俺達は今だからこそ「宇宙船サジタリウス」について深く考えなきゃならんのだ
なろう小説界は、右を向いても左を見ても……テンプレ、テンプレ、テンプレ……いや、それが悪いとは思いません。しかし、視聴率至上主義だったバブル期のアニメには、そんな風潮に反したトンデモ作品がありました。今回は、そんなお話。
始めに断言しておきますが、タイトルを見て「何だよそれ」と思った平成生まれは、即座にググれ。そしてDVDボックスをアマゾ○で買え。いや、買わなくてもいいから、知っておきたまえ。
次に「な~ぁアンタ、1987年から77話も続いたアニメのこと、何で知ってるんだよ?」とか無粋な事を言う奴。これを書いている奴はなぁ……そう! あ、兄貴が居て観ていたらしく、そんな話をしてたから知っていたんだよ!! そー言う事だよ!
そして、ここまで読んでくれたキミに、稲村某はまず言っておきたい。ここから先は愚痴でも能書きでも正論でもない。稲村某と言うしがない物書きが、タイトルの作品を例に挙げて、通り一遍で金太郎飴みたいなお決まりパターンの話ばかりの現状に、大いなる危惧と……僅かな希望を持って、読者と作者に訴えたいだけなんである。
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……さて、ここからはかなり独善的な記述が多くなる。覚悟はいいかな?
……「宇宙船サジタリウス」とは、ザックリ言えば……今から30年余り前に放映されたアニメである。
うっは!! こう書くとムッチャクチャ昔だな!! ドラク○の1か2の時代なんじゃねーの? すっげーっ!!
……申し訳無い。流石の自分も、脳裏にこびりついた記憶を辿って書き始め、改めて調べてみて、やっとこ、いにしえの時代だったんだなぁ……と気付く位だ。
で、ザックリとあらすじを適当に書くと、宇宙を股にかけて様々な人々が様々な環境で様々な仕事をする時代、二人の中年オッサンが、家族の為に働いて稼ぐ話だ。中古のオンボロ宇宙船で何でも屋をする、そんな感じ。
そこからどんな展開になるかって? いや、別にそんな話はしない。知りたけりゃこんな時代である。その気になれば77話、全て観られるだろう。だから敢えて詳細は記載しない。レビューでも何でもないから。
と、無責任に投げてから、本題に入ろう。
我々、物書きは物語の基本をどこから供給しているのか、と考えた事はあるか? 読み専の皆さんはどうやって作品を選んでいるか?
答えは明確である。過去の経験に則して選択、選別しているのだ。
「あー、やっぱり俺はツインテの活発なタイプが」と思うのは、それを何らかの媒体から【萌え】の概念を得た経験から、選別している訳だ。
また、或いは「うむぅ、黒髪ロングこそが絶対!だからこそ」と思うのは、個人的な嗜好と過去の経験から派生している訳で、かと言ってツインテを全否定まではしないだろう。来たらきっと拒まないぞ?
……少々脱線してしまったが、ともかく誰でも「こうなったら、ああなる」と言う予定調和や予測可能な事例に流されやすいのだ。だからこそ、人型ロボットにロマンを感じ、ビキニに夢を託すのである。
だがしかし、「宇宙船サジタリウス」というアニメには、そうしたロマンも無いし、ビキニも全然出てこない。そもそも主人公は二人の人間っぽいカバや何かで、特に萌えも猛りも無い。無いったら無い。
因みに、同じ1987年当時のアニメは……と、言えば……?
……「北斗○拳2」「シティーハンタ○」「ドラゴンボー○」……うわ、勝てる気がしねぇ! サジタリウ○大丈夫か!? 等と一緒に伏せ字しなくてもいいけれど。
軽く調べてみただけでも、こんな感じの時代を築いた名作や続編、または記憶に残る作品が目白押しである。普通ならサジタリウスの作風なんて、絶対に世間に認知されるようなミラクルは起きる筈もないのだが……。
……しかし、稲村某は……宇宙船サジタリウス、と言う作品を忘れなかった。いや、忘れるところか……物書きになって、更に強烈に浮かび上がってくるのである。
それにしても、何故今更……稲村某の脳裏にそこまで鮮明に残ったのか?
実際に覚えている事を列挙すれば……、
……主人公はオッサン二人、ヒロインらしき人物の一人は行方不明の博士(正確にはフィアンセが彼女を探す為に二人に依頼したのだが)で結局見つかった後は彼氏と結婚するし、もう一人は歩くサボテンみたいで出っ歯。歌以外は特に何もない。ただ、彼女が歌えば全て回避してしまう神歌声の持ち主。オッサン二人には家族が居て、何だかんだと事ある度に、家庭を言い訳にしては逃げようとしたりと情けない……。
うむぅ、何でこんな連中のアニメを必死になって観ていたのだろうか? 理解に苦しむ。
……正直言ってしまえば、当時はアニメというだけで、大抵の作品は観てしまったものである。日曜朝の名探偵ホーム○再放送だって、録画せずに起きて観ていたし……いや、兄貴が観てたんだよ、たぶん。
そろそろ核心に入ろう。現状のなろう作品の主流は……見れば判るというものである。しかし、これは一方的に読者が悪い訳じゃない。登録している読者は選択して読んでいる訳であるし、それ自体は何も悪くはない。しかし、だからこそ……
……作者は【バラエティーに富んだ小説】を読者に提供し、読者は……あー、出来る範囲で構わないから、作者に何らかのリアクションを送って欲しい。今のような全部同じ作品ばかりでは、飽きられた瞬間に急速になろう全体が冷え込んでしまうし、それを阻止する方法は今のうちに多様性に溢れた作品を少しでも増やし、読者を惹き付け霧散させないようにしなければ、過去に消え去ったコンテンツの二の舞であろう。
それを少しでも実現させる為には、読者は作者のモチベーションを上げる為にも、「自分はこーゆーお話は好きですよ♪」とか「続き楽しみにしています!」とかだけでも構わないから、背中を推して欲しいのです。作者は声の聞こえないブクマ加算よりも、一言でも良いので感想を添えたブクマの方が嬉しいものなんですよねぇ(見分ける術はないけれど)。
さて、ここまで読んでくれた奇特なアナタ。サジタリウスはどうしたんだ? と思うでしょうが、心配ご無用……ええ、ザクッといきます。物書きの眼から見た魅力のポイント、そして何故、自分の心の奥底からサジタリウスが湧き出してきたのかを、お伝えしましょう。
先程サラリと書きましたが、しがないオッサン二人と若者二人(こんな零細職種に女性博士のフィアンセが就職してしまうのだ!)達は様々な事態に逃げ回ったり、時には仲間を置き去りにして自分の保身を優先させたり……あー、情けない……。
でもね、よく考えてみれば、これは昔の作風とはいえ、普遍的な「人間ドラマ」なんだよね。問題を回避する為に我々が出来る範囲を超えた時、きっとそうする筈だし、それはある意味リアルなんですよ、本当のリアル。
更に彼等は物語の節々で、遠く離れた家族達とビデオレター(詳細は忘れたが距離の問題だからか?)でやり取りするが、その度に「あー、早く帰って好物が食べた~い!」とか「あぁ、家族に会いたいなぁ……」とかと涙を溢すのだ。彼等の活力源は生きたい、と言う原初的な欲求を主とするなら、家族の為にと尽力する思いを副として宇宙を渡っていくのである。……あ、少しだけカッコいいかも?
そして、ここが一番重要なのだけど……どれだけ過酷な目に遭おうとも、彼等は必ず家に帰るのだ。一生懸命働き、ヘトヘトになって家庭に帰れば……それぞれの家族(オッサン二人は勿論既婚で子持ち)と共に食卓を囲み、和やかな時を過ごすのだ。うん、悪くない。
稲村某も、随分と年を取った。お陰様でなろうにて破廉恥極まりない小説や何やらを、こうして晒している。それはとても有り難い事である。にわか作家気分を味わえて幸せだ、と言えるだろう。
だが、本当の幸せってのは、案外近くに転がっていて、それになかなか気付けないのが……人間ってもんじゃないか? サジタリウスの彼等のように、帰るべき家に戻れる……家庭に帰れる幸福が、何よりも大切な事だったりしないか? と。
いつもは作中にてヒロインが敵の首を派手に斬り飛ばしたり、不幸な犠牲者にタマ蹴りさせたりとどーしよもない稲村某ですが、たまにそんな事を考えてみたり、する。
けれど、全ての作品を朝の連続ドラマみたいな内容にするつもりはないよ? 異なる作品には、各々に良さがあるし、全て同じになれば最善だとは思わない。それじゃ多様性の真逆であるし、そもそも……みんな同じじゃつまんないでしょ?
これからも我々作者は、出来るだけオリジナリティーを目指してユニークな作品を書いていくべきだし、読者の皆様も色々な作品に触れてほしい。それがなろうの未来を少しでも長く、そして豊かにしていく筈だから。
最後になりますが、個人的に「宇宙船サジタリウス」と言う作品の詳細をどれだけ覚えているのか? と言われれば……実際はストーリーの大半を忘れているけれど、それでも心の中にしっかりと楔のように突き刺さって抜けない、それだけ印象深い作品だ、何十年も後になって、大人になって思い出すような名作なのだ、と……、敬意を払いつつ、制作者の皆様に感謝を捧げたい。
良い作品を、ありがとう。 ……続編、無理っすかね?
と、見せかけた稲村某の呟きでした。
因みに「マシンロボ・クロノスの大逆襲」というトンデモ作品もある意味オススメ。これの最終回は……もう、全年齢対象で語ってよいのか迷うようなエンディングでね……。それについては、またいつか。