旅路
レヴィの今回の仕事は、各地に点在している村の、破れかかった結界を修復することだった。人が住むところは結界で魔物から守られているけれど、結界は経年劣化するものらしく、時々修復が必要とのことだ。
「ここからは急がなくていいわ。もう結界が破られてるところはないから」
「良かったー。正直もう全身筋肉痛なんだよね」
「マジかよ。あんた体力なさすぎでしょ。本当にグレーウルフ倒したのあんた?」
ちょっとガラが悪くなったのは気のせいである。
「ともかくカイトにも戦力になってもらわないと困るからね。魔力について説明する」
そう宣言すると、レヴィ先生による魔力講座が始まった。
「まず、魔力っていうのは体の中にあるエネルギーなの。魔力の使い方は三つ。一つ目は体に纏って鎧みたいにする。二つ目は目とか筋肉とかに送って性能を上げる。三つ目はスキルを使う」
「スキルって?」
「いろいろよ。エルフは回復系と風スキル、ドワーフは物質の加工スキル、獣人は変身スキル、人間は炎スキルが標準だけど、自分の種族以外のスキルを使える人も、どれにも属さないユニークスキルを使える人もいるわ」
「転生者に多いってやつか」
「そう。でもまだスキルのことは考えなくていいわ。どうせまだ使えないだろうし。それより、あんたは魔力の量を増やさないといけない。もともとの魔力量は少なくないみたいだけど、鍛えてる人から見れば全然ないからね」
「魔力増やせと言われても。方法がわからないんですが、先生」
「体の中のエネルギーを増やせばいいのよ。つまり筋トレ。とりあえず、腕立て伏せ百回、上体起こし百回、スクワット百回を毎日。禿げるまでやりなさい」
そんなことしたら最強のヒーローになっちゃいますよ。とは言わない。
「あとリル村で百科事典買ってきたから。読めばいろいろわかると思うわ」
確かに知識は必要だ。なかなか気が利く。幸いなことに文字は日本語だった。
それから俺の筋トレと読書の日々が始まった。
もちろん禿げてはいない。