幕間:背景設定1
この章では、このキャンペーンのために用意された背景設定を解説する。
もちろん、このキャンペーン限定の設定であり、『アルシャード』本来の世界観とはまったく関わりがないことは改めて銘記する。
■ウィッチレルム(キャンペーン用)
大きな島程度のサイズの小さな世界。ブルースフィアに近接しており、世界移動は非常に簡易に行える。
魔法文明が発達しており、小さな作業もウィッチクラフト(魔女魔法)によって処理される。日常の交通手段は箒、および派生飛行機具。食糧の供給なども成長促進の魔法に依存している。
人口は二万人ほどであり、魔女魔法の性質上女性が多い。政治の中枢も主に女性、高位の魔女が担っている。(チームBで描かれるように、魔法使いに男性がいないわけではなく、その場合も便宜上『魔女』と呼ばれる)
なお、ウィッチレルム内は、マナ欠損が起きている場所を除くと濃密なマナで満たされており、簡単な魔法装置で飛行が可能だが、結界を展開することはできない。その基本的なルールは、ミッドガルドの積層都市のゾーンに準拠する。
太陽はなく、常に中天に位置する光球が光を強弱して一日を作っている。光球はマナを供給することで維持されており、マナ不足が慢性化した近年は、日照不足の補填のため妖精球による補助光源が使用されている。
■ウィッチレルムの気候と食生活
スウェーデン、およびウェールズ系の文化圏に近い。
気候が寒冷で海がないため湿度が低く、チーズの製造に適している。チーズの熟成を促進する魔法なども発達しており、製造と消費のサイクルは早い。
主食は日照が弱くても成長する芋類が中心で、特にジャガイモは成長に使用される妖精光によって品種が細分化されている。
魚介類は淡水湖しかないため保存性が悪く、魔法的に保存されているものを除くと、強烈な塩と発酵によって保存されるものが多い。
魔法的に発酵を促進する手段があるため、塩漬けや発酵食品が高度に発達している。一方で日照が極めて弱いために干物などは発達していない。(塩はブルースフィアからの輸入の他、塩湖からの採取が中心)
■レルムシード
ウィッチレルムにマナを供給するための『魔女の領域』を作り出すための種子。クルミの実のような外見をしている。
領域を作り出す中心地点に植え、発芽魔法をかけることで即座に発芽、高さ1mほどまで瞬く間に成長する。
その樹は周辺のマナを吸収し、ウィッチレルムに送り込む役割を果たす。その分量は『魔女の契約』に基づいて抑制されており、マナ欠乏症などが生じる可能性は希少であるし、通常であれば『底が抜ける』などはあり得ない。
ブロッケン樹海に植えられた聖樹の種子であると教えられているが、『侵蝕者』は詳しいことは知らされていない。
■魔女の契約
西暦1700年頃、ブルースフィアの魔術師連盟とウィッチレルムの『ヴァルプルギスの夜』の間で締結された契約、そして魔術師連盟や近代においてはフューネラルコンダクターなどから選ばれた『守護者』と『侵蝕者』の間に結ばれる契約を指す。
『侵蝕者』と『守護者』の間に結ばれる契約の内容は、大きくは以下の通り。
・『侵蝕者』は契約中、『守護者』の監督のもと、レルムシードによる『魔女の領域』を作成し、ブルースフィアのマナを回収することを許可される。
・『侵蝕者』は契約中、『守護者』の指示により、ブルースフィアの魔術的災厄に対して率先して奉仕する義務を負う。
・『侵蝕者』は契約中、『守護者』に『真名』を預ける。
■ブロッケン樹海
ウィッチレルム北部に広がる森林地帯。背の高い針葉樹が群生しており、中心にそびえる聖樹サクラダ・アウローラがウィッチレルム全域にマナを供給している。
聖樹サクラダ・アウローラのマナによって周辺の空は虹色に歪んで輝いている。これを『ブロッケンの虹環』と呼ぶ。
外周部には『侵蝕者』が旅立つ際に植える『魔女の樹』が立ち並ぶ人工林があり、そこより奥地への立ち位置は一般人には認められない。
■ヴァルプルギスの夜(魔女会議)
ウィッチレルムの政治を司る組織。魔女会議とはいうが、女性のみで構成されているわけではない。
『へクセン』と呼ばれる代議士による合議制で運営されており、構成人員は13人。意見の統一が見られなかった場合のために、へクセンには13の位階が与えられており、上位のへクセンによる承認票はより下位のへクセンより一人分多い承認票として数えられる。
ウィッチレルムにおいて高貴な家柄というと、このへクセンを常に送り込んでいる家柄を指す。
■真名
魔女魔法を行使する際に必要となる魔術的制約。真名に基づいて命令をされた場合、魔女はそれに無条件に従わなくてはならない。
これに抗った場合、魔女は魔女魔法の行使能力を失う。
『守護者』への真名の開示は、契約が成立している間のみ有効であり、契約が解除された段階で『守護者』の記憶から自動的に消滅する。
■守護者
『魔女の契約』に基づき、ウィッチレルムの『侵蝕者』を監視・監督する役割を担う。
魔術師連盟やフューネラルコンダクターなどの神秘組織に属する人間が任せられることが多い。
『侵蝕者』がブルースフィアの脅威とならぬよう監視、そしてブルースフィアのために奉仕するよう監督する。
その強制力を担保するため、『守護者』として契約を結んだときに『侵蝕者』の『真名』を伝えられる。
このため、『守護者』は『侵蝕者』に極めて強制力の強い命令権を持つ。
なお、この『真名』は契約の解除とともに自動的に記憶から消滅する。
■魔女の都『ユプサリア』
ウィッチレルムほぼ唯一の都市。人口の半分近くがこの街に集中しており、商業、工業、教育などはほぼすべてこの都市が担っている。
中枢にミラノ風建築のヴァルプルガ聖堂が存在し、『ヴァルプルギスの夜』が執政を行っている。
商業区画『メイフェア・モール』では欧風建築の商店街が広がっており、ウィッチレルムの貨幣取引の大半を担っている。
聖堂付近に魔女教育機関として『ユプサリア・ルキオ(魔女学院)』があり、優秀な魔女はほぼすべてがこのルキオを卒業している。
■ユプサリア・ルキオ(魔女学院)
ウィッチレルムほぼ唯一の総合教育機関。各地の村に分校があり、基本的な魔女魔法と学問などを教育する。
分校はエレメンタリースクールまでで、優秀な生徒はユプサリア・ルキオ本校に転校し、高等教育を受ける。
賢者の石も取り扱っており、このためメイジのみならず、ウィザード、そしておそらくはオラクルなどの魔法使いを輩出する。とくに賢者の石の関係からミッドガルドのアカデミーと何らかの関係があると目されているが、歴史の混乱により詳細は明らかになっていない。
ブルースフィアにおける常識や文化の教育も行われており、時折魔術師連盟から講師が派遣されたり、逆に連盟に魔女を派遣することもある。
本校の総生徒数は千人ほど。
■”魔法少女”鷹取 いずみ
超上級ルールブックP.112掲載の設定に、『ヴァルプルギスの侵略者たち』設定を付加されている。
『ウィッチレルム』から送り込まれた『侵蝕者』。
『侵蝕者』はクエスターになり得る才能を持つ若者をほぼ無差別に送り込んでいるため、このように極端に幼い子供が送り込まれることがある。
とくにいずみは才能が突出しており、将来優秀なクエスターとして覚醒することを期待されている。
本人もそのつもりであり、ちょっと偉そうな態度を取ることも多いが、基本的には友達思いでかわいいものが好きな少女である。
名字はこのキャンペーン用に便宜上付与したもの。『守護者』か、預けられた家の名字であろうと思われる。