表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/69

11 幸せに浮かれて 2

 レティシアは、ニーナに外出の準備を促した。伯爵家の令嬢が一人で買い物に行くわけにはいかないので、彼女を連れて行くしかない。


 それに身の回りをしてくれる者を連れて買い物するのは楽だ。面倒くさいことは全部やってくれる。


「はい、あの、お嬢様どちらに行かれるのですか」


 ニーナが戸惑ったように言う。いま忙しいのかもしれない。しかし、彼女の予定にいちいち構っていられないし、あの悪夢のお陰でどうしてもニーナが好きになれない。


「刺繍糸を買いに行くのよ。それと布を少々」

「まあ、ハンスに頼めばいいではないですか」


 やはり迷惑そうだ。ハンスはこの家の執事見習いで、足りないものがあるとたいてい彼が用意してくれる。


「今回は違うの。お義母様へのプレゼントだから、自分で買いに行って、選ばなくちゃ」


 ニーナを急き立てるように外出の準備をした。


 しかし、馬車に乗り込み、いざ店に行ってみると、どれを選んでよいのか分からない。


 刺繍などまったく興味がないからだ。とりあえず一番高価で、華やかな色合いなのものを店員に包ませた。

 

 これを持ってオデットの元にいき、

「お義母様と、久しぶりに一緒に刺繍がしたいのです」

と言えば、すぐに機嫌を直すに決まっている。彼女は懐かれると弱いのだ。

 しばらく社交は休んで家にいよう。


 早々に買い物を済ませ、馬車に乗りこもうとすると、


「レティシア嬢ではないですか?」


と声をかけられた。


 往来の向こう側にアーネストが立っていた。すらりとした立ち姿、帽子を取り、品よく挨拶し、優しく微笑んでいる。


 偶然の出会いにレティシアの胸はときめいた。


「まあ、アーネスト様、偶然ですね。どうなさったのです?」


 穏やかで気遣いの出来る彼が好きだ。それにリーンハルトやトレバーのように気位の高いところがない。少しどきどきする。


「いま、買い物をすませたところでね。君は?」

「私も、今日は刺繍の材料を買いに来たのです」


 アーネストに会えたのはラッキーだ。濃茶の髪も瞳も優し気で、少し年上だが、若々しい雰囲気の彼が大好きだ。もう少し一緒にいたいと思った。


「あの、それで、私、咽が乾いたので、これからカフェに行こうかと思って……」


 レティシアが上目遣いでそう言うのを聞いて、ついてきていたニーナがぎょっとしたような顔をする。


「そう、ならば、一緒に行かないか?」


 アーネストなら、そう言ってくれると思った。彼は紳士だ。レティシアが、花が綻ぶような微笑を浮かべると、アーネストが照れたような笑みを浮かべる。胸が高鳴った。


「ニーナ、あなたは、先に馬車に乗って、帰っていて、私はアーネスト様に送っていただくから」

「お嬢様、それはいけません」


 ニーナが慌てて止める。


「どうして? アーネスト様はお義兄様になる方よ? 一緒にお茶を飲んではいけないの?」


 レティシアは心底、不思議そうに首を傾げた。家同士のつながりを考えても親しくしていた方がいいはずだ。別にミザリーから彼を奪おうというわけではない。










明日から毎日一回更新、十二月末まで予約投稿済みです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ