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天災 冷酷無残  作者: 蒼蕣
14/28

交通麻痺

「いや、俺たちの地域は内陸部だし、まだ大丈夫だろ」

湊はそう言って芽衣の頭を撫でた。

しかしその撫でた手がわずかに震えているのを芽衣は感じ取った。

「湊もやっぱり怖いんでしょ」

「あ、ああ。さっきのスーパーでの人の様子見ただろ」

「うん。我先にって感じで、物を取り合ってた。みんな生きようとしてるんだよね」

「ああ、人ってやっぱり自分や自分の身近な人を優先するからな」

「湊もそう?」

芽衣が湊の顔を覗き込んだ。

「そうだな。俺も芽衣を最優先に考えるかもな」

芽衣はその言葉を聞いて、静かに湊を抱きしめた。

「それにこういう事態はあるってわかってても実際に起こると冷静に考えられなくなるからな。それで余計に人間の欲深さが出てくるんだろうな。今更だけどこういう事態が起こるって予想していながらもそれを軽視していた自分に嫌気が差すな」

「備えあれば憂いなしってやつだね」

「よく知ってるな」

「えっへん。私だってちゃんと勉強してるんだから湊の彼女として恥かかないように」

「そうか…」

二人は互いを見つめ合い笑った。

しかしその笑顔はいつもより冷めていた。


—最新のニュースをお伝えします。この富士山噴火の専門家会議が開かれ、正式に全国各地で避難勧告を促すことを決定しました。その理由につきましてや地震や津波がいつまた起こるかわからないことや、地震が今後最低でも数週間は続くと予想されるためであると説明しています。しかし、政府からの避難要請や緊急事態宣言などは発表しておりませんー

すると、そのニュース番組に出演しているコメンテーターの一人が映し出された。

—おそらくですが、政府は避難要請や緊急事態宣言を出すことによって人の流れが一気に数カ所に集まることを避けたいと考えているのだと思われます。もし仮に政府が避難要請を全国に発表するとなると、海外への移動や内陸部への移動が殺到したり、交通が麻痺してしまい、多くの命を失うとも限らないのです。なのでおそらく、政府は全国一気に避難させるのではなく、地域ごとに優先順位などを決めて、出すのだと思われます。また、政府としましてはその後万が一津波などで家が倒壊した時などの補償も考えなければいけませんー

—はいー

—しかしこれがまた大変です。通常の津波による被害を負担、補償する場合、政府がお金をその地域の国民に貸すという形がとられ、その借金は全国の国民が払う税金で支払われるのですが、今回は非常に大規模ですから、貸すお金は全国規模になります。またこのようになんども地震が起きれば、経済は完全にストップするので、借金の返済ができなくなるという恐れもありますー

—その件でですね、政府は海外からの援助を求めたいという話が専門家会議であったという報告が入っていますので、今後の海外の動きにも注目されますー

「湊…どうする」

「まだ…政府が要請出してないんだから、まだ動かなくていいと思う。ただ…」

「ただ?」

「このニュースを見て、一足先に移動しようっていう人がいっぱい出ると思う」

「そしたらどうなるの?」

「交通が麻痺する。飛行機も電車も新幹線も車も使えなくなるかもしれない」

「じゃあ、私たちも」

「ううん。でも行ったら行ったで大混雑するかもしれない。人がいっぱいいると事故とかも起きやすくなって、最悪死ぬかもしれない。かと言って今動かないでいたら、もしかしたら要請が出た時にはもう交通が完全に滞ってるかもしれない。どうするべきだろう?」

湊は真剣に考えた。

「じゃあ、さあ。様子を見るってのはどう? 近くの道とかを見に行って車がまだあんまりいなかったらさっさと出ちゃおうよ」

「そうするか。よしじゃあちょっと見てくるか」


二人が家を出た後、ニュースで新たな情報がもたらされた。

—新しい情報が入りました。未だ振り続けている火山灰ですが、吸い込みすぎると肺がんなどになる恐れがある模様です。すでに噴火した富士山付近の人々、およそ五十八人に肺がんにかかっているとのことです。現在その五十八人は入院し治療を受けています。現在の所、肺がんによる死亡者はいませんが、気管支にまで肺が入り込み、人工呼吸器を余儀なくされるなどの重症者が何人もいるとのことです。なので、外出はできる限り控えてください。また外出する際はマスクなどをしてください。繰り返します…ー

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