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天災 冷酷無残  作者: 蒼蕣
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明るい未来へ

「ドッオオオン!」

突然床が大きく揺れたと思ったら、大きな爆発音が聞こえた。

多少のことなら起きない芽衣もこの時ばかりは飛び起きた。

最悪な状況が湊の脳裏をよぎった。

湊は布団から飛び起き、閉めたカーテンを勢い良く開けた。

見ると、空が赤く燃え上がっている。

そして遠く彼方で真っ赤な何かが山の斜面を勢い良く下っていた。

その赤い何かは空からも流れ星のように降ってきた。

その直後、黒に近い灰色の煙が赤い空を埋めた。

煙が空を埋めても、その赤い何かは降り続けた。

それは物と接触すると、辺り一面を焼け焦がした。

瞬く間に劫火となった。

人々の泣き叫ぶ声がかすかに聞こえたが、赤い何かが落下する音でかき消された。

まるで花火を間近でみているようなヒュゥーという音がなっていたが、その音はどんどん遠ざかるばかりか、こちらに近づいてくる。

湊はその場に立ち尽くした。芽衣も布団から起き上がれないまま呆気にとられていた。

叫び声もあげられない。

ただただ人が、町が、滅んでいく様子を眺めることしかできなかった。

旅館内でも人の叫ぶ声、素足でドタドタと廊下を走る音が聞こえた。

自分たちの見えているものが夢ではないことは理解したが、その後何をすればいいのかは分からなかった。

再び床が大きく左右に揺れた。

湊は思わずその場に尻餅をついた。

窓ガラスにヒビが入った。

湊は本能的に後ずさりして芽衣を抱きしめた。

赤く燃え上がる山からさらに灼熱の隕石が次々と空高く上がった。まるでテレビでよく見るロケットの発射実験のようだった。

しかしそのロケットは大気圏を突き抜けることなく、地面に容赦なく叩きつけられる。

そのうちの一つが目の前に迫ってくるのが見えた。

まるで朝日のように真っ赤なそれはまっすぐここへ向かってくる。

窓ガラスが粉々に割れた今、それを防ぐものは何もない。

湊と芽衣は抱き合ったまま、それが自分たちに向かってくるのを受け入れることしかできなかった。

“一体どこで人生の道を踏み外したのだろうか”

湊はようやく思考を取り戻した。

“これは人類の選別なのだろうか。我々はふるいにかけられたのか”

“日本人はいらないというのか”

次々と言葉が頭の中で生まれる。

“こんな災害、誰が予想できただろうか”

“いや予想できたとしても誰一人対処できないだろう”

“恐竜たちが生きていた時代に火山が噴火して動物たちが一斉に絶滅したのを知っているが、それが起こったことを知っているだけでその失敗から人が何を学んだかは知らない”

“いつだったかイタリアのポンペイでこんなことがあったのは知っているが、その出来事を文書などにして将来同じようなことが起こっても被害を最小限に抑える術を教えてもらったわけでもない”

“我々人間、いや生物は定期的に大量に死ななければいけないのだろうか”

“地球が意識的に地球温暖化や人口増加による食糧危機を懸念しているのだろうか”

“今回は我々日本人が標的なのか”

“しかし地球の思惑も今回で終わりだ”

“今はもう二十一世紀だ。医療技術も発展してるし、情報社会でもある”

“人が死ぬ数も過去と比べて格段に減らせることができるし、きっとこの災害から生き残った人たちが後世に伝えていくだろう”

“地球の非情で冷酷な生き物の取捨選択を。そしてその解決策を”

“今は暗く絶望的であっても、未来はきっと明るく照らされる”

“人は失敗から多くを学ぶ生き物だ。きっと噴火にも耐えられる防空壕とかを作ってくれる”

“いやきっと噴火を数ヶ月も前に察知する機械を開発して、周囲の人に避難を呼びかけられるだろう”

“いやきっと噴火を察知できなかったとして瞬間移動で一瞬で別の場所に避難できる装置を造るだろう”

技術の発展、地球に住む生物の平和、それの礎になれると思うと、湊は少し気持ちが和らいだ…

これにて『天災・冷酷無残』は完結いたしました。いかがでしたでしょうか。旅館での楽しい生活を送っている最中のこの出来事でしたが、幸福感から一気に絶望感に浸る。人生は無情であり無常ですね。あとがきは全てのシリーズを終えてから投稿します。もうしばらくお待ちください。『いいね』や感想をお待ちしております。

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