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10 幸せに浮かれて 1

 幸せな時間が続き、レティシアは十七歳になった。

 

 そんな幸福に水を差すようなことが起きる。

 

 ブラウン子爵夫人がトレバーとレティシアの婚約に難色を示し始めたのだ。周りに愛嬌を振りまいたせいか、浮気性なのではないかと心配し始めたらしい。


 「大丈夫です。将来、浮気の恐れのあるのはあなたの息子です」と言ってやりたかった。あの夢が本当ならば……トレバーと破談になれば、レティシアが死ぬ確率は低くなる。


 だが、トレバーを好きになっていた。愛とは違うのかもしれないが、情はある。


 彼は礼儀のなっていないレティシアにとても優しく接してくれた。そのうえ細かいことは言わないし、金持ちだ。レティシアが欲しいと言えば何でも買ってくれる。


 リーンハルトのように叱らず、

「仕方がないよ。レティ、人には向き不向きがある。君は君のペースで成長していけばいい」

と言ってくれる。


 あの恐ろしい夢と比べれば、彼の優しさは雲泥の違いだ。彼はとてもいい人、大好き。



 しかし、リーンハルトだけは、なぜかとても辛らつで。


「誰にでも媚を売ってみっともない。そんな事をしている暇があったら、マナーや教養を身につけたらどうだ」


 何という事だろう。トレバーは物を知らないレティシアを可愛いと言ってくるのに。この義弟は勉強しろと言う。もの知らずな娘が好きな殿方は多い。義弟はそれをわかっていない。


 いや、単にレティシアが嫌いなのだ。そんな義弟に微笑みかけるなんて真っ平。別に前回、関わりのなかったリーンハルトには好かれなくても構わないと思っていたので無視をした。それに彼はいつも学校や勉強で忙しいので家にいない。



 その後もレティシアはお誘いがあれば必ず夜会に参加し、貴族令息たちにちやほやされているうちに幸せな時を過ごした。

 

(神様は間違えたのかもしれない。私は、あのような悲惨な死に方はしない。それとも警告?)


 レティシアは浮かれていた。


 しかし、ことはそう上手く運ばなかった。最近義母オデットのあたりがきつくなってきた。

 一時期は上手く行っていたのに、やはり、トレバーの母のように、殿方に人気のあるレティシアが気に入らないようだ。


 オデットは若い頃、その美貌から社交界の華と呼ばれていたという。だから、嫉妬しているのだ。 


 しかし、このままでは困る。彼女は味方につければ強力だ。反面、敵に回られると辛い。そこでレティシアは無い知恵を振り絞る。


 義母は刺繍が好きだ。レティシアが遊びまわる前はよく一緒に刺繍をさした。社交に比べれば、つまらなくて退屈な時間だったけれど。


「ニーナ、街へ行く支度をしてくれる?」


 アナはもう結婚してしまっていないので最近はもっぱらニーナに用事を言いつける。そう、あの悪夢通り、アナは十七で結婚した。そのことで、レティシアは時折混乱し、不安に見舞われる。


(でも、きっと大丈夫。私は上手くやっている。それに、これはやり直しなんかじゃない)




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