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カミサマが助けてくれないので復讐します 2  作者: つくたん
森の巨木 ミリアム諸島
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帰る芽

リシタの里の前。防人に囲まれながらシスとルイスのふたりは一同の帰還を待っていた。木立の合間に猟矢の姿を見、ルイス大きく手を振った。

「よく無事で」

「あぁ、まぁ何とか…」

ありがとう過去の自分。おかげで無事ドリアードを倒すことができた。できた。のだが。今更だがあれは倒してしまってよかったのだろうか。ミリアム諸島の秩序を守る番人を失って島は平気なのか。少し心配になってしまう猟矢である。

「ドリアードなら問題なかろうて」

あの程度で失われることはない。根腐れなど日当たりと風通しのよいところで休めば治る。猟矢が想像するよりずっと強靭なのだ。

そう説明したルイスはちらりとシスを見た。視線を受けてもなお表情を動かさず、シスはニルスを出迎えた。

「シス様…」

掟破りを咎められるだろうか。薬草籠を抱えてニルスは恐る恐るシスの前に歩み出た。トレントに従順で掟に厳しい人だ。せっかく助けられたこの命だが、掟破りを咎められて里から追い出される可能性もある。

「よう戻ってきおった。疲れたろう、休むと良いのじゃ」

もしそうなったらどうしよう、と震えるニルスの予想に反し、シスはずっと優しい声で語りかけた。

どうして掟破りを犯したのかだとか聞きたいことはたくさんあるがまずは疲弊した彼女を休ませることが先。労るように肩を叩き、防人たちを促して里の中へと導いていこうとする。

あちらへ、と促す防人の手を振り切り、ニルスは抱えていた薬草籠を開けた。捕らえられ檻の中にいてなお大事に持っていたそれをシスに差し出した。

「あの、シス様…これ、受け取ってください」

「テリルの花じゃと…?」

薄く黄色の花は怪我に効く。それを見てシスは掟破りの理由を察した。

怪我をした自分のためか。この自らの怪我のためにこの少女は掟を破ったのだ。目を閉じ深く息を吐き出したシスは胸が締め付けられる思いがした。

掟破りをする意に沿わぬ芽は追放してしまえとトレントに同意していた少し前の自分を呪う。視野狭窄だと肩を竦めるルイスの言葉の意味はそういうことか。トレントに束縛され掟に固執し、小さな少女の温かい思いやりを切り捨てる冷淡な芽になるところだった。

「……"コーラカル"といったか」

何を言うつもりだ。勝手なことは許さないとトレントが騒ぐのを感じる。少女ひとり救ったところで借りを作ったつもりか、用が終わったら帰れと突っぱねる台詞を吐くべきでそれ以外の言葉は要らないのだと囁く束縛の声を無視してシスは猟矢たちに向き直った。

「ニルスのこと、恩に着る」

だがそれとこれは話が別。恩を売ったところで同盟などといったものには加わる気はない。そう言えとトレントの囁きが聞こえる。あぁ、そうじゃな、と声なき同意を返す。

ミリアム諸島は争いに加わる気はない。森を損なう人間たちなどに関わらない。"火に汚れた者"と交わらない。それがトレントの意思。それに従うのが長老たる者。幹と芽の契約は違えることはない。

だが。

「若い芽を助けてくれた恩を返そう。…必要ならば呼ぶがいい」

必要ならば一度だけ、森は"コーラカル"のために働こう。それがニルスを助けてくれた恩返しだ。

そんな約束などするなとわめくトレントは後で宥めておこう。非常に骨が折れるだろうがそれは自分を思う少女を見捨てる冷淡な芽になるところであった自分への罰だ。

「同盟は結ばない。だが、一度だけ力を貸そう」

「…それだけでいいんですか…?」

割り込んだのはニルスだった。長老に意見するなど恐れ多いことだが、どうしても言いたい。震える声でニルスは言い募る。

「トレントの意思に従って、何もしないで、それでいいんですか…?」

誰も。誰も来なかった。捕らえられたニルスの助命を嘆願する声も。解放を求める声も。擁護する声も。何もなかったのだ。母親でさえ口をつぐんだ。すべては"トレントの意思だから仕方ない"と言って。何も。誰も。ニルスのために声をあげなかった。

優しい母も友人たちも長老も、誰も。トレントの意思だからと言って見捨てた。その恐怖を抱えてニルスはこの里で生きていかなければならない。どうせいざという時は捨てるのでしょうという思いを抱えて。

それほどトレントはミリアム諸島やアレイヴ族にとって絶対の存在なのだ。だがそれは本当に正しいのだろうか。

訴えるニルスの言葉を防人たちは気まずそうに顔を逸して聞いていた。捕らえられたとはどういうことだと説明を求めるために解放は嘆願したがそれは形式的なもので、トレントから沙汰を聞いた途端に口をつぐんだ。いくらなんでも擁護する者まで処刑とはやりすぎではないかとは思った。だがそれを口に出さなかった。トレントの意思だからと諦めた。その負い目が胸を蝕む。

「わたしは、そんな里なら…」

「ニルス!」

素早く遮ったのは訴えを聞いていたルイスだった。

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