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カミサマが助けてくれないので復讐します 2  作者: つくたん
貿易都市エルジュ
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遺物の有用性について

断頭する断罪の刃を振るう十章衆筆頭。"断罪"マズルカ・ヴェイジマーズル。

犠牲の歓喜を血と死で詩として歌う十章衆第2位、"犠牲"シシリルベル・フランベルジュ。

狂信する銀槍の騎士。十章衆第3位、"狂信"ジャーベル・グリアノーテ。

真実など何一つ存在しない、させない。十章衆第4位、"虚偽"ハラミカ・ヴァレヘテリア。

不動かつ無能。堅牢かつ有能。十章衆第5位、"木偶"トトラ・エプヴァンタイユ。

可能性の発見と希望の発現。十章衆第6位、"幸甚"フェーヤ・フェーユ。

豪華絢爛、享楽の狂乱。十章衆第7位、"災厄"カリコ・マラガナイト。

まさに化物。形容はそれひとつ。十章衆第8位、"戦鬼"ニネマライア・マトリア。

騎士の忠義を忘れた男。十章衆第9位、"鉄壁"ギルベルト・ワールドウィカ。

砂時計の女傑。十章衆第10位、"対立"サンドリア・ザントアウア。


「十章衆、どう思う?」

その場は解散し、彼らは拠点の各所に散った。玉座の間から立ち去った彼らの気配の残滓さえなくなった頃、ネツァーラグは口を開いた。その口調は彼らを心底馬鹿にしている口ぶりだった。

十章衆などと、いかにも幹部級の中核らしく名乗っているが片腹痛い。偉そうに名乗ってはいるが、我々の敵である"コーラカル"どもにその存在すら知られていない。認知されていないほど知名度が低い。それなのに、いかにもな名前をつけて粋がっている。なんと滑稽だろうか。

「古いだけというのも考えものだ、そう思わないかい?」

彼らは5年前のビルスキールニル陥落に参加した。そこからいる古参である。

不滅の島と呼ばれる島を滅ぼすために、それまでただのならず者同然の烏合の衆だったパンデモニウムはひとつの組織として再編成することになった。その再編成の際、当時新人だった彼らは実力を買われて幹部級に叙された。さらにその上としてネツァーラグとセシル、そしてそこの玉座に座すロシュフォルがいるのだがそれは別の話。

そして烏合の衆から組織となったパンデモニウムはビルスキールニルを滅ぼした。ビルスキールニル陥落を機にパンデモニウムの名は世界に知れ渡った。それから勢力を拡大し人が増えて今に至る。

そして今、人が増えたおかげで彼らの地位は転落している。彼らはそれを認めようとはしていないが、パンデモニウムの中には彼らをしのぐ力を持っている人間など何人もいる。同じカーディナル級相手に手合わせと称して戦い合えば彼らは簡単に敗北するだろう。

設立当時は全体の数が少なかったが故に相対的に上位であっただけ。数が増えれば彼らより上の人間がどんどん出てくる。

そう、つまり彼らは時代遅れの産物なのだ。古いというだけの価値もないアンティーク。

命令がないのは信頼の証。命令を下さなくてもやってくれると信じているから任されていると彼らはそう思っているようだが、単に古臭くて使えないので放り捨てていただけだ。

だが、古いだけの遺物にも使い道はある。だから呼びつけた。今までその辺りに放り捨てて忘れ去っていたそれをわざわざ拾い上げたのだ。

「古いだけのアンティーク、使えると思うかい?」

「役割さえ果たせばどうでもいい」

ネツァーラグの問いにセシルは冷淡に返す。

斬れるならば量産品の鉄剣だろうと伝説の名剣だろうとどうでもいい。大切なのは剣の斬れ味であり、首を落とすという役割ができるかだ。それ以外は議論の外。

「合理的で結構。セシルらしいね。……ほら、これ、ドラマクから」

十章衆とかいう笑い者の集団の召集に居合わせてしまったので後回しになったが、本来のネツァーラグの目的はこれだ。

腰に吊り下げていた武具から分厚い報告書の束を取り出し、セシルに渡す。

この報告書は自分たちと同じく最古参である研究者からのものだ。彼の存在が狂気の研究者たち"ラットゥン・アップル"のはしりとなった。

同時に、彼は"破壊神"の製作者の筆頭である。彼を最高責任者として"破壊神"を作るに至った。

そうしてできた"破壊神"であるが、その戦果はあまり奮っていない。何とかしろとセシルに苦情を言われ、彼はさらに実験を重ねて"破壊神"の強化に勤しんでいる。

「厚いな」

「研究者は論文でないと語れない。論文は仮定、実験、結果、結論から成る。必然的に長くなるさ」

読むのが面倒なら結論だけ読めばいい。論文の形式ならこの分厚い報告書の最後の1枚がそれにあたるだろう。

「そうか」

言われ、セシルは最後の1枚だけに目を通すことにした。重要なのは役割が果たせるかで仮定も実験も結果も必要ない。結論さえあればいい。

あとの分厚い報告書はネツァーラグへ返し、セシルは最後の1枚だけを読む。そこにある4文字だけを見た。

「"問題なし"……そうか……よかった」

遺物は思った通りに使えそうだ。セシルはそう微笑んだ。

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