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天災 冷酷無残  作者: 蒼蕣
12/28

食糧危機

「おはよう、湊」

数十分後片目をこすりながら、芽衣が起きてきた。

「ああ、おはよう。早速で悪いんだけど、買い出しに行きたい」

「え、どうして?」

「なんか政府がなんか避難要請を出すみたいでさ。さすがに備蓄がないときついと思って」

「え、何結構やばい感じなの」

「いや、まだよくわかんないけどこれから昨日みたいな地震が頻繁に起こるみたいでさ。その度にどんどん水位が上がってくみたいでさ」

「え、ちょっとそれやばいじゃん」

「だから言ってんじゃん。まあいいや、俺が行ってくるから」

「待って、私も行くから。結構大荷物でしょ、一人じゃ大変だよ」

「お、おい」

芽衣は急いでどこかの部屋に入った。

数分後、昨日とほとんど変わらない服装で部屋から出てきた。

ほんの数分しか経ってないはずなのに、うっすらとメイクもしている。

「さ、行くよ!」

近くのスーパーまでは歩いて十分程度、途中には公園もあって、いつも子供達がはしゃいでいる、はずなのだが、今日ばかりは誰もいない。

遊具には火山灰が積もっていて、砂場も火山灰が混ざり合っていつもより黒く見えた。

しかし今日は全てが灰色一色でなんだか心まで灰色に染まっている気分だった。

「なんか、すごい静かじゃない?」

「あ、ああ」

「火山灰って遠くから見ると真っ白な雪に見えたけど、近くで見ると黒いね」

「そうだな」

自分たちの指している傘を見ると、歩き始めてまだ間もないというのに、もうすでに灰が布に覆いかぶさっており、いつもより重く感じた。

「暗いね」

火山灰の影響で日光がほとんど当たらず、まだ朝の十時だというのに、もう夕方のような風景であった。

「なんか、怖い」

そう言って芽衣は湊の手を握った。


「っておい。まじか」

スーパーに着いてもいつもとは少し違う風景が広がっていた。

人の数はいつもと変わらぬものの、買い物する量が二倍、三倍のように見えた。

ほとんどの買い物客がカートの上下にカゴを入れ、そのどちらもあふれんばかりの物が入っていた。

それにつられるように、スーパーに入ってくる客も次々といつもよりたくさんの物を買い込んでいた。

押し合ったり取り合ったりすることはないものの、どこかピリピリとした雰囲気があちらこちらから漏れ出ていた。

「や、やばっ!」

「と、とにかく俺たちも急ごう」

湊と芽衣は二手に別れた。

「ま、まじか」

カップ麺の棚はもうすでに空であった。

「湊! パスタもお米も缶詰も何にもないよ。あるのはお菓子と飲み物だけだよ」

「な、なんだよこれ」

「みなさん、買い込みは控えてください。他のお客様にもわたるようにしてください」

定員の叫ぶ声が聞こえたが、誰も見向きもしていなかった。

「うわぁ!」

突然、地面が大きく揺れた。

至る所で叫び声が聞こえる。

芽衣と湊は抱き合いながら、急いで壁側へ移動し、その場に伏せた。

商品が棚から落ちる音がする。

ほんの数秒だったと思わしきその地震を二人は五分ほどに感じた。

気づいたら、商品の落ちる音は聞こえなくなっていた。

湊がゆっくりと目を開けると、やたら遠くの人もしゃがんでいるのが見えた。

「棚が崩れちまってる」

芽衣もゆっくりと起き上がった。

綺麗に並べられていた商品が床に散乱し、しまいにはいくつかの棚も倒れてしまっていた。

幸いにもけが人はいなそうだが、スーパー側としてはひどい赤字になるだろうと予想された。

落ちた拍子に菓子類は粉々に崩れ、野菜なども全て火山灰だらけの床に落ちてしまい、食べられそうにもなかった。中でも一番ひどかったのが、飲み物のコーナーであった。ペットボトルに入っているものは無事だが、ワインなどの瓶に入っているものは落ちた衝撃で割れて、中身が出てしまっていた。

結局買えたのは、棚から落ちなかった飲み物数本とお菓子、それと保存が効かない生魚や野菜だけだった。それでも合計三袋分買い込んだ。

「肉もないなんて、どうなってるのかしら」

「どうやら、みんな同じこと考えてたみたいだな。とにかく一旦帰ろう火山灰の中にずっといたらなんか体調崩しそうだから」

二人は早歩きで家に戻った。

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