序章:ミドルフェイズ (3)初めての戦い
■ミドルフェイズ6 シーンPC:覚醒 登場:全員自動
GM :エネミーの配置は [死霊] 10m [奈落ABC] 5m [巨兵] 5m [洋一、ほとり、覚醒] となる。
オンラインセッション、とくにテキストのみのIRCを用いる場合は、このように一次元管理をする場合が多い。
テキストのみで管理できる上、IRCなどだとチャンネルトピックにこれを表示しておくことで、キャラクターの配置を把握しやすくなる。
なお、もうちょっと複雑な戦闘をしたい場合は「どどんとふ」などのセッション支援ツールを使用すると良いだろう。何事もケースバイケースだ。
GM :死霊は半透明で、浮遊している。奈落ABCはさっきから蹴散らしてる雑魚、巨兵はひときわ大きなマッチョな感じのヤツだ。
行動値は、奈落:6 死霊:10 巨兵:5 だね。
イメージングのために、戦闘前にエネミーがどのような形状なのかを知らせることは価値が高い。
たとえばここで表現したことで、プレイヤーは「死霊は一般属性が効かないかも知れない」「巨兵はタフで攻撃力が高そうだ」と判断できる。
正解ではなくても「判断材料を提示される」ことによるゲームへの没入感は大きい。工夫してみると良いだろう。
■戦闘前宣言
戦闘前宣言とは、戦闘が開始される前に行う行動を指す。
たとえばエレメンタラーの≪異形化≫などはこのタイミングで行うし、ヴィークルの搭乗、≪シールエリア≫などによる結界の展開もここで許可してもよいだろう。
ただ、結界の展開に関しては、「PCが飛行状態になる」という明確なメリットがある。他にもミスティックの≪聖別結界≫など明確にメリットのある結界については、「演出的に結界は展開されているけど、特技の効果は反映されない。特技効果を使いたい場合はメジャーアクションなどで使用してください」と言うのが良いだろう。
覚醒 :戦闘モードには既になっているので問題ないです。
ほとり:時空鞘から抜いたクロスボウを構えて、時空マントから出現したマントを羽織っています。
洋一 :装備は手袋のみ、気づいたら見知らぬシャードつき手袋をはめてます。
GM :OK、では、ラウンド処理を始めよう。
■ラウンド1 セットアッププロセス
GM :セットアッププロセス。エネミーはすべてなしだ。
洋一 :≪剣王の城≫を宣言。「レセプトボックス」付きの「煉獄の炎」を呼びます。「さあ、格好良く行くッスよ! 『ライジングフォース』ッ!!」
GM :屈強な炎の鬼神がズァッと現れる。
ほとり:私はありません。
覚醒 :こちらもなし。「ダークブラッド」はまだ使っても意味のないものなので。
GM :演出だけはきちんと反映しておくよ(笑)
■ラウンド1 イニシアチブプロセス
イニシアチブプロセスは、その時点で未行動のキャラクターのうち、【行動値】が最大のキャラクターを選んでメインプロセスを与えるものだ。
このタイミングで使用するアイテムや特技も多い。キャラクターが行動する前とした後に、必ず1回のイニシアチブタイミングが発生すると覚えておくと良いだろう。
ここでは、メインプロセスを行うキャラクターを、●と行動値、およびキャラクターの名前で表記する。
●11 洋一
洋一 :取り敢えず雑魚をふっとばそう。ムーブアクション:≪念力波動≫ マイナーアクション:斜めに傾ぐ メジャーアクション:「煉獄の炎」で魔法攻撃を奈落ABCに!
GM :なんだその「斜めに傾ぐ」って(笑) どうぞ。
洋一 :魔導値は8。(ころころ)……魔導の18っしょ!
GM :高い! 6ゾロ以外あり得ないじゃないか! (ころころ×3)当然全部失敗、ヒットだ。
洋一 :なお一発のコストは実に13!
覚醒 :「『覚醒め』たてで張り切ってるねー振り切ってるねー!」
洋一 :ダメージロール直前「煉獄の炎」の効果で「シーン一回ダメージ+2D」を入れて、4D+16の<炎>ダメージ。(ころころ)29!
≪UuuuuuuuuuuuuuuuRaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!≫
ライジングフォースが一瞬で奈落の群れの中に飛び込み、咆哮とともに殴り飛ばしていく。
目にもとまらぬ速度で駆け抜けた炎の鬼神が、次々と奈落の眷属を粉砕していく。
研ぎ澄まされた拳はもはや引きちぎるなどの暴虐を必要とせず、一撃で標的を打ち砕くのみ!
(ここまで、熱気が!)
荒れ狂う熱量を頬に感じ、ほとりは思わず袖で顔を庇った。
GM :もちろん無理だ! 奈落ABCは全滅!
洋一 :いよっし、一掃っ! 「は、ハハッ! どうよっ!」傾いだままで指を突きつける。
覚醒 :「ひゅーひゅー! 火葬場並みに熱いねー!」
GM :また縁起の悪いたとえを(笑)
*戦場配置*
[死霊] 15m [巨兵] 5m [洋一、ほとり、覚醒]
●10 覚醒
覚醒 :「サトリちゃん、発棺!」とムーブで5m移動して巨兵とエンゲージ。
GM :発棺ってなんだ発棺って。
覚醒 :(スルーして)マイナーはなし、メジャーで仏陀斬る……もといぶった斬ります。
GM :来い!
覚醒 :てい! (ころころ)……六ゾロくりてぃかる~!!
GM :げ。ど、努力はしよう。
元々巨兵の回避力は2の上、クリティカル相手では同じくクリティカル以外回避はできない。もちろん無理だった。
GM :ヒット、ダメージどうぞ。
覚醒 :クリティカル効果で+2Dして(ころころ)……出目低いなぁ、<斬>24! 「ちぇいりゃー!」
GM :出目は低めだが、一撃がこのレベルとしては重いな! 巨兵を袈裟懸けに切り裂いて、【HP】を半減近くまで追い込んだ。
覚醒 :「むう、残念無念」
●10 死霊
GM :ムーブなし、マイナー:≪BS付与:狼狽≫、メジャー:魔法攻撃 対象は覚醒だ。魔法攻撃命中判定……17! 抗魔でリアクションどうぞ。
覚醒 :ぎゃーす! 「サトリちゃん魔法攻撃には弱いんだよねー!」
GM :奈落の弾丸が死霊の口から迸る。これは標的に命中すると足に絡みついて動きを阻害するぞ!
覚醒 :抗魔判定……(ころころ) 達成値14です。
GM :ヒットだね。では10+2Dの<闇>ダメージ。(ころころ)17点の<闇>ダメージに【狼狽】を付与します。
ほとり:ここは≪マジックシールド≫を撃ちます。
GM :どうぞ。
ほとり:矢をつがえて発射! (ころころ)出目4で、5点だけですが軽減しました。
GM :すると実ダメージは12点になるね。
覚醒 :「うう、何かべとべとする感じが……でも軽減ありがと!」
●7 ほとり
ほとり:ムーブで5m前に出まして、マイナーで新しい弓を装填します。メジャーで≪キュア≫を覚醒に撃ちます。
GM :バッドステータスの回復か。初期作成で5点の追加経験点を消費できるようにした分で取得した奴だね。
ほとり:【狼狽】が回復します。矢が突き刺さったと思った瞬間、光が瞬いて、動きを縛る奈落を浄化します。
GM :うむ、懐かしの魔弾銃演出。
覚醒 :「おお、べとべとが消えた! ありがとーう!」ほとりに手をぶんぶか振ります
●5 巨兵
GM :ムーブなし、マイナーなし、メジャーで覚醒を殴る。命中判定達成値14。回避よろしく。
覚醒 :「よっしゃ来ーい!」と回避……12! 当たった
GM :20+2Dで……<殴>28ダメージです。
覚醒 :<殴>だと7点軽減されるので21点貰います。まだ大丈夫!
GM :お互いを喰らいあって絡みついた奈落の巨兵は、普通の人間ではとても支えきれないような質量を、覚醒に向けて叩きつける!
覚醒 :「アイニクー、サトリちゃんはーただのクエスターとは違うのですーウフフフフ」と、不敵に微笑んで耐えます。
GM :巨兵は小首を傾げて、「何で潰れていない?」という様子を見せている。
■ラウンド1 クリンナッププロセス
GM :さて、クリンナップだな。
クリンナッププロセスは、バッドステータスの処理などを主に行うプロセスだ。
あまり行動することがないので、あらかじめキャラクターに「クリンナップを使用する行動があるかどうか」をリストアップしておくと、省略しやすくなり、時間短縮になる。
特に作成直後の3レベルではほとんどクリンナッププロセスを使用する特技やアイテムはないので、最初に確認したら、あとはさっさと省略してしまって構わないだろう。
クリンナッププロセスが終了すれば、次のラウンドとなる。
■ラウンド2 セットアッププロセス
一同:とくになーし。
GM :では省略して、洋一の行動から!
●11 洋一
洋一 :んー。これは巨兵に集中したほうがよさげ? ムーブ:無し マイナー:指を突きつける メジャー:「煉獄の炎」を。
GM :だから「指を突きつける」って何だよ(笑)
ほとり:「動きを止めている相手を先に!」
洋一 :「あ、はい……ぶ、ぶっ飛ばせ! ライジングフォースッ!!」巨兵に魔法攻撃達成値14!
GM :抗魔値低いんだよなあ……(ころころ)あ、六ゾロで避けた。
洋一 :「嘘ぉっ!?」
GM :どうみても避けられないコースを、躓いてやり過ごした。完全に偶然だが、洋一がまだ力加減に苦労しているとかかな(笑)
覚醒 :「ちょっと力みすぎちゃったかな? あとはサトリちゃんにおまかせ!」
●10 覚醒
覚醒 :メジャーで斬ることしか出来ませんよ!(ころころ)
鈍重な巨兵が、覚醒の華麗なステップをいなせるわけもない。
GM :避けられない。ヒット。
覚醒 :よし、ダメージ。「すぱっとやっちゃうよー!」(ころころ)ぶ、全部6!
GM :おう(笑)
覚醒 :<斬>30ダメージ! 何でクリティカルした時よりダメージが回るのか!
GM :それはどうにもならないな。真っ向から巨兵は二つに両断される!
*戦場配置*
[死霊] 15m [覚醒] 5m [洋一、ほとり]
●10 死霊
GM :えーと、ここに至ると対象はランダムで決めるか。(ころころ) じゃ、対象はほとり。
死霊はマイナーで≪BS付与:狼狽≫ メジャーで魔法攻撃。ちなみに射程は20m。魔法攻撃なので魔導判定(ころころ)……18魔導。
ほとり:(ころころ)そっちの出目がよすぎて無理ですね。
GM :<闇>16ダメージに【狼狽】。足に絡みつく奈落の弾丸だ。
覚醒 :出目だけは何ともしがたいところで。
GM :普通ならむしろほとりの方が分があるんだけどねえ。しょうがない。
ほとり:そして私自身はまったく【狼狽】が気にならないので気にしません(笑)
●7 ほとり
ほとり:そのまま攻撃用の矢をつがえます。マイナー≪剣魔連撃≫メジャーで魔法攻撃を撃ちます。
GM :どうぞ。
判定結果は、らくらくヒット。ほとりの放った矢が死霊に突き立ち、雷鳴を放つ。
ほとり:ただの矢が突き刺さった思った次の瞬間、そこから雷鳴が響きます――20点<雷>!
GM :【HP】は18だ。そして<雷>への防御修正は0! 雷は神が鳴ると書き、邪を払うものとされる。まさにその様相で、死霊は千々に引き裂かれ、消滅した。
ほとり:「……教わったとおりに出来ました」
そんなわけで、エネミー全滅!
おおむね鎧袖一触で蹴散らされたが、これはあらかじめPCの性能を分析し、それぞれが活躍できるようにエネミーを配置した結果でもある。
キャンペーン最初のミドル戦ということで、それぞれのPCの性能と、それぞれの役割を分析することを目的としていたのであって、GMのエネミーが弱かったからってだけじゃないんだよ? ほんとだよ?
……本当だってば。くそー。
■戦闘終了
GM :では、周囲の奈落を蹴散らしたことで、校内に抜けるルートが切り拓かれる。
覚醒 :「ひゅー。二人ともやるなあ!」
洋一 :「ぜっ、ぜっ……あ、あっちの方、逃げれるっしょっ!」
ほとり:「突破、お願いします。私は支援を続けますから」
覚醒 :「よーし! とりあえず中に逃げ込めー!」
ほとり:「天野くんの力は、本人が動きながらでは、広く使えないようです。移動は急ぎましょう」
弓を虚空に収めるほとりが、息を切らした洋一を急かす。額に浮かんだ汗を拭った洋一は、二、三歩と足を踏み出したところで、ふと気になって背後に視線を巡らせた。
振り返る肩の向こうでは、ほとりが植えた『魔女の樹』……今や『奈落の樹』と呼んで差し支えのない代物となったそれが、びきびきと成長を続けている。
その太く伸びた枝の先に、ライムグリーンの誰かがちょん、と腰掛けた。
洋一 :「ち、ちゃんと逃げるっすよ? ……へっ?」
GM :大鎌を手にしたライムグリーンの髪の少女。珠来しおのが、クスクスと笑いながらキミ達を見送る。
ちなみに足をぱたぱたさせていますが、スカートの中は見えない。魔女魔法≪絶対領域≫による認識阻害効果だ。
洋一 :「またアニメ色!?」
ほとり:(ウィッチレルムの髪質……?)
覚醒 :「しおの……やっぱりか! やっぱりなのか! ちくせう!」と叫びつつ「彼女は今は気にしないで! とにかく校内に!」
GM :とりあえず今は脱出のチャンスなので、後ろ髪引かれながら脱出してくれれば(笑)
洋一 :「わ、分かったっしょっ!」
GM :では、覚醒が退場したらシーンエンドです。
覚醒 :「ツギこそ! ツギこそ話を聞くんだからね~~~!」と負け犬めいたフレーズを叫び、退場しましょう。
■ミドルフェイズ7 マスターシーン
GM :では、次のシーン……に移行する前に、マスターシーンを挿入しよう。
マスターシーンとは、基本的にはPCが登場しない、NPCを演出するためのシーンである。物語の整理をしたり、意味ありげな伏線を敷くなど、様々な用途が考えられるものだ。
だが、ここでの挿入は、実のところ「舞台裏による【HP】【MP】の回復」をさせることに目的を置いていたりする。
他にも舞台裏でしかできない購入判定など、挿入することによるPCへのメリットは大きい。戦闘後などの一服置きたいときなどに、意識的に配置していくとよいだろう。
――『魔女の樹』の上。逃げ出していく三人……新たなクエスターと、かつての『守護者』たちを見送って。
歪な枝に腰掛けた、珠来しおのを名乗った少女は、クスクスと笑った。
「……準備は整った、ね」
自らの胸に手を触れ、瞑目し、何かに語りかけるように呟く。
「……わかってる。操縦は難しいけど、うまくやるよ」
「そのために、あの子もあの子も巻き込んだんだから。きっと、うまくいく」
「うん、すべては、サクラダ・アウローラを奈落に墜とす、そのために」
「そして……」
*舞台裏*
GM :マスターシーンに合わせて、【HP】【MP】などの舞台裏回復を行っても良い。買い物も、あらかじめ用意していた、あるいは謎のプレゼントが見つかったということで行って構わないよ。
覚醒 :【HP】を回復しておきたいデスね……(結構喰らってる)
洋一 :【MP】、【MP】が欲しい(燃費が悪い)
ほとり:私は【MP】4点しか減ってなくて【MP】が事実上無限に近いんで、≪高等遊民≫で欲しいものがあったら買うの代行しますよ。
覚醒 :ここで唐突に大江懐石とか買ってもいいんでしょうかね……(笑)
GM :別にいいよ(笑) あれかな。魔法のテーブルクロスから料理を出す的な。
そんな感じで舞台裏処理が行われる。事前に≪ヒール≫で【HP】を回復した上で、ほとりがMPポーションを調達。覚醒は食事アイテムの「大江懐石」の調達を試みたが、失敗した。
洋一は1Dの【MP】を回復。この回復が、地味に後で利いてくることになる。
■ミドルフェイズ8 シーンPC:覚醒 同行者:洋一・ほとり
GM :技術準備室に逃げ込んで、善後策を練るシーンです。状況確認と意思決定を目的としています。なお、今回は情報収集項目などはありません。
覚醒 :エェーイ
洋一 :イェーイ
ほとり:はい。
GM :奈落の群れから逃げ出して、技術準備室に逃げ込んだ覚醒たちは、扉に簡単な魔術処理を施して時間を稼いだ。これで一息つく時間が得られたはずだ。
洋一 :「ッゼヒュー、ゼヒュー……」突っ伏して、呼吸を整えてる。
GM :マスターシーンが挿入されるくらいには悠長であるということは感じてもいい(笑)
覚醒 :追っ手の出足が鈍いということ……?
ほとり:そういう事は駆け出しの私では、不安になる程度で、まだわかりませんね……。
GM :そのへんの戦術の機微は、覚醒が気づくのが自然だろうね。それを指摘するかどうかはともかく。
覚醒 :「うーん、目的がちょっと読めないところだけど、ここは乗っからせてもらうしかないかなー……」
洋一 :「も、もくて……ッヒュー、ケホッ、オエッ……な、何なんすかそもそもこの状況……」多分、戦闘中立ってた前髪が、ぺたっとしおれてる感じでヘタッてます。
覚醒 :「ん。とりあえず、時間は少し出来たみたいだからねー。少し休みつつ、新人さんに説明しておかないとね」と二人を見る。
ほとり:「あなたは、『ブルースフィア』のクエスター、なのですか?」と胸元に手をやって、向き直って問います。
覚醒 :「そーそー葬送。クエスターさんですよー」とネックレスの髑髏(シャード)を見せます。
洋一 :「く、くえすたー? 『ブルースフィア』? え、なにそれ、ナンカのゲーム系? いやでも撮影のはずねえっしょこれ……」(おろおろ)
覚醒 :ほとりと洋一がクエスターであることはわかってもいいんですよね?
GM :うん、そのあたりはなんとなくわかる、としよう。
クエスターはシャードを共鳴させて対話する能力がある。これをちょっと拡大解釈し、相手がクエスターかどうかをクエスターは感じ取ることができる、という処理をすることが多い。
シャードを見せ合うなどのやりとりをしてもいいが、心臓や目玉がシャードなどというキャラクターもそう珍しくないので、こうするのが面倒がないのだ。
覚醒 :了解、じゃあ「そして、今は二人とも、だねー」とちょっと優しげな顔をします。
GM :覚醒には、ほとりが「『ウィッチレルム』の魔女である」と察することができてもいい。髪の色のノリと、魔術の系統が同じだからね。
覚醒 :「はいはい新人さんには一から説明しますよー」と洋一には『はじめてのくえすたー』と書いてある冊子を取り出してですね。
洋一 :『はじめてのくえすたー』!?
GM :どこから取り出した、何故持ってる、誰が書いた(笑)
覚醒 :突発的にクエスターに覚醒した一般人がいた場合のためのマニュアルみたいなものがきっとあるはず! 補足説明は後々組織の偉い人からあるでしょうけれども(笑)
GM :了解。ではそれをぱらぱらめくったら基本設定のおおまかなところは伝わるものとしよう(笑)
洋一 :「これマジ?」うわぁ、って顔します。ゲームか(笑)
覚醒 :洋一には「信じられないかもだけど、全部マジだからねー……分かりにくいことがあったら個別に説明するから聞いてね†」……と言う感じで本を読んでもらってる間に、ほとりに事情を聴きたい、ということで。
ほとり:これは聞かれることによってどこまで答えるか、変わるところですね。
GM :主に、どうしてあの場所にいた、というところかな?
覚醒 :ですね、『魔女の樹』のことも覚えていればこれが『ウィッチレルム』関係であることは分かりますし。
GM :ああ、覚醒は『守護者』にかかわる知識、つまり『魔女の樹』についてと『侵蝕者』の役割については記憶している。消えているのは、しおのの真名と、彼女にまつわるいくつかの記憶だけだね。
覚醒 :なるほど、じゃあ……「あなたはどこの子? どうしてあんな場所に?」とほとりに聞いてみます。
ほとり:「私は、『ウィッチレルム』という世界の住人です。今、見ず知らずの方に説明出来るとしたら……そうですね」と、少し考えこんで「私の世界でも、奈落は敵である。と言う事だけは、確実に」
覚醒 :「うん、サトリちゃんは『ウィッチレルム』の人と知り合いだったからね。アレについてもちょっとは知ってるけど……この状況については、何か分かる?」と、樹が奈落に侵蝕されていることについてちょっと聞いてみます。
ほとり:それを言われるとはっきりと青ざめた顔になって「私は『魔女の樹』を指示の通り植えただけです。どうしてこんな事になっているのか、なにもわかりません」とだけ答えます。
GM :ほとりの常識からすれば、『魔女の樹』が奈落に汚染されるなどということは考えられない。『魔女の樹』はマナを『ウィッチレルム』に送り込むためのもので、本来なら奈落が入り込む余地などないはずだね。
そしてほとりの常識から付け加えるならば、もし『魔女の樹』が奈落に取り憑かれたとすると、そのマナの流れに乗って、奈落が『ウィッチレルム』を侵蝕する可能性すら考えられる。
覚醒 :「……うーん、そっか。気になることは色々あるけど、ここで追及しても仕方ないからね。詳しいことは、この状況を何とかしてから、かな」とにっかり笑顔を見せておきます
洋一 :そこらで会話に入ろう。「あ、あー……だいたい斜め読みしたけどナニ? これマズイ系?」
GM :洋一には、解説書を斜め読みする以上に、手首のブレスレット……つまりはシャードからの意思が伝わってくるだろう。「このまま放っておいてはいけない」と。レジェンドの≪運命の予感≫の片鱗のようなものだね。
ほとり:シャードが渡す意志、つまりはクエストの亜種とも取れますね。
GM :そうだね。そんな感じ。
覚醒 :洋一を見やって「状況については見ての通り。そしてやるべきことはサトリちゃんよりも、そのブレスレットに聞いた方がいいかもね」とこちらにも笑顔で。
ほとり:「素直に言って、そちらの方がいいと思います。私を追及しても、わかることは、あの奈落を早くどうにかしないといけない事程度なんです……その、つまり」というところでばつの悪い顔になり「……私にもどうしてこうなったのか、わからないんです」
覚醒 :「あんまり自分を追い詰めちゃよくないよー。『ていくいっといーじー』ってやつで!」とほとりに。
洋一 :「んー……あー……んじゃその、やるっきゃない系の流れ? やっぱこれ」ブレスレットに触れつつ
覚醒 :「やりたくないなら逃げてもいいよ。サトリちゃんはそれを非難しないし、巻き込まないために全力を尽くすよ?」とは言っておきます。スタンス的に。
洋一は、助けを求めるように視線を巡らせる。
そこには、視線を廊下に……そこにひしめいているであろう奈落の眷属の群れに向けているほとりの姿があった。
「……海も、奈落に汚されたり、するんでしょうか?」
惜しむように、怯えるように、聞こえるかどうかくらいの小さな声で、独りごちる。
顔は見えない。だが、結界で不安な色に歪められた室内灯に照らされて、窓硝子が少女の顔を映し出す。
(う、ぁー……)
そこに一瞬、昼間に見た、海を見て笑顔を浮かべていた彼女が二重写しに見えて。
どきり、と洋一の心臓が一つ跳ねた。
「―――お、オレに任せとくっしょ!」
その勢いで、そんな言葉が飛び出していた。
覚醒 :何も言わずに二人ににっこりと微笑みを向けています。
洋一 :「イヤもうまじうん、困ってる奴とか見捨てられない系? だしナンカその、うん……お、女の子は笑ってるほうが可愛いからね!」
ほとり:「……」何秒か呆然としてしまいます。
冷静に考えれば、ズブの素人であろう洋一が、この事態をどうにかできるわけがない。
表情を見れば、勢い余って口走ってしまったのは想像に難くない。笑顔を取り繕っているが、その端々がぴくぴく引きつっていれば、折角の虚勢も台無しだ。
だが、それでもわかることはある。彼は奈落の底に墜ちるほとりの手を掴んだのだ。
「だからこう……うん。ナラク? だっけ? バケモノぐらいぶっ飛ばしてサクッと解決っすよ! なあ!」
そんな根拠のない虚勢であろうとも、それを実行できるまっすぐさを持っている――。
ほとり:そんな様子を見ていて少しおかしくなって「そうですね。困ってる時には、助け合い……ですね?」
少し、気持ちが軽くなった。
ほとり:「だから私も、やってみます」
覚醒 :「……ナルホド、これが青春ってやつかー†」
大人びた顔に演技と意地悪さをブレンドして、覚醒がにやにやと笑った。
そんな三人の意思を感じてのことだろうか。洋一のブレスレットのシャードが、きらりと意思の煌めきを示した。
覚醒 :「よーし! それじゃあとにかくあの樹を何とかしよう! 細かいことは後で考える!」とモチベーション固め!
洋一 :「……でも、あの木、どうすりゃいいんすかね?」
GM :では、そこでイベントを差しこもう。洋一のブレスレットから、光が溢れた。
洋一 :お?
「うひょおわぁっ!?」
腕輪から溢れる光に、洋一がまたも間抜けな悲鳴を上げた。
宝珠から、花が咲くように光が溢れた。桜にも似た光の花びらは、何かの出現を祝うように、くるくると渦を巻いて舞い上がる。
それは、光の三角形だった。莫大なマナの塊が、形を成したもの。虹色にきらめくそれは、洋一の腕輪から浮かび上がり、鏡のような表面が、唖然として見上げる三人の顔を映す。
それはまるで、聖女の祈りのように暖かく、優しく、力強い。
『あなたの望むままに。世に優しさと平穏のあらんことを』
シャードを通じて響いた、そんな声を合図にしたかのように、三角形が飛び散った。
一角は、ほとりの掌に。一角は、覚醒の胸元に。そして残りの一角は、洋一の腕輪の中に吸い込まれる。
それらは、それぞれの身体の奥底まで染み渡り、そして一つの『指針(クエスト)』を浮かび上がらせた。
GM :――シャードが、大きな力とともに第二のシナリオクエストを発行する。【奈落の樹を打ち倒す】だ。
洋一 :「な、何だってんだか分かんねえけど判る! 力だ! なんかすげー力が入ってきたみてぇ―な!?」
覚醒 :「今の声は……?」聞き覚えがあったりはしませんかね……?
GM :覚醒には聞き覚えはないですね。洋一とほとりは、さっき覚醒するときに囁きかけてきた声と同じだとわかる。
洋一 :うっす。「と言うか今の声、さっき落っこちた時に……」
ほとり:「……これが、シャードのクエスト?」と驚いた顔を隠せず、そのまま受け取ります。
GM :ともあれ、飛び込んだ力はキミ達に規格外の力を与える。具体的には、キミ達の意思を具現化するための、追加の≪シャードの加護≫だ。
それぞれ一つ、追加の加護を選択してくれ。
追加する加護の選択肢については、上級ルールブック記載の『サクセション時の追加加護』のルールに準拠している。簡単に言えば≪ガイア≫と≪DEM≫が禁止ということだ。
このパーティは三人構成で、バランスの都合上、加護の柔軟性が損なわれやすい。プレイヤーが熟練者ということもあり、このキャンペーンでは第二のシナリオクエスト……クライマックスクエスト発行のタイミングで、追加加護を一つずつ与えるように定めている。
これにより、洋一が瞬発力のための≪トール≫、ほとりが柔軟性のために≪ブラギ≫、覚醒が鼓舞のための≪ミューズ≫を取得した。
GM :と、いうわけで、クエストも発行されたし、キミ達の意思についても概ねまとまったところで……ドンッ!! と扉が激しく叩かれる!!
洋一 :「うぉっ!?」
覚醒 :「んーちょっとゆっくりし過ぎたかなー?」と笑顔のままで。
GM :ドンッ!! ドンッ!! 扉が何度も、強い力で叩かれる。その向こうにひしめく、先ほど戦った奈落の怪物たちの影が見え隠れしている。
このまま放っておくと、扉が破られ、奈落の怪物達が雪崩れ込んでくるだろう。
洋一 :「や、やっべえ!こういう時は……」一番経験豊富っぽい覚醒さんに目線を送る。
ほとり:「どうしますか、その……先輩」
覚醒 :「サトリちゃんでいいよー† こういうときは……」と≪シールエリア≫を使って結界を張ります。
*舞台裏*
ほとり:自分の名乗りに似てるので、「さとりさん」とか「さとりちゃん」とか言いづらくて困っているのです……(笑)
覚醒 :ああ、確かに……(笑)。
GM :じゃ、当面『先輩』みたいな感じで。
GM :結界の効果だ。濃密なマナがシャードから放射され、身体が浮き上がる。
洋一 :「う、うぉっ!?」
覚醒 :窓を開け放って「結界の中では飛べるって、さっきのマニュアルにも書いてあったよね! これで一気にあの樹まで飛ぶよー!」
ほとり:魔女魔法≪絶対領域≫を使っておきます。
GM :では、先にほとりが飛び立ち、スカートがひらめくけど、洋一にはその中が見えない……(笑)
洋一 :「見えない……じゃない! わ、判らねえけど、うわっ!?」背後で扉が吹っ飛んだのを見て慌てて「に、逃げるんだよぉ~っ!?」こっちも窓からダーイブ!
覚醒 :そういえば着替え宣言してないからステージ衣装のままだ!(笑)
GM :アイドルは見られても困らないの着てるだろう、多分(笑) さて、そんな締まらない飛翔とともに、シーンエンドだ!
なお、認識欺瞞魔法である≪絶対領域≫にはデータ的な保証はない。
――”今は”ね。