転生一月後
それは最後の仕事を終え、ギルドに向かっているときだった。
「ガルルルル」
いつの間にかグレーウルフに囲まれている。
「グレーウルフだ。ちょうどいい。不斬刀と魔物の説明をしよう」
そう言ってレヴィはバッグ(魔力で中の体積を増やしてある)から青い日本刀のようなものを取り出した。
「これは不斬刀といって、切っても切れない刀だ」
俺が首をかしげていると、レヴィはグレーウルフのほうに......ではなく、俺のほうにゆっくり近づき、俺の右腕を切った。
右腕を切った?痛い!痛い!やりやがったよ、この娘完全にサイコパスだよ!ってあれ?
「何やってんの?」
レヴィは冷たい目でこちらを見てくる。どうやらリアクションが気に入らなかった模様。
切られたはずの右腕は元気に手をグーパーグーパーしている。
「不斬刀で切ったところは切られる前の状態に戻る。次に魔物だけど、魔物は核となる魔石を破壊しないと倒せない」
レヴィはそばにあった石を拾って、グレーウルフに投げた。それとほとんど同時に、一匹のグレーウルフの顔が無くなっていた。
「こんな風に顔を吹っ飛ばしても、すぐに再生する」
たしかに、さっき吹っ飛んだ破片が集まり、元に戻ろうとしているように見える。
「でも魔石を壊せば」
そのセリフが聞こえ終わらないうちに、ガラスが割れる音より少し低いバリッという音が四方八方から聞こえた。
「この通り」
さっき顔を吹っ飛ばされたやつ以外のグレーウルフから黒が抜けていき、犬になって逃げていった。
しばらくの沈黙。
「感想は?」
「魔物は魔石に狂わされた普通の生き物なんだな。知識としては知ってたけど、やっぱり実際に見るとちょっと動揺するよ。あと、皆そんなに強いの?俺ほとんどお前の動き見えなかったよ」
「そうでもないわ。魔物を倒すのは本当は不斬刀じゃなきゃいけないんだけど、扱えない人は普通の武器で退治してるし。でも、ゴブリンとかオーガとかにそれをするのは許せない。だからリル村がゴブリンに襲われてた時も急いだんだけどね。私なら誰も殺さずに無力化できるから」
レヴィの強さが滲むような言葉だった。
ゴブリンは人間の魔物、オーガはドワーフの魔物である。そして、ゴブリンもオーガも、魔王の出現以前にはいなかったらしい。それで、人間やドワーフを魔物に変えているのは魔王だろうといわれているとのことだ。