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カミサマが助けてくれないので復讐します 2  作者: つくたん
再び、ベルズクリエ
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樹を捨てた琥珀

猟矢の愕然とした呟きを聞き、アッシュヴィトがはっと息を飲む。まさかもうすでにネキアは殺されてしまったのか。

「ちょっと、まさかヤっちゃったノ?」

容赦できない理由がまた増えた。ネキアの死はカーディナル級の彼の死で償わせなければ。

問うアッシュヴィトに彼は緩く首を振った。あの老婆はシヴァルスの兵が殺したもので、自分はそれには関わっていない。到着した時にはすでに死んでいたか虫の息だったか。

老婆に直接危害を加えた兵士はあの通り、そこに冷たくなって転がっている。パンデモニウムから遣わされた自分を罵ったので罰として殺した。直接関係していないが、間接的に老婆の仇を打ったことになる、のだろうか。

「……ホントにぃ?」

アッシュヴィトが疑いの目を向ける。彼の代わりに肯定したのは檻の中のセレットだった。

「ああ、ほんと。ネキアに関してはそいつは悪くねーよ」

その口ぶりはやけに軽い。セレットのいつもの軽薄さだった。老婆を失った悲しみなど感じていないような言い方だった。

その軽さに猟矢は違和感を覚えた。仲間を失って悲しくはないのだろうか。それとも、その答えも"ネキアの複雑な人生"というやつか。ネキアのことについて問うと、いつもそうやってはぐらかされるのだ。

「まぁ、どっちにしろ殺すダケだケドネ」

老婆の仇でなくとも、彼は殺す対象だ。パンデモニウムである以上は皆殺しにする。

ほの暗く呟いて、アッシュヴィトは右手の指輪を抜いた。"グピティー・アガ"とその名を呼べば、指輪はレイピアに変ずる。

「やれやれ、2対1か」

まぁ構わないが。"高潔"の名を持つ彼は右手をひらめかせる。螺旋を描くように手首に巻き付いた銀の腕輪が伸縮し、手の甲に添って真っ直ぐ伸びて尖る。

腕の長さほどの簡易な槍だ。棘のように尖った先端をこちらに向け、彼は名乗りをあげた。

「名乗っておこう、カーディナル級、"高潔"ブランガ・パンデモニウム……クァーユスニーウだ」

姓の部分だけ言い辛そうにして、ブランガは自らの名を口にする。

わざわざ丁寧にパンデモニウムの名を名乗りに混ぜている。自分はパンデモニウムなのだと誇示するところが"高潔"の所以なのだろう。それほどまでに彼はパンデモニウムであることに誇りを持ち、それに固執している。

「名乗りをドーモ。作法に則ってボクも名乗るべきカナ? ビルスキールニル第375皇女、アッシュヴィト・ビルスキールニル・リーズベルト」

"不滅の島"ビルスキールニルの第375皇女。神を従える"灰色の賢者"。そして、"コーラカル"の旗印。

きっちり名乗ったアッシュヴィトを見て、猟矢はちらりと思う。俺も名乗るべきなんだろうか。でも、格好つけた二つ名も称号もないし、やや負ける気がする。

「ほらサツヤも! 締まらないデショ!」

「え!? えーと、"コーラカル"の……猟矢!」

アッシュヴィトに促されて咄嗟に名乗る。やっぱり締まらなかった。こういう時のために格好いい名乗りでも考えておくべきだろうか。

「じゃ、自己紹介も済んだし……キミの名前の前に"故"ってつけてアゲルヨ!」

遠回しに殺すと言い、アッシュヴィトは"グピティー・アガ"を振るう。刃にまとわせた衝撃波を、レイピアを振り抜くことで飛ばすアッシュヴィト得意の刺突剣技だ。

「こんなもの…っ、!」

「"志願者による宿意"、"指導者による標準"!」

気を取り直した猟矢もまた弓を引く。アッシュヴィトのように殺すとまでは言わないが、とにかくブランガは今倒さねばならない気がした。理由はないが直感だ。彼を倒さねば大事なものを失ったままになると本能が告げている。大切なものを取り戻すために弦を引け。

放たれた矢は真っ直ぐ目標点へ向かって飛ぶ。"志願者による宿意"でマーキングした場所はブランガの手首だ。武具を破壊して無力化を狙う。

外すわけがない。アッシュヴィトが放った衝撃波を打ち払い、隙ができた懐に矢が飛び込む。寸分違わず正確に手首の銀色を射抜いた。ぱりん、と銀が砕けた。

「ちっ…」

ブランガは短く舌打ちする。大した武具ではないので砕けても惜しくはないが、唯一持っている武具が壊れ丸腰になったのはまずい。

新たに調達しなければならない。そう思ったブランガへ第2、3の矢が降り注ぐ。

複数の矢をまとめて雨のように打ち下ろす攻撃の範囲から飛び退る。そこを狙って衝撃波が襲った。

「矢の雨は陽動か。…くそ…っ」

直撃した。衝撃波は鋭い刃のようにブランガを裂く。少し狙いが外れて浅かったせいで無傷なのは僥倖か。

否。とんでもない不幸である。衝撃波はブランガがまとっていたカウルを裂いただけに終わった。だがそれは、ブランガがカウルで隠していた容姿を露呈させることであった。

衝撃波の余波の風にあおられ、ぱさりとフードが落ちる。白日に晒されたのは。

「……その顔…!!」

アレイヴ族特有の褐色の肌と銀の髪である。

驚く一同にブランガは舌打ちする。腕輪を砕かれた以上にまずいことになった。奴らにこの疎ましい容姿を晒すはめになってしまうとは。

「アレイヴ族…!?」

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