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第七十話 音属性魔法の覚書


 そろそろ一旦、俺の魔法についてまとめておこうと思う。

 増えてきたらその都度追記していく予定だ。



・サウンドボール

 これが俺の魔法の全ての大元と言っていいな。むしろ、俺の音属性魔法は、サウンドボールを介さないと何もできない。

 俺にはシャボン玉に見えるし、触れてみるとしっかりと触っている感触がある。

 でも俺以外の人間には全く見えないみたいだし、触ったり吸着させても一切感触はないようだ。

 また、やろうと思えば一瞬でサウンドボールを移動させる事が可能だ!

 恐らくなんだけど移動だけで言うなら、音速を越えているかもしれないな……。

 

 現状の俺では、最高三百個のサウンドボールを無詠唱で、さらに一瞬で生成可能。

 しかも三百個生成しても魔力は枯渇せず、全く余裕がある状態だ。

 そして空中に留めておく事も可能だし、それぞれに単体で指示を出す事が出来るし、魔力の糸でボール同士を繋ぐとリンクさせる事も出来る。

 さらには、一個のサウンドボールに対して、複数の指示を出してもいい。しかも上限がないのも素晴らしい!


 だが弱点がある。

 サウンドボールを移動させる際に、いくつかのルールが存在しており、それが弱点に近い形になっている。

 一つ目は、指示を出したいサウンドボールに対して指示を出す場合、そのボールに視線を合わせなくちゃいけない。

 戦闘中に視線をくれてやる事で、何かをしてくるのがバレる。今のところ父さん位しか対応してこないが、きっと他にもそういう敵が出てくるはずだから、この弱点を埋められるよう現在鋭意研究中だ。

 二つ目は、細かい移動動作が指示できず、吸着指示を出す場合は集中力が必要になる。

 例えば、後述の魔法でいくつか敵の人体にサウンドボールを吸着させるものが存在している。

 大雑把に指示していいなら全然問題ないけど、逆に耳や口等に関しては集中しないと指示が出せないし、相手が高速で動き回っていると吸着させる事も難しい。ただ一度吸着すれば、俺からどんなに離れようとも指示を忠実にこなしてくれるのはありがたい。

 特に戦闘中では顕著にこの二つ目の弱点が出てきていて、後述の即死魔法や状態異常魔法は脳や耳にピンポイントに吸着させなくちゃいけない。

 その時のプロセスとして、指示を出したいサウンドボールを見る→相手の吸着させたい部位に移動するように指示する、こんな感じだ。

 この部位に指示を出す時が大変で、相手が動いてしまうと、指示を出した段階での場所に移動するような動作を取る。

 ここで三つ目なのだが、サウンドボールの移動は、直線限定。

 移動方向を変えたい場合は、そこでさらに追加指示を出さないといけない。

 ちなみに自動追尾とかの指示は受け付けてくれない。追尾させたいのであれば、該当する物体や生物に吸着の指示を出さないといけない。

 それでも最大移動距離は約三キロメートルっぽいので、まぁよしとしよう。


 何だかんだで制約が多いけど、その分広い範囲で便利に使える魔法だ。

 いやぁ、女神様、本当に素晴らしいユニーク魔法をありがとう!


・音を出す

 サウンドボールはあらゆる音を出す事が出来る。

 例えば人の声。一度聞いた事のある声なら、その人物の声を想像するだけでサウンドボールから発生させる事が可能。

 さらには前世で聞いた事のある音や音楽も発生させられる事から、音に関わるものなら基本的不可能はないようだ。

 音量の大きさは自由自在! 非常に便利だぜ。

 特に大きな弱点はないが、唯一述べるなら、一個のサウンドボールで同時に発せられる音は何故か一つだけ。

 指示を出すなら複数でいいのだが、音を出す場合は一回一回再生し終わってから新たに音の指示をしないといけないんだ。

 何でだろうか?

 戦闘中での使用用途は、背後から俺の声を聞かせて振り向かせたり、耳元で音を鳴らして驚かせ、攻撃を中断させたり出来る。


・サウンドマイク

 一番使用頻度が高い魔法だ。

 サウンドボールに《集音》と《伝達》の指示を出す事で、それぞれのサウンドボールが拾った音を、見えない魔力の糸を通じて俺の耳へ届けてくれる。

 こうする事で、戦闘中では俺の死角は極端に減る訳だ。

 背後から忍び寄っても無駄だし、詠唱を始めたらそちらに注意を向ける事が出来るんだ。

 優れた剣士や戦士なら、人の気配で判断するらしいが、悔しい事に俺はその域に達していない。

 まぁでも、気配とかそんな曖昧なのは信用できないから、俺はこいつに頼って戦闘しようかな。

 だって、対複数戦闘でかなり助かってるし!


・聴覚細胞殺し

 周囲に多大なる迷惑をおかけするので、使用頻度がほぼない魔法。

 これは生物共通の弱点を利用した魔法で、聴覚細胞に音による大音量を聞かせる事で複数の症状を発生させて戦闘不能にするものだ。

 人間には三半規管が付いていて、そこに過剰な音を伝えると、回転性目眩、吐き気、頭痛が同時に襲ってくる。

 さらには千鳥足になってまともに歩けなくなる。

 俺は医者とか研究者じゃないから、何でこうなるかは詳しく知らない。だけど、何かのホームページでかじった知識を実践したんだ。

 俺が使用している音は、前世での戦車の主砲を発射する音だ。

 大気を震わせ、近くにいた人間の内臓にも衝撃を与える程の大音量だ。

 うん、相当なご近所迷惑♪


・詠唱殺し

 まず、この世界における魔法の詠唱について語る。

 詠唱は、自分の言葉に魔力を乗せて、大気中に漂う魔力に干渉する。そして綴った言葉によって魔力が世の理や事象にアクセスしてようやく魔法が発動する。

 どうやら綴る言葉によって大気中の魔力の反応が異なるようで、過去の偉大な魔術師はまさに死にもの狂いでどのような言葉に反応するのかを探り、現在は百個以上の魔法が誰でも練習する事で放てるようになっている(魔法解放の儀で無事に魔法が使えるようになった人間のみと付け加えておこう)。

 つまり、大半の魔術師はこの詠唱を遮断する事で、魔法を使えなくする事が可能な訳だ。

 そこで、《遮音》の指示を出したサウンドボールを相手の口に吸着させる事で、詠唱を中断させられるんだ。

 ただし、無詠唱で魔法を放てる魔術師もいるので、そうなるとこの魔法は意味を成さない……。

 まぁ俺の親しい人間は無詠唱使えるんだけど、それ以外は滅多にお目にかからない位だし、こいつは結構活用している。


・サウンドボール電話

 相手付近にサウンドボールを漂わせ、俺の近くにもサウンドボールを生成し、その二つを見えない魔力で繋ぐ。

 そして《集音》と《相互伝達》という指示を与える事で、糸電話のような会話が可能。

 ただ、それだけ。


・ソニックブーム

 現在俺が使える魔法の中で、唯一物理的に攻撃が出来る攻撃魔法。

 指示は《マッハ1で飛ぶ戦闘機の音を発生させる》と、サウンドボール自身を《マッハ1で前進》とする事で、衝撃波が発生。

 爆音を撒き散らしながら前進したサウンドボールから一拍遅れて、強い衝撃波が産み出されて相手を吹き飛ばす。

 最近わかった事なんだが、どうやら速度が速ければ速いほど衝撃波の威力が高まる事がわかった。

 しかし何故か俺の掌から直接射出しないとこの魔法は発動しないので、威力が高まると俺が吹き飛んで怪我をするんだよね。

 最近では不可視だとよく分からないから、わざとベイパーコーンといって、音速で物体が移動する事で大気圧が変動し、サウンドボールの周辺に雲が生成される現象を利用して黙視している。

 でもさ、ベイパーコーンって物体じゃないと出来ないはずなんだよな。

 俺以外が触れないって事は物体じゃないから、普通ベイパーコーンは発生しないんじゃないか?

 ……ようわからんわ。


・ブレインシェイカー

 現在俺が唯一使える、即死魔法。

 脳は実は豆腐と同じ位柔らかいっていうから、ゴブリンに対して試して生まれたものだ。

 音ってのは、大気を振動させて伝わっている。

 そして脳には酸素が送られているから、しっかり大気が存在している。

 そこで脳の内部にサウンドボールを埋め込み、内部から大きい音による衝撃を与える事で脳を破壊し死に至らしめるっていう結構極悪な魔法だ。

 音の大きさが足りないと即死には至らないが、顔面麻痺したり立てなくなったり、まともに会話できなくなったりするようだ。

 この魔法で敵を殺すと、色々と酷い死体が出来上がるので、見てて少し気分が悪くなる。


・ソナー

 探知系魔法。

 音を鳴らして反射してくる音をサウンドボールでキャッチする事で、脳内に映像を送り込ませる。

 本来ソナーとは、空気より音が伝わりやすい水中で利用するものなんだけど、そこは便利なファンタジー世界だからなのか、地上でも問題なく使えた。

 ただ、大きな欠点がある。

 毎回リアルタイムでソナーを使うと、脳が処理しきれないようで激しい頭痛や鼻血が吹き出してしまう。

 なので俺は、大抵一回だけ発動させて脳の負担を減らしているんだ。

 リアルタイムで使えた方が本当はいいから、要研究だな。










 ――ミリア視点――


「何語で書かれてるんだろう、この本……」


 私は今日、ハルっちと恋人二人に会いたくないから休んじゃった。

 ズル休みってやつだね。

 だって、特例で恋人二人が授業に参加するんだよ?

 失恋確定な私からしたら、二人がいちゃついているのを見るの、本当に辛いんだもん。

 私はとりあえず体調不良という事で学校を休み、寮の自室で待機していたの。

 そうしたら、寮で働いているおばちゃん達が、《武力派》によって音楽学校が占領されてるって聞いたの。

 だから私はベッドを飛び起きて、ほんの少しだけの希望を胸にしてハルっちの部屋に向かったの。


「お願いハルっち、私みたいに病気か仮病で学校休んで、自室にいて!」


 ハルっちの事だから学校を休むなんて絶対にない。

 でも、好きなんだもん。

 そんな危険な場所に行っていないで欲しいって思った。

 私はハルっちの部屋の扉を開けた。

 って、何で鍵閉めてないの、ハルっち!!


 鍵を閉めていないって事は、部屋の中にいるんじゃないかって思ったけど、流石にいなかった。

 ため息を付いて戻ろうとした時に、机の上に置いてあった本が気になったので、ちょっと手にとって見てみると、よく分からない言葉で何かが書いてあった。

 最後の文面に『今後も字数が少なくて書き慣れている日本語で書き足していく』と書かれているけど、どういう意味なんだろう?

 複雑な文字で何がなんだかわからないから、私は本をそっと閉じて机に置いた。


 やっちゃいけないんだろうけど、私はハルっちのベッドに寝て、匂いを嗅いだ。

 あぁ、ハルっちの匂いがする。

 本人がいないのに、こんな事をしている私、相当おかしいよね。


「ハルっち、大好きだよ。だから、無事戻ってきて……」


 戻ってきたら、告白しよう。

 フラれるのはわかっているけど、告白して自分の気持ちに整理を付けよう。

 だから、本当に、本当に、無事でいて!

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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