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カミサマが助けてくれないので復讐します 2  作者: つくたん
砂漠の島 クレイラ島
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おやすみ、また会うことなどないけれど

銀の玉に静かに魔力を注ぐ。ぱち、と空気が爆ぜた。

「…精霊よ、我が声に応えよ」

脳裏に自然と浮かび上がる文章を読み上げていく。これが詠唱で、これを唱えることで自身の魔力と合わさって召喚をなすのだと直感で理解した。

集中するために閉じた目を開けてちらりとアッシュヴィトを見やれば、4つ同時に魔力を注いで召喚に挑戦する姿が見えた。その表情は余裕に満ちている。

あちらに関しては心配するようなことはなさそうだ。ならば自分は目の前のことに集中するとしよう。

「天の雷、憤怒と罵倒の…えぇと…」

脳裏に流れる言葉がだぶり始める。"ソール・オリエンス"によって与えられた言語翻訳能力が膨大な文章に音を上げて翻訳を放棄したのだろうか。それとも下手に翻訳しない方がより効果が高まると本能が判断して翻訳をやめたのか。どちらかは猟矢にはわからないが、ひたすら脳裏に流れてくる言葉を紡ぐ。

ラゴドカッラブロ(雷神から分かれし者)ボアエコ(我が声に)ファール(応えよ)

ぱちん、と玉が弾けた。締め切っているはずの部屋なのに、風が頬を撫でた。うなじのあたりにちりちりと痛みが走る。紫電が散った。

電撃は収束してその場に弾ける。そこに鎮座するのは手のひらに乗る程度の大きさの少女のなりをした精霊だった。

「…やった」

ぱちぱちと電光を発するその中心に漂う小さな姿は雷神の眷属である精霊だ。呼び出した本人である猟矢をじっと眺めている。指示を待っているようだった。

「えぇと、この手紙をエルジュのエルデナって人に届けてほしいんだ」

小さく折りたたまれた封筒を手渡す。それはグウィネスが弟子であるエルデナに向けて書いたものだ。中身を見てみたが何ら他愛もない天気のことが書いてある文章だった。砂嵐のせいで外出できなくて大変だとか、この時期のクレイラ島は雨が降らないから暑いだの、何ら他愛もない。これがクレイラ島の現状を告げる内容だと言われても信じられない。

小さな手でそれを受け取った精霊は笑顔で頷いて部屋中を飛び回る。察したスティーブがそっと窓を開けると、そこから勢い良く飛び出していった。そのまま砂嵐の向こうへ消えていく。

どうやらきちんと命令を受領してくれたらしい。ほっと胸をなでおろす猟矢の横を4つの光がかすめた。同じように手紙を抱いた精霊たちは窓から静かに飛び立っていった。アッシュヴィトも同じように召喚を済ませたようだ。

「やれやれ。説得に時間がかかったヨ…。サツヤはダイジョウブだった?」

呼び出されたと思ったらやることが伝書鳩かと怒る精霊をなだめ、こちらはお前たちの主人である雷神の主だぞと威光で脅しつけてようやく首を縦に振らせることができた。呼ばれたからには仕方なくと渋々といった体だったのだが、猟矢はどうだったのだろう。

アッシュヴィトの問いに猟矢は目を瞬かせる。ものすごく喜びながら手紙を受け取って飛び立っていった。まるでそれは、猟矢に召喚され使役されることが光栄であるかのような。

「…どんだけだよ」

気位が高い精霊がどんな雑事だろうと喜んで従事したくなるほど。どれだけ良質な、そして膨大な魔力を持っているのだ。やはり猟矢は規格外だ。ひくりと口端を引きつらせてアルフが呟いた。

「ほんっと、ジョーダンじゃねぇ」

自覚がないのだから質が悪い。さて猟矢の規格外については今更なので置いておく。それよりも、と窓を閉めたグウィネスが続けた。顔色は例えようのないほど悪い。悪いというものではない。最後の持ち物である気力さえ尽きようとしている。

「これでわたくしの役目は終わりましたわね。…さすがに疲れましたわ」

まるで徹夜しただけのような、本当に軽い口調でグウィネスは強がる。死がすぐそこまで迫っている。死神は彼女の真後ろに立って、その手をグウィネスの首にかけている。気力で耐えているそれはもう、耐えられないところまできていた。

それでも最後まで。最期まで何てことのないように虚勢を張る。普段通りに傲慢に高慢に振る舞う。自分の死など心配することはないのだと示すために。

ここで歩みを止めてはならない。自身の死を乗り越えてもらわねばならない。少しでも負担が軽くなるようにグウィネスは平然としたふりをする。

「少し眠りますわ。…眠りを妨げたら許しませんわよ」

あくまで普段通りに振る舞おうとするグウィネスは片手をあげて寝室に向かおうとする。

あと少し。あと少し。皆がおやすみと言って見送るまでもってくれ。背後に迫る死神よ、願わくばほんの少しの猶予を。

「あぁ。……おやすみ、グウィネス」

「おやすみ」

「おやすみなさいデス! 起きたらまた遊んでくださいデス!」

深刻な顔のスティーブとヴィリに反して、事態を理解していないゼフィルだけは無邪気に手を振った。

ゼフィルの幼い思考では、徹夜で頑張ったから疲れているのだという理解しかない。"頑張る"の内容など知らず。

「えぇ、オ・ギ・サイミン(また会うことなど)オク(ないでしょう)

手を振ったグウィネスが寝室への扉を締める。それきり、寝室から音がしなかった。

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