第三章:ミドルフェイズ (1)失われたもの、取り戻すべきもの
■ミドルフェイズ 1 シーンPC:洋一 登場:希望すれば自動成功
ここからのシーンは、その目的を意識的に明示するようにしている。
このシナリオは、大きな世界のうねりの中にありながら、主に洋一、ほとり、覚醒の物語をひとまず決着させることを目的としているためだ。
物語の筋は可能な限りわかりやすく、自分のロールをやりやすいようにという誘導を目指している。
それがうまくいっているかどうかは、読者諸兄の判断にお任せしたい。
GM :七瀬市に戻ってきた洋一が、覚醒と合流することを想定している。ほとりはこのシーンはまだ様子を見た方がいいかな。
ほとり:まともになにか出来る状態でいないと思いますので、そうなると思います。
GM :OK。ではまずは洋一の状況からだ。
洋一は途方に暮れていた。
”連絡を取るんだ”と決意はしたものの、それをする手段が、思いのほか少ない。
携帯電話は伯父の太陽が取り戻していてくれたが、その回線が監視されていることは想像に難くはない。一応試すだけ試してはみたが、ほとり、覚醒ともに電源が切られており、通話どころかメッセージを届けることすらままならない。
何かあったのだ。ほとりが連絡が付かないのはわからなくもないが、覚醒にも何か問題が起きている。それだけは察することができたが、そうなると打つ手がまるでなくなるのが洋一の現状である。
「くそ、せめてシャードがありゃ……」
洋一は歯噛みする。シャードの共振は、通じるかどうかが不安定ではあるものの、うまくいけば距離や言語すら無視して意思を疎通できるものだ。一縷の望みをかけて消えた腕輪の辺りに念を込めてみたものの、もちろん何の反応も得られない。
そんな時だ。
洋一の視界の隅を、桜色の影が過ぎった。
GM :……桜色の影が、洋一につきまとっている。
洋一 :へ、影?
GM :ちらちらと、街角、物陰、あちこちで桜色の髪が踊る。洋一をどこかに誘っている。あの色は、サクラダ・アウローラ……シャドウ・アウラとでも呼ぼうか……のそれに他ならない。
洋一 :シャドウの方……シャドウガイアじゃないなら追いかけるか。
GM :では、わかりやすくいこうか。その誘導する先に、覚醒がいる、という流れになる。覚醒はどんなところに身を隠してる?
覚醒 :腕さえ隠せれば、街中の方がむしろ安全と思うかもしれませんねえ。相手も一般人を巻き込むのは避けたいでしょうし。
GM :じゃあ、人通りのそれなりにある川辺のオープンカフェとか? 上着を調達して腕を隠して。
覚醒 :ああ、いいですね。何かあったら川に飛び込むことも想定しつつ。
洋一 :じゃあ、それで合流するっしょ。「怪しい、怪しいけど……今は、何にでも食いつかなきゃだめっしょ多分……奈落の方じゃありませんようにっ!」て事で。
洋一は、桜色の影を追っていく。それは洋一が付いて来ているのを確かめつつ、ちらちらとその姿を閃かせている。
そして、建物の隙間を抜けると、視界が急に開けた。初夏の蝉の声と、人々の喧噪。そして川の水音が入り交じる中、さやさやと植樹の梢が光を揺らしている。
その一画、小洒落たオープンカフェの外れのテーブルに、洋一が探し求めた人の姿があった。
GM :そんなわけで、洋一は腰掛ける覚醒の姿を見つけた。それなりに騒がしいカフェだが、覚醒の周囲は不思議と音が遠い。
覚醒 :「…………」優雅に左手でコーヒーを飲んでるように見えるものの、瞑目していて表情はない。
洋一 :「こっち、に……いた―ッ!?」(大声で指差すバカ)
GM :ぎょっとして、周囲の人々が視線を向ける!
洋一 :「…………」呼吸を止めて一秒「あ、す、すんませんっしょお騒がせして」(へこへこ)
GM :あなたヘラっとした顔をしたから、そこから何も聞かなくなるの。
覚醒 :星屑ロンリネス! 冗談はさておいて……「もう、いきなり何ですか」くくっと笑ってよっちーのところまで歩いていきます。代金はテーブルに置いて。こういう時はかえって堂々としている方がバレにくいという判断。顔はサングラスか何かして隠してますが。
洋一 :「あ、いや、その……な、なんかエラい事になってるっぽくて」小声でごにょごにょ。
覚醒 :よっちーの状態は見て分かりますかね?
GM :わかるね。これまで太陽まがいにばんばん放射してたマナが、すっかりヘボくなっているし。一方で、覚醒の方の言動や振る舞いから、洋一もただごとではないと感じ取れるんじゃないかな?
覚醒 :「まあ、あんまり楽しい状況ではないのは確かかな? ふぅむ……そっちも、色々あったみたいで」ちょっと困ったように微笑んで。
洋一 :「え、あれ……サトリちゃんもなんか、え、ヤバイ感じ?」(冷や汗)
覚醒 :「まあ、顔バレ厳禁なのは割といつものことですし。とりあえず、情報交換と行っとこうか?」
二人はテーブルに戻り、小声で情報を交換する。
洋一は、シャードが失われ、伯父が『異端十字軍』の総大将であったこと。覚醒はフューネラルコンダクターが彼女の捕縛に動き、抵抗した結果右腕を失い、現在も追われていることを伝えた。
GM :カフェに腰掛けて小声で相談していたところ、店のマスターが無言でアイスカフェラテを二つ持ってくる。忘れがちだが、時系列は初夏だ(笑)
覚醒 :この対応、マスターとは顔見知りだったのでしょうね(笑) 左手で「どうも」のポーズしていただきます。
洋一 :「……そういやほとりちゃんとも飲んだなあ。もう四ヶ月くらい前のきがするっしょ」レプラカーンを追っかけてた時のことを思い出しつつ、カフェラテを一口。
色々あって、第一話のセッションからここまで四ヶ月近くが経過していたのである。
覚醒 :「ほとりんどうしてるかなー。向こうの状況も知りたいし……中東とかに送られてないといいけど」
GM :そうだね。とりあえず今の世界の状況について、情報収集判定をしてもよい。
●『異端十字軍』構成組織の状況
目標値:12 分類:情報収集(分析)
使用能力値:理知・知覚 情報:企業、噂 コネ有効(判定に+2)
覚醒 :早速知覚で振ってみます(ころころ)……6ゾロ! すごくわかった!
GM :OK、では現状だ。ちょっと長いぞ。
●『異端十字軍』構成組織の状況
フューネラルコンダクターは、過去の経緯もあり『ウィッチレルム』に対して最も苛烈な立場を取る組織である。
暗黒時代末期、魔女狩りの時代の到来の際、率先して魔女の狩り出しを行っていたのはフューネラルコンダクターの原形となったいくつかの宗教組織であり、その方針は現在でも大きくは変わっていない。
七瀬市の戦闘部隊はブラックロータス卿を指揮官とし、積極的に『ブルースフィア』に侵蝕している侵蝕者=魔女の捕縛を行っている。
魔術師連盟は、『ウィッチレルム』との繋がりが古くから強い。その一方でマナの秘匿に関して最も敏感な組織でもあり、内部的には強硬派と穏健派で二分されている。
現在は大魔術師マーリンが沈黙し、ブライアン・ゴールディは静観、マーリンの弟子である天城太陽が『異端十字軍』の総指揮官を任じられていることで、両者のバランスが取られている。
星龍財団は大陸内の結節点に対して積極的に攻撃を行う体勢を整えているが、ナインライヴズが『ウィッチレルム』を積極的に受け入れようとしている状況で、牽制が続いている。
マイケル・ラオによる挑発が続いているが、大老が沈黙しているために目だった軍事行動は取られていない。
タナトスは中東方面で結節点に対する猛攻を加えており、『ウィッチレルム』の防衛力の大半はこちらに注がれている。タナトスの目的は『ウィッチレルム』の保有する魔獣、幻獣と魔女魔法の知識であり、これを奈落堕ちの前に奪取しようとしている。
時間管理局は、この状況に表だっての行動は取っていない。
ハンター協会およびサジッタ社はフューネラルコンダクターと連携し、≪アヴァロン≫突破のための手段を模索している。
アイギスもこれらよりレリクスの提供を要請されているが、現状ではレリクスが関わらず、人間対人間の戦いとなっているため、様子見の姿勢を崩していない。
フォーチュンサービスホールディングスは、主に侵蝕者、もしくはただの移住者として『ブルースフィア』在住であった『ウィッチレルム』出身者を保護もしくは捕縛し、戦闘状態の抑止に努めている。
GM :こんな感じだ。覚醒は逃亡の途中でそのような情報を得ている。
覚醒 :ここまで成功だとよっちゃんマネージャーの集めていた情報の可能性!
GM :そうだね。四谷が四方に手を尽くして集めていたもの、という感じでよければ。
ほとり:それにしても、ここで魔術師マーリンの名前が出てくるのですか?
GM :まあね。太陽の直接の師匠だということがひとつ。もうひとつ理由があるけど、それはおいおいに。
マーリンは、アーサー王伝説に語られる伝説の魔術師だ。
アルシャードにおいては、先版『ガイア』の頃は主なNPCパーソナリティとして活躍したが、『セイヴァー』においては魔術師連盟の重鎮として、存在が仄めかされるのみに留められている。
GM :ともあれ要は、タナトスは論外として、フューネラルコンダクターが極端なタカ、魔術師連盟が立ち往生に近い状態、ハンター協会はフューネラルコンダクターに近く、その他は割と様子見とか静観が多い、ということがわかるね。
洋一 :「本当に……世界同士の、戦争」
覚醒 :「世界の裏側で人知れず行われている、ね……出来れば、本格化する前に収めたいのだけれど」
洋一 :「収めるって……‥言うか、このままだとマジで『ウィッチレルム』がなくなっちまうっしょ?」
覚醒 :「ま、サトリちゃんはそれをさせないために動こうとしているわけでー」ずいっとカップの中身を飲み干して。「それで、よっちーはどうするの?」
洋一 :「判んねえ、っしょ……判んなく、なっちまって、でも、このままは……いや、だ」手のひらをじっと見る。
GM :では、その掌、厳密にはシャードがあったあたりの手首に『ずきり』と痛みが走る。視界の隅にちらつく桜色。
洋一 :「っ!?」とっさに振り向く!
GM :振り向いた先では、前髪で目を隠した見覚えのある桜色の髪の少女が、君達を見ている。
覚醒 :サトリちゃんにも見える?
GM :見える。二人の前に、サクラダ・アウローラのアバターがいる。それは、君達に向けてにやぁりと三日月のような笑いを浮かべたかと思うと、きびすを返して川下の方へと駆けだしていく。君達はついていってもいいし、無視してもいい。
覚醒 :「……さて。罠っぽくも見えるけど?」言いつつ、サトリちゃんは追いかける姿勢。
洋一 :「う、あー……行く、っしょ。オレも。何も出来ねえってか足手まといっぽいけど!」
覚醒 :「りょーかい。片腕だと厳しいかもけど、全力は尽くすよ」
洋一 :「……うん。その、助けてくれ、っしょ」
覚醒 :「うんうん、笑顔笑顔、笑顔大事だよ」
弱々しいながらも、信頼の笑顔。傷つきながらも、力強い笑顔。
それらを交わして、二人は走り出す。
洋一の胸で、黄金のメダルがきらりと煌めいていた。
■ミドルフェイズ 2 シーンPC:ほとり 登場:不可
世界に色と重力が戻ってくると、目の前には鉛色の海があった。
「……公園」
周囲を見渡すと、そこがいつも転移に使っていた海浜公園の広場だとわかる。
ほとりの足下には転移の魔法陣が浮かび上がっているが、それは瞬時に火花を散らし、ルーンの欠片となって消えてしまった。
そして視界に残るのは、鈍色の水面。思い起こすのは、青空を映してきらきらと輝いていた海原の姿。
今は失われてしまった、いつの間にか手元からこぼれ落ちてしまった、ほとりにとっての輝きのモチーフ。
(……いけない。今はここは安心していい場所じゃなかった)
思い出に耽溺しかけた意識を、目元を絞って引き締める。そう、魔女にとってここは敵地に他ならない。
(家には帰れないでしょうし……学校? 学校に行っても、誰かを――二階堂さんみたく、巻き込んでしまう)
もう、誰かを巻き込むことはできない。求めてはいけない。求められてはいけない。
(……戦える場所に、移動しなくちゃ)
辿るべき道のわからないまま、ただ抗う意思だけで両足を奮い立たせ、ほとりは顔を上げた。
GM :そんなわけで、『ブルースフィア』に転移したほとりのシーンだ。
このシーンは、シャドウ・アウラがほとりに接触して、この先の行動の指針を与えてくるまでを想定している。
場所はいつもの海浜公園。周囲にはまばらに人影があるが、認識阻害の魔法が正しく機能している。人々はほとりが突如出現したことに気づいてもいない。
ほとり:(よかった。まだ、ちゃんと魔女魔法は使えるんだ)と変な事に安心してしまいます。
GM :少なくとも、魔女魔法の行使は禁じられていない。まあ≪真名の枷≫をはじめとする強力な制約魔法をかけられない限り、そうそう魔法の行使そのものは封じられないけどね。
さて、それはさておき。『ブルースフィア』に転移してみると、ほとりには空気がどことなく張り詰めているのがわかる。
空気感の違いは、やはり町中で秘密裏にとはいえ軍事行動が行われていることが第一だろう。そして理由のもう一つ。ほとりの魔法感覚が、この場に≪番犬≫とでも言うべき、魔法的な警報装置が仕掛けられていることを告げている。
おそらくは『ブルースフィア』の魔法使い……つまりは『異端十字軍』が仕掛けたものであろうと思われる。
ほとり:そういう魔法はこの世界であれば、メイジであればお手の物ですね。でも、警報装置なのに、私に反応していないんですか?
GM :ああ、あるのは間違いない。だが、何故か機能が停止している。
そしてそれを誰が止めたのか? ということについては、気がつくと目の前に、目元を前髪で隠した桜色の少女が立っている。
――いかにも”私がやりました”という笑顔で。
「誰かを巻き込むから、誰にも頼れない……とか考えてるだろ?」と、いかにも見透かしたように言う。
ほとり:「何のつもりですか、シャドウガイア」
GM :その通り。にやぁり、と三日月のような笑みを浮かべるのは、サクラダ・アウローラ……そのアバター。そして、シャドウガイアに汚染された、シャドウ・アウラとでも呼ぶべき存在だ。一応シャドウガイア本体ではないので、ここからはシャドウ・アウラで呼称を統一しよう。
シャドウ・アウラ「そりゃもう、テメェに用があるからさ。しっかしさすがはヴァネッサ・エインセル、やることがいちいち派手なんだよな。≪アヴァロン≫に穴が空けば、七瀬市のタカ派はそこを狙って殺到してくる。その隙に、お前さん一人を抜け出させたってわけだ」
ほとり:「≪アヴァロン≫に穴?」数秒、考えてその意味を悟る。「いけない――! なんてこと!」
シャドウ・アウラの言うことが正しければ、現在『ウィッチレルム』は≪アヴァロン≫に開いた穴を閉じるべく、そして『異端十字軍』はこれをこじ開けるべく戦闘を繰り広げているはずだ。
慌ててとって返そうとするほとりを、シャドウ・アウラは嫌らしい笑みとともに引き留める。
GM :シャドウ・アウラ「待てよ、ストランド・カニングフォーク。……もう追放されたから海辺ほとりの方がいいのか? 折角の叔母さんの厚意を無碍にするのは、人としてお勧めできねぇなあ」
ほとり:「じゃあ、黙って見てろと言うんですか! この私に……」
GM :シャドウ・アウラ「ああそうさ。テメェにはテメェにしかやれないことがある。そう思ったから、ヴァネッサ・エインセルもテメェを放り出したんだろう? それとも今から一人で≪アヴァロン≫に突っ込んで、結界を包囲してる十字軍に捕まえて貰うか?」
ほとり:「私にしかやれないこと」――いずみさんがクエスターになって、そんなことはなくなったはず。と、狼狽する。
GM :シャドウ・アウラ「オレには見えている。テメェらが何を考えて、どう動いてるのか。≪ラプラス・デモン≫はそもそもオレの力だ。だから、テメェがここに出てくるのを予期したからこそ、予め番犬を潰しておいてやったんだ。有り難く思いな?
そして、テメェは自分を過小評価し過ぎてる。テメェは、サクラダ・アウローラのシャードの継承者だ。だからこそ、テメェにしかできないことがあるんだよ」
ほとり:「サクラダ・アウローラ」
GM :シャドウ・アウラ「……ジュライ・シオノを助けたくねぇか?」
ほとり:「ジュライさんを……?」
シャドウ・アウラは語る。ジュライ・シオノは”青髯”奈落球と『ウィッチレルム』のもっとも大きな結節点であり、それはすなわち、彼女のところに到達することができれば、”青髯”奈落球だけを『ウィッチレルム』から切り離すことが可能になるということだ。
問題はジュライ・シオノの聖樹はジュライ・シオノの、そして”青髯”奈落球はサクラダ・アウローラの≪絶対領域≫によって守られているということだ。これにより、ジュライ・シオノの魔女魔法を封じるか、加護などの力でその結界を突破しない限り、誰一人としてジュライ・シオノに到達することはできない。
つまり、『ウィッチレルム』を奈落の脅威から救うことができるのは、≪真名の枷:ジュライ・シオノ≫を持つ覚醒だけ。そしてサクラダ・アウローラ自身を救い出せる可能性があるのは、彼女のシャードの継承者たる洋一とほとりの二人だけ、ということになる。
GM :シャドウ・アウラ「中央公園のゲートはてめぇらのせいで閉じられちまったが、オレはもう一つ、ジュライ・シオノと”青髯”奈落球に到達するルートを知っている。テメェらにそいつを教えてやろう。そうすれば、テメェらは……」
ほとり:その言葉を遮って問いかけます。「――もっと大きな問題があります。あなたを、信じる理由は?」
GM :シャドウ・アウラ「……あん?」
にたぁりと、シャドウ・アウラは笑った。
「信じるのはテメェらで、信じないのもテメェらさ。そして、罠かどうかって?」
その質問を待っていた、と言わんばかりの、邪悪な笑みで。
「……………罠に決まってんじゃねぇか!!」
ぎゃらぎゃらぎゃら。シャドウ・アウラはその端整な顔を台無しにするような、歪な哄笑を上げた。
GM :シャドウ・アウラ「罠であろうとなかろうと、テメェらはジュライ・シオノを助け出す、それ以外に道はねえ。そして……ヘヘ、惑わせてやろう。”青髯”の野郎に繋がってる回廊はな。テメェらの仲間の一人がよーく知ってる場所にあるんだ」
ほとり:「狙いは読めてきました。つまり――私と天野さんのシャード、そして覚醒さんの知識。それをもってジュライさんを助け出し、あなたは奈落としての目的を遂げる」
GM :シャドウ・アウラ「正解だ。いわゆるWin-Winの関係ってヤツだろ?」
ほとり:「先日の私なら、確実に断っていたでしょうね」
GM :シャドウ・アウラ「だろうな。でも、今のテメェはどうかな?」ニタニタと笑う。
*舞台裏*
GM :――さて、問題提起は終わったので、そこらで二人が登場しても構わない。ほとりが許せば。
洋一 :ここは飛び出すべきか、魔力もなくなってボロボロのオレが(笑)
覚醒 :じゃあ、さっさと登場してしまいましょう。
GM :シャドウ・アウラ「さ・あ・ど・う・す・る?」ニタニタと笑いながら、一言ずつ区切って、奈落がほとりを誘う――ところで。
覚醒 :はい、左手で器用に刀を投げてシャドウ・アウラの顔のすぐ横に、ザシュウ! と突き立てつつ登場します。
GM :シャドウ・アウラ「おわぁっ!?」大きく飛び退く。
覚醒 :「やー、もーう少し左だったかなー?」と、口元を笑みの形に歪ませながら、刀を回収。
洋一 :「ぜっ、ぜっ、ほとりんっ!」そこに息を切らせながら飛び込んできます。
ほとり:「二人とも!」
覚醒 :「ほとりん久し振りぃ。元気そうで何よりです」
洋一 :「そん、で、てめぇ、さっきから、人誘い出して、なんのつも(うっぷ)」
まず右腕を失った覚醒が、そしてその後ろに息を切らせた洋一が立ち並ぶ。背中で庇うは唖然とするほとり、相対するは邪悪に笑うシャドウ・アウラだ。
ほとり:驚いた顔で二人を見ながら「……どうして?」自分でもバカバカしい質問だと理解しながらも、そう口にします。
洋一 :「うっぷ、ぜー、ぜー……どうしてって決まってるっしょ、もう何も力ねーけど、好きな子死ぬかもって、黙って見てたくねーっしょオレ!」
覚醒 :「サトリちゃんはほとりんの友達でバディでチームメイトで『守護者』だからですよ」(にっこり微笑んで)
GM シャドウ・アウラ「ひひ、来たなアイドルかぶれ。≪アンリ・マンユ≫の愛し子。そして……打ち止めの腐れガキ」
洋一 :「う、打ち止めだって何でそんなにばればれ!?」
覚醒 :「かぶれじゃなくて正真正銘アイドルですからー。後者の方は何か知ってるなら欠片残らず吐きだしてもらっても構いませんよー」(刀を突きつけながら)
GM :シャドウ・アウラ「ひひひ、そりゃもう、それだけマナが衰弱してりゃわかるっての、打ち止め小僧。そして、アイドルかぶれ。オレが知ってるのは、テメェと仲間をまとめて殺したのはそれこそ”青髯”の野郎の尻尾だってことくらいさ」
覚醒 :「へーほーふーん……成程成程」
シャドウ・アウラが開陳した事実に、覚醒は笑顔のまま気のない風の相槌を打つ。
しかしその纏うオーラは、側にいる洋一が数歩退くほどにどす黒く、殺気に充ち満ちていた。
GM :シャドウ・アウラ「おお、怖ぇ。ひひひひ、オレに当たるのは筋違いだぜ。さぁて、それじゃ後は若い人にお任せして」
そう言って、シャドウ・アウラはひょいと木陰に身を隠す。
シャドウ・アウラ「オレの言葉に従おうと、抗おうと、オレはテメェらの側にいる。さあ、踊って見せろよ、サクラダ・アウローラの継承者ども」
そう言い残して、シャドウ・アウラはそのまま姿を消してしまった。
ほとり:「……ここは追わないでおきましょう」と告げてから。
「その。私がいなかった間、こちらでなにがあったか教えてください。それから……それから……その」
少しばつが悪そうに、どこか困ったように、そして安心したように。
「――迎えに来て下さって、ありがとうございます」
にこにこと、今度は素直な笑顔を見せている覚醒と、ほっとした表情にわずかな居心地の悪さを織り交ぜた洋一へと。
――この世でたった二人の『仲間』へと、ほとりは深々と頭を下げた。
■ミドルフェイズ 3 シーンPC:覚醒 登場:全員自動
GM :そんなわけで、合流したところからだ。シャドウ・アウラが立ち去って、三人がこの先どう行動するのかを相談するシーンとなるかな。
洋一 :合流はしたものの、無能力者、なう。
GM :そうだね。ここで折角だから洋一には枷を嵌めよう。ここだけの特殊ルールだね。
●洋一のシャード喪失の特殊ルール
効果:
この効果中、洋一は加護を使用することができず、魔導値を用いる判定に自動的に失敗する。
戦闘値そのものに変更はないが、ブレイクを行うことはできない。
終了条件:
洋一が自らを克己したと認め、自らクエストを手にすることで解除される。
洋一 :わぁい(喀血)
GM :その時獲得したクエストが、洋一のオープニング配布クエストに充当される。
この仕掛けが、直後に思わぬ作用を発揮することになるとは、この時点でGMもまったく予想していなかったのである。
GM :ともあれ……場所はどうする? 移動してもいいし、そのままでもいいけれど。情報をある程度交換し、状況を確認したところで乱入が発生し、シーンが終了する予定だ。
覚醒 :ひとまず落ち着けるような場所があれば、そこに行ければとは。
GM :ふむ……七瀬市港湾部だし、近くには倉庫街とかショッピングモールとかあるね。人がいる方にいくか、いない方にいくか、という感じだ。
洋一 :「人目、ついたら、まずいんじゃ、無いかなぁ」
ほとり:「阻害魔法が通じない人がいたら、私の事は一目で理解されてしまいますしね……」
覚醒 :「ゆっくりはどのみちできそうにないし、せめて別方向での安心はほしいね」――ということで、人気のない方に行きましょうか。
GM :了解。
そうして、三人は倉庫街に向かった。
人通りはそう多くなく、路地裏であればほとんど人の目に触れることはない。そこで木箱に腰を下ろして、三人は情報を……そしてそれぞれの状況を交換した。
洋一のシャードが失われていること。伯父が『異端十字軍』の総大将であるということ。
覚醒の右腕が、フューネラルコンダクターの枢機卿によって斬り落とされ、さらには彼女のマネージャ、四谷が行方不明になったこと。
ほとりが『ウィッチレルム』を追放されたこと。そして――シャドウ・アウラに誘いを受けていることを。
洋一 :「追放に、突っ込めなかったけどその、腕が……」何にも言えねえ、って顔をしている。
ほとり:「満身創痍、ですね」
覚醒 :「まーサトリちゃんの腕は気にしないでいいですからー。何とかなるなる」と言いつつ演出≪ヒール≫をかけていますが、例によって効果ナシ。
三人は、沈痛な表情で黙り込む。
*舞台裏*
GM :ここで主に決定して欲しいのは、シャドウ・アウラの誘いに乗るかどうかかな。乗らないなら自分たちの足で問題解決の手段を模索しなくてはならない。
洋一 :奈落の誘いにはぎりぎりまで乗りたくないなあ。
GM :とりあえずシャドウ・アウラの提示した情報は、ボスに向かってまっしぐらのコースであることには間違いないと思われる。クロノ●リガーで挑めるからっていきなりラ●ォスに殴り込みをかけるみたいな話。
覚醒 :普通だと勝ち目が薄い上に、勝ってしまうと色々メタメタになるやつですね……(笑)
覚醒 :「んー、とりあえず……ほとりんはこれからどうしたいのか、というのは聞いておきたいですかねー」
ほとり:「『ウィッチレルム』を……助けたいです。それに、私の友達や先輩。それに――家族も」
洋一 :「…………」
ほとり:「それに、『ブルースフィア』の、みなさんだって」
洋一が俯く。多分そうだろうとは思っていた。だが、言葉にして聞いてみると、やはり重苦しい。
ほとりが救いたいと言うもの。その中には、いつでもほとり自身が含まれていない。
それは本来、言うまでもないことなのかもしれない。だから口にしないだけなのかもしれない。だが、今の洋一には、どうしても言葉にして欲しかった。
洋一が戦える理由があるとしたら、それはやはり、ほとりを救うことに他ならないのだから。
それが――二階堂俊彦が填まった陥穽そのものだと、わかっていても。
洋一 :「……なんで、自分の事は言わないんだよ」と、絞りだすように。
ほとり:「……出てこないんです」小さく呟いて「自分より大切にしたいものが、多すぎるんです。それで自分の事は、いつも忘れる。おばさまにも、叱られました」
洋一 :「だけど! それじゃあ、ほとりちゃんを大事にしたい人はどうすりゃあ……!」
*舞台裏*
ほとり:その台詞は地雷です……!(笑) 二階堂さんがまさにそれで行動した結果があれだったじゃないですか……!!
洋一 :わかってるけど一回言っときたいんだよう(笑)
GM :よし、そこで怒るなら、冷却期間を確保できるイベントの用意はあるぞ(笑)
ほとり:「そうやって――奈落の誘惑に惑わされたのが、二階堂さんだったから」
洋一 :「……ッ!」拳固めちゃう。
ほとり:「私が生きたいって望んで、誰かが幸せになる。救われる。そんな気持ちにならないんです」
洋一 :「……っざけんなっ! 確かに! 手段は間違ってたけどアイツを言い訳に……!!」激高して食って掛かりそうになる。
GM :では、ほとりが激昂した洋一の表情を目の当たりにしたところで、その背後から音もなく、カプセル状のものが頭上に飛来するのを目撃する。
覚醒 :「ちょっとちょっとよっちーストップ……む」
GM :おそらくは『異端十字軍』の使用した結界子だ。それは空中で光を放ち、その場を結界で覆い隠す……あ。
そこではた、とGMは思い起こした。結界が張り巡らされるということは――。
GM :洋一排除されるな、これ(笑)
洋一 :魔法使いじゃないもんな(笑)
覚醒 :おおう、そうか! そうなりますか!
ほとり:ああ……(笑)
結界の中では、クエスターやマナクリーチャー、奈落など、神秘に通じるもの以外はエキストラとなり、その内部での経験を記憶できないことが多い。
そもそも、結界は普通人が神秘の災禍に巻き込まれない、そしてそれを認識できないようにするのが主目的だ。そして奈落ならともかく『正義の味方』は、基本的に普通人を巻き込まないよう、これらを結界展開時に選択的に排除するように設定するのが普通だ。
つまり……現在魔法使いとしての能力を持たない洋一は、『異端十字軍』の結界から選択的に排除される立場にある、ということになる。
GM :よし、これはこれで面白い。そこで、突然ほとりと覚醒の目の前から洋一の姿が消える。
結界が展開され、洋一がはじき出されてしまったのだとわかるだろう。
というわけで、便宜上洋一は退場となるね。
覚醒 :「……は、そうか! よっちー結界ダメですか!」一拍の間をおいて気づく。
GM :そして、その結界の中に、フューネラルコンダクターの戦闘服を纏った戦闘員が押し寄せてくる。ターゲットは、明らかに覚醒とほとりだ。
FC戦闘員「魔女と『守護者』を確認、”対処”する!!」
全員運動判定(体力・反射)11に成功しないと<殴>4D+20のダメージを負う。としよう。
覚醒 :ぉぉぅ!
GM :あ、洋一は対象外ね(笑) さあ、攻撃をやり過ごせ!
覚醒 :体力判定ー(ころころ)……12!
ほとり:こちらも12でなんとか成功です。
GM :二人とも成功か。では二人は辛うじてFCの戦闘員の攻撃をやり過ごす。その場に居残れば彼らを倒さねばならないけれど、どうする?
ここは覚醒に決めてもらおう。そしてほとりは、覚醒についていくかどうかを。
……洋一は置いて行かれること、確定だな、これ(笑)
洋一 :自分一人で頑張れと(笑)
ほとり:この流れ、私の視点からだと、また私が不幸を呼び寄せてますよね……(笑)
覚醒 :よっちー回収しないといけないですし、サトリちゃんは離脱が最善手かと考えますかね。
GM :では、ほとりの判断次第。一人で離脱するならそれでもいいけど、その後どうしてくれようか(笑)
覚醒 :こちらは「ほとりん!」と呼びかけます。
ほとり:いえ。離脱するとますます状況が混乱するので、ここは素直に覚醒さんについて行きます。
覚醒 :では、≪レギオン≫あたりの演出を使って、瘴気で目くらまししてその間に離脱! ということで。
GM :了解。ではシーンエンド!




