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カミサマが助けてくれないので復讐します 2  作者: つくたん
再び、ベルズクリエ
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高潔と秩序と深淵と

「ノーブル・コンダクトからの報せだ。パンデモニウムに反意ある集団を捕らえたとか」

レッター級からあがってきた報告を彼は口にした。

この頃ベルミア大陸で流れている噂がある。パンデモニウムから逃げ出した脱走者がベルミア大陸に潜んでいると。

その噂の真偽をノーブル・コンダクトが調べあげたところ、反パンデモニウムを掲げる組織のところに逃げ込んだと判明し、そして彼らを拿捕したというのだ。

それを引き渡す。脱走者も含め組織の人間の処分はパンデモニウムに一任する、と。そう連絡がきたのだ。ちなみに件の組織はシヴァルス国に潜んでいたという。

「差し出すから供出の話は見送ってくれ、と言いたいのだろうな」

こうして反意ある集団を検挙しパンデモニウムへの恭順を示すから、どうか。と。命乞いだ。

自分はまだ金の卵を産めるガチョウなのだから、どうかそれを絞めるような真似はやめてくれと言いたいのだろう。

「へぇ」

報告を読み上げた彼にネツァーラグは面白そうに答えた。まだ使えるから殺さないでくれとは。

しかし命乞いは結構だが、その内容が供出を免除してくれではなく先送りにしてくれとは。負債を未来に先送りにして現在の平穏に固執するベルミア根性がよく出た言葉だ。ある意味感心さえする。

「だ、そうだが」

どうするんだ。"高潔"の二つ名を持つカーディナル級の彼はネツァーラグに問うた。確か脱走者の件は、団内の秩序を司るオーダー級としてネツァーラグが引き受けていたはずだが。

問いかける視線を受けたネツァーラグは、さぁね、と肩を竦めた。脱走者を追い詰め、片方は殺して片方は精神を壊して再起不能にさせた。そのことは表向きは任務の成功とされたが、実情は邪魔されて殺しきれず敗走したにすぎない。

プライド的なことを言えば自分が乗り込んであの邪魔者ごと皆殺しにしたいところだが、まずは上の意見を聞こう。

そう言ったネツァーラグは視線を上へ向ける。パンデモニウムの上位陣が集うこの部屋の一段高いところには厚い紗をかけた玉座がある。そこにはパンデモニウム第1位"デューク"のロシュフォルがいる。

まずはトップの意見を聞くのが先だ。紗に覆われた玉座を様子を窺う。

「世界を手に入れろ」

玉座から声がした。それは直接的な命令ではなかった。だが"高潔"の称号を持つ彼は即座に了解した。

「御意」

世界を手に入れろ。それはすなわち、パンデモニウムが世界を支配すること。そのためには何をするべきか。決まっている。逆らう者を皆殺しにするのだ。つまりノーブル・コンダクトが差し出してきた集団は見せしめにして殺すべきだ。

そして、ノーブル・コンダクトの要求である供出の見送りはしない。パンデモニウムが世界を支配するためには"破壊神"が必要で、その強化のために人間が必要なのだ。様々な生物を合成した模造の神はまだ肉体が安定しておらず、そのため肉付け作業が必要だった。その素材とするため、ベルミア大陸へ10万人の人間の供出を求めていた。

だから"破壊神"のため、供出の見送りはできないのだ。反意ある集団を殺し、そして10万人の人間を差し出させる。それがパンデモニウムが世界を支配するために必要なことで、第1位"デューク"ロシュフォルはそれを命令しているのだ。

そう解釈した"高潔"は膝をついてその命令を受諾した。命令の声は自分に向けて発せられたものだと思っている。"デューク"ロシュフォルは自分に向けて命令したのだと。

「……あぁ、頼む。"高潔"ブランガ・クァーユスニール」

代わりに言葉を返したのは玉座の隣に立っていた第2位"アークウィッチ"セシルだった。セシルの言葉を受け、"高潔"ブランガ・クァーユスニールは深く頭を下げた。

「確かに、拝命した」

そう頭を垂れた彼は立ち上がるなり"ラド"を起動する。ぱちん、と転移魔法が発動し、ブランガの姿はその場から消えた。

「行動が早いね」

見送り、ネツァーラグは肩を竦めた。高潔と呼ばれるブランガのことだ。パンデモニウムに反逆する人間がいるというだけで耐えられないのだろう。だから即座に殺しに行く。

「…仕事熱心なのはいいことさ」

忠実に働くブランガのことを指し、何の感慨もなくセシルは答えた。

行動が早い人間は結果を出すのも早い。よくも悪くも。

結果が出れば失敗にしろ成功にしろ事態は先に進むし、物事も進む。運命の歯車も進む。さくさく次に行こうではないか。それだけ事態が早ければ早いほどパンデモニウムが世界を支配するまでの時間が短くなる。

ところで話は変わるが、とセシルは唐突に話題を変えた。

「眠れないのか」

目の下が大層な血行不良を起こしている。隈というやつだ。

感情もない人造の人間だが、普段よく見る人間が不調そうだとそれなりに気になるものなのだ。この感覚が心配というものなのだろうか。感情がないので正解はわからない。

「あぁ…まぁね……夢見がよくなくて」

「…そうか」

だからといって何かできるはずもなく。夢さえ見ないセシルは、眠れないというネツァーラグに何もしようがなく会話を打ち切るしかなかった。

夢さえ見ないのだから、夢見が悪いという意味がわからない。聞くだけ無駄に終わってしまった。しかもネツァーラグのこの言葉尻の悪さは触れてはならないところに突っ込んでしまったよう。余計なことをしてしまった。

胸になんだか重りがぶら下がった気がする。これが罪悪感というやつだろうか。

「気にしなくていいさ。僕の悪夢はとある人物を殺せば晴れるんだから」

「…そうか」

「そうだよ」

だからこの手であいつを殺させてくれ。この世界を構築した少年を殺させてくれ。その機会を必ず譲ってくれさえすれば、自分は設定に忠実な人形でいよう。

「僕はまだ死ねないんだ」

ヒリディヴィ山の洞窟の伝説をふと思い出す。からん、とどこかでベルが鳴った気がした。

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