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カミサマが助けてくれないので復讐します 2  作者: つくたん
ベルミア大陸 ベルズクリエ国
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懐かしき名

アルフたちが思い浮かべたことをガルシアが肯定する。

その想像通り、シャオリー・アルフェンドは直系の人間だ。しかも当主に連なる本家本筋の血統だ。

本来、パンデモニウムへの恭順を示すための人身御供はガルシアだけだった。しかし貢物とする物資を求めて隣国ヴィリアが攻めてきた時の混乱と略奪から逃れるため、シャオリーはパンデモニウムに身をやつした。あの状況の中ではパンデモニウムが一番ましだったのだ。あの悪徳の集団の所業が善行に思えるほど、ヴィリア国の兵士の略奪はひどかった。そして王家が意図しない経緯でシャオリーはパンデモニウムに加入し、それと前後してアルフェンド王家は滅びた。

同じ血統であるがガルシアとの面識はない。互いに、名だけは知っているが顔は知らないといった関係だ。

「あの子…えぇと、ノーラだっけか? あれは従者かなんか?」

「ノーラ? …あぁ、シャオリー様について回っていた彼女か」

彼女のことも知っている。ガルシアは頷く。

ノーラ・クライシス。あれはたまたま焼き出された集落から命からがら逃げてきた娘だ。

ヴィリア国との辺境にほど近いところにあった集落は真っ先に略奪を受けた。その惨劇から首都カーリダインまで逃げてきたところをシャオリーが保護したのだ。その頃には首都カーリダインもまた略奪により半壊に近い状況だった。その中で2人で必死に生き延び、ある種の情が芽生えて義姉妹の契りを結んだのだろう。

クライシスという姓にあるように、アルフェンド王家とはまったくつながりがない。その姓はアルフェンドの響きと似ても似つかない。

「他に聞きたいことはあるか?」

知っている情報はすべて教えよう。隠す必要などないのだから。保護してもらう以上、どんな情報でも提供するつもりだとガルシアは語る。

「いや、大丈夫だ」

過去のことはこれでつながった。情報を記録するための手帳にペンを走らせながらアルフが頷く。

アルフェンドの名のせいで話が逸れてしまった。本筋に戻そう。彼ら自身のことだ。ガルシアのことはこれでだいたいわかった。残るはグインの方だ。

「僕は彼の友人です」

ガルシアの乳母の息子だ。平民の出だが、ガルシアの親友として従者として付き合うために育てられた。ガルシアがパンデモニウムに人身御供に出されても、その後を追ってパンデモニウムに加わった。そして適性があったことでオーダー級に引き抜かれたのだ。

「…オーダー級であることは誰にも秘密なので、ガルシアも知らなかったんですけど」

パンデモニウムの秩序を維持するオーダー級は、階級を問わず等しく裁き秩序を保つ役割上、逆恨みを受けることが多い。そのため自身がオーダー級であることを隠すのだ。普段は実力に応じてレッター級ないしはカーディナル級として過ごし、必要であればオーダー級として活動する。その特性のため、役目を執行する時は顔がばれないよう専用の仮面とローブを羽織るのが決まりとなっている。

そういう役割にあるオーダー級にあったので、多少パンデモニウムの内情についてはガルシアよりも詳しいはずだ。

「ボクが聞きたいのはひとつダケ。……ヴェイン・ラピス・サイトをあぁしたのは、いったいダレ?」

ラピス島の巫女。神の意思を受けて武具を生み出すことができる唯一の巫女だ。ラピス島の巫女以外が作るそれはあくまで神の許可を得て生産されるものだが、巫女が作るものだけは神がそう作れと命令して生産する。つまり世界にとって必要だと神が判断したものなのだ。

脅威の排除か盛栄の維持か技術の発展か。世界というものを運営していくにあたり生み出す必要があり、需要がある。これからの世界に必要だと神が示す指標である。その指標を失えば人々は神の導きを失って混迷する。

だから巫女の作るものは特別なのだ。人と神をつなげるために。人が人であり、神が神であるために。パンデモニウムの行為はそれを穢したのだ。

ヴェインは意識と知識を抜き取られ、生き人形のようになってしまった。喋ることもなく感情もなく、焦点の定まらない目で虚空を見ている。一度声をあげたそうだが、あれはアルフェンド国に落ちた一撃による濃密な魔力に本能が反応した反射的なものであって、快癒したわけではない。

「あれほどのコトができるヒトだ。心当たりくらいあるでショ?」

神の庇護を受けた巫女が脅かされるくらいだ。相当の手練だ。そんなことができる実力を持つオーダー級など数が知れるだろう。答えを知らなくとも心当たりのひとつやふたつあるはずだ。

思い当たる名を言え。アッシュヴィトはそう詰め寄った。

「えぇ。お答えします。…それは"グランド・オーダー"ネツァーラグ・グラダフィルト以外にいないと」

相まみえたことがあるでしょう。そうグインは言った。巫女を攫ったその時に。パンデモニウムによるラピス島への制裁の時に。

すべてのオーダー級の頭であり、傲慢と高慢を体現したかのような人物である。よほど自信があるのか、通常なら隠すはずのオーダー級の証の仮面もローブもさらけ出している。

世界を舞台と例え、自分はその観劇者だと公言している彼が下手人だ。はっきりとグインはそう言い切った。

「だって…その場に僕もいましたから」

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