剣術教室其の二
剣術教室は陽が沈むころには終わる。陽が沈んでから、俺はレヴィに呼び出された。
「これから特訓」
ぴしゃりと言われてしまった。レヴィ先生超怖え。
「まずは竹刀を緑にするところから。さっきもうちょっとだったじゃない」
俺は竹刀を黄色と青とで行き来させるところまでいっていた。何とも形容し難いが、竹刀に魔力を『流す』というより『張る』イメージだ。
刀身を意識しながら、魔力を、『張る』!......一発でできた。
「なんだ。できるじゃない。拍子抜け」
なんかがっかりされた。
「個人レッスン終わり」
剣術教室は全体で集まるのは週一、他の日に個人レッスンということになっているらしい。
一か月後、護身剣術教室の参加者は、皆別人のように強くなっていた。
「最後だし、皆で私の助手を倒してください」
レヴィ、衝撃の一言。
「は?ナンダト?」
あれよあれよと言う間に四方八方から竹刀が振り下ろされる。マジで40人全員とやるのか。
この一か月レヴィに叩き込まれたことを思い返す。
まず、魔力探知。視覚では死角が生じ、また透明化にも対応できないため、戦闘中は魔力の流れで周囲を立体的に把握する。これの習得のために俺はこの一か月のほとんどを目隠しをして過ごした。
次に、立ち回り。基本はあらゆる攻撃に対応するために、走りながら戦う。特に一対多の場合、立ち止まると攻撃系スキルの格好の的になる。
最後に、魔力強化。魔力を流したものの性能を上げる。筋肉に流せば筋力が上がり、竹刀に流せば相手への衝撃は大きくなり、自分への衝撃は小さくなる。本物の刀だと切れ味とかも変わるらしい。
俺は人のいないスペースに走り出した。一対多は小さな一対一を作ることが定石だ。レヴィいわく『あんたはちょっと鍛えた一般人くらいなら秒殺できる』そうなので、40人分の魔力と集中力があれば勝てるはずだ。
俺の竹刀が相手の腕に当たった。
ドサッ。ぐはっ。
ほとんど抵抗を感じることなく一人倒した。この分なら40人くらい楽勝だ。
と思っていた時期が、俺にもありました。20人くらい倒したところで疲労を感じ始め、残り10人に減ったころには走るのもやめていた。何とかそこから5人には減らしたものの、この5人がどうやっても倒せない。俺の魔力切れを待つ作戦らしく、5人がかりで全力で守るのでどこからの攻撃もはじかれる。とはいえ万事休すというわけではない。若干卑怯な気もするけど。
体に残る全ての魔力をいったん隠して、俺は倒れた。竹刀まで手放したことに安心したのか、相手の5人は全く警戒せずに近づいてくる。アホか、こいつら。
俺は全ての魔力を手に集め、5人の中の1人の竹刀をつかみ、力任せに振り回した。5人とも倒せた。