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カミサマが助けてくれないので復讐します 2  作者: つくたん
一方、キロ島
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扇、簪、轍

「連絡。合流できたって」

言葉短いユミオウギの伝達がカガリのもとに届いた。応、と応じてカガリは微笑む。あちらはあちらに任せておいていいだろう。さてこちらはこちらに集中するとしよう。

あれから数日が経っているが、パンデモニウムの再襲撃はない。"破壊神"の一撃を失敗した今、本拠地であるキロ島を諦め、防護の薄い場所に狙いを切り替えている風もない。何処も静かなのだ。

それは強大さ故の余裕からくる不気味な沈黙にも思えるし、打つ手がないために動けないようにも思える。どちらかなど判断はつかない。だが備えておくべきだ。

「戦力を整え、配置につき警戒を続けよ」

「…っ、大変です!」

その静寂は即座に破られる。このまま膠着状態が続くかと思いきや、パンデモニウムは沈黙を破って現れた。海を警戒していた見張り台からの火急の連絡が滑り込む。血相を変えて飛び込んできた連絡番の少女は報せを読み上げる。曰く。キロ島を取り囲むフォニク海北海にパンデモニウムの旗を掲げた大艦隊が集結しているという。

「兵だけを送らず、船ごと送ってきたか」

"ラド"による外部からキロ島への転移はキロ港にのみ限定される。キロ島の何処を指定しても必ず港に転移されるようになっている。だからパンデモニウムが兵を送り込むとするなら、どうしても港になる。それ故にキロ島側も外敵を迎え撃ちやすい。

だからパンデモニウムは移動先の指定をキロ島ではなく別の場所にした。キロ島を取り囲む海に転移先を設定したのだ。兵だけを港に送り込むのではなく、艦隊ごと海に送り出す。

そうして送り込まれた兵たちは艦船に乗ってキロ島を囲みにかかっているのだそうだ。船上から武具による遠距離攻撃を打ちキロ島を沈黙させた後、艦船を乗り付けて占領するつもりなのだろう。

「あいわかった。轍隊は東へ。扇隊は西へ。簪隊は祭壇にて準備せよ」

鋭く指示を飛ばしたカガリは部屋の隅で休息を取りつつ待機しているバルセナたちに目を向けた。魔力酔いのこともあるし、何より亜人差別の強いベルミア大陸に連れていけば迫害されるに違いないと言ってキロ島の防衛に力を貸すことになっている客人たちだ。

「扇に簪? 随分弱そうな名前だな」

優雅なのはいいが、もう少し厳ついものを部隊名にすればいいものを。ハーブロークの呟きにカガリは微笑むだけだった。

キロ島の人事は役職や得意分野ごとに縦に割られている。ひとつの武具を作るにしても、工程ごとに細かく分かれており、ひとつの部署が他の部署に関わることはない。当然、組織として連携はするものの、とある部署に所属している人間が他部署を兼ねることはないのだ。

簪隊。それは精霊を召喚する武具の扱いに特化した人間だけで編成された召喚連隊だ。武具によって武器を振るうことも属性元素に干渉して魔法を発現させることもしない。召喚武具を用いて精霊を召喚して使役する。

だがこの場合、簪隊が行うのは各自が持つ召喚武具の使用ではない。隊に所属する全員が一丸となり魔力を合わせてひとつのものを召喚する。

カガリの指示を受けて何人かが踵を返して何処かに向かっていく。彼らが簪隊とやらなのだろう。いったい何を召喚する気だろう。魔力酔いから立ち直ったダルシーはぼんやりと考えた。

「キロ島の慣例に則るまでよ」

目には目を。歯には歯を。力には力を。破滅には破滅を。ひとつの国を沈めるほどの一撃には同等の一撃を。それがキロ族の流儀だ。

準備してくると言い残し、カガリは席を立った。あとの指示についてはユミオウギに一任するそうだ。指揮官を委ねられたユミオウギは頷いてカガリを見送った。

「…ところで、私たちは何をすればいいの?」

助力を申し出たものの、キロ島に常駐している兵だけで戦力は足りているそうなのであまり出る幕もなさそうだ。バルセナたちに手伝うことはあるのだろうか。

「あぁ…そうだな」

曰く。今から簪隊による連合召喚が行われる。それによりキロ島を囲む艦隊を撃滅する。バルセナたちには召喚が完成する間の防衛を頼みたいとのことだった。

転移武具での移動では強制的に港に到着する。だから防衛もしやすい。だが、船で海路を来た場合は話が別だ。船が接岸できるなら何処からだって攻め入ることができる。カガリの"千里眼"で島の様子は見通せるが未然に防ぐことは難しい。カガリが視て発見し派兵する間に攻め入られる。

「つまり巡回警備かよ」

「そういうことになる」

名前を直接呼ぶことを避け、(あざな)を用いるためか、キロ族の言い回しは回りくどい。結論を急いで総括したハーブロークにユミオウギが頷く。バルセナたちが担当する場所は島の東、海岸に沿った通りだ。

「えぇ、了解」

了解したバルセナが立ち上がる。よいしょ、とダルシーも起き上がった。十分休んだおかげで魔力酔いの余韻の目眩もおさまった。バルセナが心配そうに視線を寄越したが、大丈夫、と短く返す。もうすっかり普段通りだ。

「パンデモニウムが乗り込んできたら遠慮するな、沈めていい」

「もちろん」

遠慮するような性格でもない。アッシュヴィトの殺意と敵意と怨嗟で目立たないが、バルセナたちだってパンデモニウムにそれなりに殺意を抱えているのだから。

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