンハルトの部屋を訪れた。彼は家に帰ると勉強ばかりしている。ノックをするとすぐに「どうぞ」と返事があった。


 ミザリーが入っていくとリーンハルトが目を瞬いた。


「姉上が、俺のところに来るなんて珍しいね」


 開いていた本をぱたりと閉じ、彼は文机から立ち上がる。十六歳になったリーンハルトは背も高くなり、声も低くなった。


 精巧に彫られた彫刻のような完璧な目鼻だち、涼やかなアイスブルーの瞳には理知的な光を湛えている。ほんの少し冷たい美貌。

 だが、今この時、そこには温かい微笑が浮かんでいる。

 

 彼の部屋はすっきりと片付いていて、落ちついた色合いの調度でまとめられていた。無駄なものがない。それはそのまま彼の潔癖な人柄を表しているようだ。


「リーンハルト、一緒にお茶を飲まない?」

「いいけれど……」


 ハキハキとしている弟が珍しく言いよどむ。


「あら、どうしたの? 私とお茶を飲むのがいやなの?」

「レティシアもいるのか?」


 彼はレティシアが苦手だ。ミザリーがにっこりとほほむ。


「いいえ、レティシアは今日出かけて、外でお茶を飲んできたみたいだから」


 何気ない調子で切り出す。


「そう、じゃあ、ここで飲む? サロンに行くのも面倒だし」


 レティシアがいないと聞いて、彼は了承した。


「あっさり、しているのね。誰とって聞かないの?」

 

 弟に綺麗な微笑を向け、首を傾げる。


「え?」

「レティシアが誰と外でお茶を飲んだか気にならないの?」


 リーンハルトがその美しい眉間にしわを寄せる。


「誰も何も、興味ないね。それにあいつは友達もいないんだから、相手は婚約者のトレバー様しかいないだろ」


 弟は執事に言いつけ、部屋に茶を用意させた。彼は勉強ばかりしていて、あまりサロンで茶を飲むことはない。伯爵家の嫡男ともなると大変だ。


「レティシアがお茶を飲んだのはトレバー様ではないわ。私の婚約者のアーネスト様と一緒にカフェに行ったのよ」

「え? あいつ何を考えているんだ」


 途端にリーンハルトの表情が険しくなる。ミザリーは優美に微笑み、何気ない口調で話を続ける。


「買い物の帰りに、偶然出会ったんですって」

「なんだ。驚いた。まあ、アーネスト様があいつを相手にするとは思えない。それにフレンドリーな方だし、そういうこともあるだろう」


 弟は落ち着いて冷静な様子だ。それが、面白くない。


「私の婚約者と勝手にお茶を飲んだのよ。よりによって外のカフェで」


 ミザリーのいつになく、激しい口調に驚いたような顔をした。だが、すぐに彼は冷静さを取り戻す。


「偶然だろ?」

「あの子が、偶然と言っているだけよ。本当は約束して落ち合ったのかも」

 

 リーンハルトが小さくため息をつく。

 

「姉上、直接、レティシアに言ったらどう?」


 ミザリーは彼の言葉にハッとした。


「え、私が、直接?」


 なぜ? あなたが言ってくれるのではないの?


「前から思っていたけれど、あいつには直に言った方がいい。じゃないと伝わらない。ただ、アーネスト様の事は気にする必要はないよ。あの方はしっかりとしたお方だ。大丈夫だよ。心配しなくて」


 そう言って、気遣うようにリーンハルトが微笑む。


「そう」


 だから、ミザリーも穏やかに頷き、微笑み返した。


 それから、話題はレティシアから逸れる。

 リーンハルトはレティシアが嫌いなくせに、自分から陰口をたたかない。


(もしかして、彼もアーネストや、お父様のようにレティシアのことが気に入り出しているの?)




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― 新着の感想 ―
[一言] 現状全然感情移入できんwww
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