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カミサマが助けてくれないので復讐します 2  作者: つくたん
再び、ベルズクリエ
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若王と老王

ベルズクリエからの返答です。送り返されたそれは、予想のうちの範囲だった。

彼女らは彼女たちで思うようにやる。ヴィリアの奸計などには乗らないと。それを示す文面だった。

予想通りだった。あのベルズクリエの女王は我々の手など振り払い突っぱねることなど見抜いていた。

さてこれで駒はひとつ進んだ。次の手だ。車椅子の若き王は肘置きを指で叩く。

「いいんだね?」

「ああ」

王と対面していた女性が問い、王はそれに頷いた。

予想通り、ベルズクリエの女王は我々を振り払った。それならば予定通りに計画を進めるだけだ。

「シヴァルスの耄碌王を暗殺せよ」

冷淡に、若き王は告げた。わかった、と女性が頷き、席を立つ。

シヴァルス王の暗殺。それをなす手段を持っている。準備はとうに済ませていて、あとは実行するだけだ。そして、こうして許可が下りた。ならその通りにやるだけだ。

実行に移す彼女を見送り、王は車椅子の車輪を回す。移動を察して背後に控えていた美しき王妃が介助の手を伸ばす。

その手を取り、王は彼女の手を引く。顔の高さを合わせろという要求の通りに王妃は身をかがめた。

直後、乾いた音と共に王妃は床にもんどりうった。

「遅い、愚図が」

王妃に平手を食らわせて吐き捨てる。申し訳ありませんというか細い声の謝罪を黙殺する。

夫の行動を予測しそれより先に助けるのが妻の役目。それができない愚図にはこの仕打ちが当然だ。

「罰だ。庭に一晩立っていろ。一糸まとうことも許さん」

「わかり…ました……」

「今からやるように。わかったら行け、罰を増やされたくないのなら」

いつまで床に伏せている。罰を与えられたのだから即座にその通りにして罪をすすぐべきだ。

言い放ち、王はそれきり王妃に一瞥もくれず踵を返した。言い渡された罰に震える王妃だけがその場に取り残されていた。


今頃、"コーラカル"の旗印ふたりはパンデモニウムの人間と一戦交えている頃だ。迎撃のために立ち去ったのは少し前。それからベルズクリエの女王がエメトラルダを連れて自国に待機し、そして同じく自国へと戻った自分が密書を送りその返事が来て今に至る。

戦闘というものがどれほど時間のかかるものかは知らないが、少し手のこんだ喧嘩のようなものならばもう決着がついたか、そろそろつくかの頃だ。

あまり時間はない。早く駒を進めなければ。シヴァルス王の暗殺を。排斥を。

「兄貴、あれはないぜ」

彼女に非は何もないだろう。非難する弟の声が聞こえ、王は肩を竦めた。

理不尽なのは承知だ。だが、王妃への態度はあれでいいのだ。いくら弟とはいえど、諫言は聞いてやらない。

「それでいいのさ」

理不尽なほどに虐げられたい。あれが歪んだ王妃の歪んだ望みなのだ。愛する妻が望むことなのだから、愛をもって叶えるべきだ。

「やれやれ」

それが愛か。雪が降る窓辺からは、言われた通り罰を執行する王妃の姿が見えた。


もうじき答えは出るだろう。"コーラカル"の旗印たちはパンデモニウムを迎え撃ちにいった。それでもってベルミア大陸を守護する心づもりであることを証明するのだと言って。

だが、あの若人に何ができる。相手はあのパンデモニウムだ。万魔の悪徳。邪悪の災禍。様々な言葉で恐ろしさを語られる集団だ。

たとえ、旗印の片方があのビルスキールニルの皇女だったとしても。それでもパンデモニウムには勝てない。

だって一撃でひとつの国が消えたのだ。どれほど神に愛され庇護を得た強者であっても、ひとつの国を消すあの力を前に何ができる。捻り潰されるだけだ。

いや、今起きているであろう戦いでは、おそらく旗印が制するだろう。だが、その報復に例の力が使われないとは言いきれないのだ。否、使ってもおかしくはない。

死にたくはない。死にたくはない。ここまで生き長らえてきた。若い頃は過ちをいくつかしたが、それでも円満に国を運営してきた。内乱も戦争もなく、民は幸福に満ちている。

ここで躓いて死ぬわけにはいかない。自分の命もそうだし、民の命もだ。

"コーラカル"はベルミア大陸を守るといった。そしてそれを証明するために、反逆者を始末しに来たパンデモニウムを返り討ちにしている。こうやって、パンデモニウムを追い払うから我々と手を組もうと言っている。

だが、その言葉は本当だろうか。パンデモニウムは恐ろしい万魔の悪徳だ。それと戦うなどとは言葉だけで、いざとなれば見捨てるのではないか。

"コーラカル"はあくまでディーテ大陸の都市国家同士の相互防衛同盟だ。今はパンデモニウムというわかりやすい敵がいるから反パンデモニウム同盟という扱いだが、本来ならディーテ大陸に訪れる脅威への対処なのだ。他の国々はおまけにすぎない。

だから、理念に厳密に基づけば、ディーテ大陸以外の国など防衛の範疇外だ。つまり、ディーテ大陸にとって脅威と見なされればベルミア大陸だって敵になりうる。それを理由に見捨てることだって、十分にありえるのだ。

やはりパンデモニウムには従うべきだ。反抗すればそれ以上の力で殴られる。殴られれば無事ではすまない。それが恐ろしい。

なぜ反抗など唱えるのか。パンデモニウムの恐ろしさを知らないわけではないだろうに。大人しくしていれば理不尽に殴られることもないのに。

恐ろしい。恐ろしい恐ろしい恐ろしい。強者に反抗するという愚かな弱者を見るのが恐ろしい。

「いいか、よく伝えるのだ。パンデモニウムへの反逆者を捕らえ、引き渡したのはシヴァルスなのだと」

従順にやっていくから。だから。あの力を振るうのはやめてくれ。国を、数多の命を消すのはやめてくれ。

あぁ、恐ろしい。恐ろしい。老いた王は未来に震えた。

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