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カミサマが助けてくれないので復讐します 2  作者: つくたん
砂漠の島 クレイラ島
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砂に咲く恋の花

「ちょっと待て。お幸せにって」

切羽詰まった状況ほどどうでもいいことが気になってしまう。一種の現実逃避なのだろう。逸れた思考が違和感を引きずり出してハーブロークは声を上げた。

それらしい素振りなど一切なかったが、スティーブとヴィリはそういう仲だったのか。

「あぁ、まぁ、そうだね」

しれっとスティーブが答える。言うべき必要もないので黙っていた。わざわざ公言するほどでもない。それらしい素振りがなかったのはヴィリが素っ気ないからだ。ふたりきりになれば可愛らしいところもあるのだがそれはまた別の話。

「指輪してるんだけど気付かなかった?」

「気付かねぇよ」

左右それぞれの人差し指と薬指に一つずつ。4つの指輪を見せつけてくる。確かに左の薬指の指輪だけは金色をしていた。銀で作られる武具と区別をつけるため、ただの装飾品であるものは金や銅で作られる。他のものより装飾が細かいそれは、しっかりとスティーブの左の薬指に嵌められていた。

思わずバルセナがヴィリの手を取ってそれを確認する。布製の手甲で巧妙に隠されているが確かに同じものが左の薬指にあった。

「わぁステキ。イイコトダヨネェ」

恋人同士が微笑ましいことはいいことだ。アッシュヴィトが小さく手を叩いた。彼女はパンデモニウムによって壊されてしまったひとつの愛を知っている。壊され、遺された片割れは自分の無力さを呪いながら生きている。だから目の前のそれを心から祝福した。

話題の中心、それも自身の恋愛に関することであることが照れくさいのか、ヴィリがバルセナを振り払ってそっぽを向く。口布の位置を直して腕を組む。それが照れている証拠だと知っているスティーブが相好を崩した。まったく可愛らしい。

「サツヤはそういう浮いた話ねぇのかよ?」

「は?」

年頃なのだからひとつやふたつあるだろう。そうハーブロークに水を向けられ猟矢が目を瞬かせる。

幼少の頃に好きだった女の子はいる。だがそれは恋愛というよりは愛着に近い。この中に飛び込めるような愛だの恋だのはまだない。はずだ。

「そういや元の世界に女の幼馴染がいるっていう」

「ほほぅ? おいアルフ、ちょっと詳しく聞かせろ」

鷹の姿でいた時、周囲を哨戒しろというバルセナの指示に従って上空を飛んでばかりいたため、そういった雑談はほとんど聞いていなかった。前のめりになるほど興味津々でハーブロークが問う。

情報を当てにされるのは情報屋としての気概をくすぐられるのか、得意気に手帳を取り出す。その中には猟矢の情報がしっかりと書き込まれている。

「ユヅカ。歳はサツヤと同じ。サツヤの実家の弓の道場に通ってて、サツヤより弓の腕がいい。なんと驚くことにラピス島の巫女に瓜二つ……で合ってるよな?」

ちらと猟矢を見て正解を確かめる。アルフは今までの何気ない雑談の中でしっかり情報を拾って記録していたらしい。さすが"観測士"と呼ばれるだけはある。

「ほぅ、サツヤもスミに置けねぇなぁ」

「いやいや、ユズは別にただの幼馴染ってだけで…」

愛だの恋だのはない。小さい頃から家が隣近所だったというだけで。そんなわざわざこんな時に、愛し合う恋人同士の話の後で出すような間柄では。否定する猟矢の耳はほんのり赤い。

否定する猟矢をハーブロークがにやにや眺める。成程、幼馴染故に自覚しない恋心か。ハーブロークの目配せを受けたアルフは了解したように頷いた。

「でも幼馴染と似てるからって巫女にあそこまで入れ込まないだろ」

彼女がパンデモニウムに誘拐され、その後生ける人形のような状態で返還された時のことだ。幼少の頃から皇女として交流があったアッシュヴィトが激高したのは理解できる。だがそれと同じように猟矢も激怒していた。

確かに少女にあの仕打ちをするのは酷いことだと思う。アルフたちが抱いた感情は同じだ。だがそれは一歩引いたものだ。哀れとも思うし許せないとも思う。だがあれほど激高はしない。

猟矢があれほど激怒したことについて、巫女がただの幼馴染に似ているというだけでは説明できない。愛着だとか友情だとかその手の感情由来の怒り方ではない。あれは恋心からくる感情だ。巫女を幼馴染と同一視し、彼女が傷つけられたことによる怒り。

「あんまりイジめちゃダメダヨ?」

見かねたアッシュヴィトが助け舟を出す。小さな恋の芽は見守るのが一番。あれこれ世話を焼けばかえって枯らしてしまうものだ。

「あら、いいじゃない」

たまには不真面目に浮いた話でも。バルセナがくすくすと笑う。

そうでなければこの空気には耐えきれないだろう。今まさに、グウィネスが命を削っている。彼女が命を削って作り上げる武具が完成する待つしかないこの重苦しい状況。じっと待っていては重苦しい沈黙で潰れてしまう。こうしてふざけた話でもしていなければ気がもたない。

気が気でないスティーブとヴィリの緊張をほぐすために、あえて不真面目な話題で場を満たすのだ。

「ということで今夜は付き合えよ、サツヤ」

「えぇ!?」

そうして夜が更けていく。ざらざらと砂嵐が流れていく音に抱かれながら。

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