序章:オープニングフェイズ
GM :それではまずプリプレイだ。何か宣言する要項があれば、どうぞ
アルシャード・セイヴァーRPGをはじめとするいくつかのTRPGシステムでは、セッションの開始時にプリプレイというタイミングが用意されている。
これは、セッションごとに変更を行うことができるデータの宣言や確認に使われることが多い。
覚醒 :あ、メジャーアクション使う特技なので≪ヒューマナイズ≫は開始時点でかけとくという扱いで問題ないでしょうか?
GM :問題ないよ。
洋一 :えーっと。アイテムに効果があるものはここで、っすね。「煉獄の炎」に「レセプトボックス」を付与して「種別:PK」に。更に≪幻想具現≫付与で威力を+2、代償を+3【MP】するっす
ほとり:シートの指定で計算済みになっています。ここからとくに変更はありません。
GM :OK。それではよければ始めようか。
■オープニングフェイズ1 シーンPC:洋一 登場:途中でほとり登場、サトリは不可
GM :洋一が過ごしている日常を、ほとりがブルースフィアにやってきて、転校してきた日として描写していこうか。
▼PC1ハンドアウト 天野 洋一
コネクション:海辺ほとり 関係:興味
キミはごく普通の学生だ。今日も数多い友人達とバカな話をしたり、騒いだり、遊んだりしている。
しかしキミはどこか物足りなさを感じていた。もっと熱くなれる、自分だけの何かを見つけたい。
そんな焦燥感に駆られるキミは、ある下弦の月の夜、居残っていた学校で見知った少女を見掛ける。
一見地味だが、どこか神秘的な雰囲気を漂わせた(と感じているのは実はキミだけなのだが)転校生、海辺ほとり。
ちょっとした下心も手伝って、キミは彼女を追い、学校の裏庭に足を踏み入れる。
――そして、その時を境に、キミの世界は一変した。
GM :ハンドアウトはこうなっている。このハンドアウトの内容は、主にミドルフェイズに至って描写されるので、今は普通の日常で構わない(笑)
洋一 :クラスメイトとバカ話とかしてケラケラ笑う日常っすね。マジ? とパネェ! とで大体会話が終了する系。
GM :そんな感じだね。
――授業が始まる前。
日本某所、七瀬市にある、海際の高校の二年生教室。
ごくあたりまえの……窓から吹き込む風に潮の香りが、差し込む光に海の蒼が入り交じる学舎の一室。
学生達が集い、めいめいがこれから訪れる窮屈な一日を前にして、儚い自由を謳歌するひとときの喧噪。
物語のはじまりは、そんな当たり前の朝だった。
GM :「おーっす、天野」とクラスメイトが洋一に挨拶しながら教室の奥に向かう。
洋一 :「ちょりーっす。マジあっちー。マジダリー。何これ海開かねえ? GW前に」制服をだらしなく……HR前だけだが着崩して。
GM :「海よりプールだろ。水着! 弾ける水! 黄色い歓声! そして何より女子の水着!!」
とりあえず適当に一ノ瀬と名付けよう、クラスメイトの男子がそう拳を固めて力説する。
洋一 :「いっちゃんパネェ~、マジがっつき過ぎ! でもやっぱイッちゃう? GWあたりテキトー誘って」ヘラヘラ笑いつつ。
GM :「いいねー。よし天野、お前女子誘ってこいよ!」と、一ノ瀬は洋一をそうパシらせる。特に悪意はないのだけど、そういう風にグループ間を取り持つ役割を担うのが、洋一の普段の立ち位置……という感じでどうかな?
洋一 :うん、そんな感じかな。「えーマジ? いやいーっすけど」と、誰にでもヘラっと。
GM :「よし、任せた! 綺麗どころ頼む!!」と一ノ瀬が洋一の肩を叩く。そこで同じくクラスメイトの二階堂が、ぼそりと「そういえば、今日転校生が来るって話じゃなかったか? しかも女子」と呟いた。
洋一 :「マジ? 可愛い子?」二階堂に振り向いてがっつきます。
GM :「この時期の転校生だろ? とびっきりの美少女に決まってるじゃん!」「お前はアニメの見過ぎだ。世の中そんなうまくいくわけないだろう?」「なんだよー夢くらい見たっていいだろー。水着が似合うゴージャスなスタイルの美少女を期待したい!! な、天野だってそう思うだろ?」と一ノ瀬が振ってくる。
洋一 :「いやいやいやそりゃ綺麗どころは嬉しいけどなぁ~。マジ美人だったら高嶺の花っしょ?」(へらへら)
GM :「大丈夫……天野、お前ならきっとやれる。俺達に美少女を侍らせる栄光を! 俺達はお前の屍を乗り越えて征く!!」
洋一 :「ちょ、マジ俺当て馬? もう勘弁してくれっすよ~」笑いながら流します。
*舞台裏*
ほとり:ここに渾身の地味ロールで私が転校生としてくるのね……(笑)
GM :そういう想定でいます(笑)
GM :ではそのあたりで、先生がガラッと戸を開けて入ってくる。「バカ共、いつまで騒いでる! ホームルームの時間だぞ着席しろ!!」
洋一 :「あ、ヤベ、マジやべぇ!」慌てて制服のボタンを留めます。
GM :先生は……ここはベリーショートでサングラスのマッチョな女性教師でいこう(笑) 名前は三鷹先生。
一、二、三とくれば、このNPC達がその場の即興ででっち上げられているということがわかるだろう。
命名規則に突っ込みを入れたい人間もいるかもしれないが、物語には関係ない。気にしない、気にしない。
GM :三鷹先生は「天野、第二ボタンがずれてるぞ。その派手なシャツを転校生にアピールする気か?」と指揮棒でびしっと洋一を指さす。
洋一 :「ってマジ? すんませんっ!」ここで抵抗するほどの覇気もないのである。
GM :わっと沸き上がるクラス。それは洋一の第二ボタンもさることながら、転校生の話題が飛び出したがゆえだろう。
洋一 :「うっへー。マジ恥ズカシー!」
GM : 再び沸き上がるクラス。それをばしっと指示棒をはたいて黙らせてから 「よし。では……海部、入りなさい」 と三鷹先生が扉の向こうに呼びかける。ではほとり、登場をお願いします。
がらり、と戸が開かれ、しずしずと一人の少女が入ってくる。
一言で言えば、地味。お仕着せの制服を一分の緩みもなくきっちりと着こみ、身を縮めるように学生鞄を両手で握って。
まるで自分の特徴という特徴をすべて押し殺しているかのような、そんな少女。
クラスのどよめきが、戸惑いから落胆を交えたものへと移り変わる。
少女は、小さくほっと息を吐き出す。諦観でも失望でもない、安堵の吐息。
――良かった、欺瞞魔法はきちんと効いている。
ほとり:「……はい」応えて入ってくるのは少女は『今時?』と思わず疑問符を浮かべたくなる、飾り気のない少女。
洋一 :「んー。なーんか地味……?」首をかしげる。
ほとり:制服のスカートの丈も買ったままと、女生徒たちなら一目でわかってしまう。
GM :「……地味ねー」と女生徒がこそこそと会話してるのが聞こえてくる。
「……くっ」「だから言っただろう、夢を見るなと。俺はこういう希少種嫌いじゃないけどな」「……じゃ、任せたわ」「いや、俺も嫌いじゃないだけだし」
……なんて、一ノ瀬と二階堂もテンションの低い会話だ
ほとり:「うみべの、ほとりです。よろしくお願いします」笑いもせずに、会釈をする。目ざとければ、髪が艶やかであることには、気がつけるかもしれない。
GM :≪異界の隣人≫の効果で、ほとりの外観については「別におかしくない」としか認識できないからね。しかし洋一は、その効果をギリギリ貫通するかしないかくらいで認識出来る可能性がある。
このあたりは、後にクエスターとして覚醒する予定であるためのフレーバーだ。
洋介は未覚醒ながら魔法使いの才能があるため、こういう魔法的な作用を乗り越える可能性がある、と描写している。
ほとり:あとはほんの少し、目の色が薄い。と言うのも、気がつかれてもいいかも。ちょっとだけは目を惹くんですけど、違和感として認識出来るまでにはならないんですね。異世界人面白い(笑)
洋一 :「……?」地味な子なのに何と言うか、纏う雰囲気が見た事ない。ただ、それを神秘的と表現するほどの語彙もないので「えー。でもなんかヤバくね? いっちゃん。何上手くいえねーけど」
GM :「お前ああいうの好みなのか? 特徴がないのが特徴みたいな子じゃん。……まあいいよ。とりあえず声だけはかけてみようぜ。ああいう子、ほっとくとぼっちになりそうだし。洋一、任せた」と、と一ノ瀬が丸投げしたところで、三鷹先生が「そこ、一ノ瀬、天野、私語は慎め!」とびしっと指揮棒で威嚇した。
洋一 :「うぃーっす!?」慌てて顔を引っ込める。
ほとり:「あの、先生。席は?」
GM :「よし。海部、お前の席はその……窓際の後ろの空いてる席だ。日当たりが良すぎて辛ければ、カーテンを閉めろ」海風が吹き込んで、白いカーテンがゆらゆらと揺れている、クラスのまとまりから少し離れた座席だ。
ほとり:少しだけ、弾んだ声で「はい」と言う。内履きでとことこと歩いて、椅子を両手で引いて座って、そのまま何秒かじっと、外を見ている。
GM :とりあえず今は洋一とは席が離れてることにしようか。話しかけようにもかけられない感じで。
洋一 :はぁい。じゃああんな景色の何が珍しいのかなー、と見てる。
ほとり:しばらくして、きちんと膝に手をおいて正面に向き直ります。背筋が定規でも入ってるみたいに、まっすぐに。
GM :では、ぽけーっとほとりを眺めている洋一の頭を、出席簿のタブレットでぺん、と叩いて「おら、バカ共。転校生の前で恥を上塗りするんじゃない。騒いでないでホームルームを始めるぞ」と三鷹先生が宣言する。
洋一 :「あでっ!?」思い切り不意を打たれて慌ててまた笑われよう。
GM :OK、いつもの笑い声が教室を満たす。
――そんな感じでひとまず、洋一の日常に、ちょっとだけ変化が訪れた。そこでシーンを閉じたいと思う。何かやりたいことはあるかな?
洋一 :いえ、大丈夫っすよ
GM :では、シーンエンド。
■オープニングフェイズ2 シーンPC:ほとり 登場:不可
GM :では次、ほとりのオープニングだ。
ほとり:はい。
GM :ほとりのハンドアウトは、こんな感じだね。
▼PC2ハンドアウト 海辺 ほとり
コネクション:レルムシード 関係:使命
キミはウィッチレルムから派遣された『侵蝕者』だ。キミの役目はブルースフィアに『魔女の領域』を作成し、マナ欠乏にあえぐウィッチレルムにマナを送り込むことである。
今夜は天体配置も適当だ。キミの初仕事にはもってこいのタイミングである。叔母から預けられた聖なる種子『レルムシード』を使い、キミは学校の裏庭に『魔女の領域』を作り出すこととした。
しかしいざ、『魔女の領域』を作成した矢先に異変は発生した。
キミの『魔女の領域』に、奈落が溢れ出したのだ。
GM :これも、内容はミドルフェイズに至ってから描写される予定。このシーンは、学校帰りに使者から、その引き金となるアイテムを受け取るシーンとなるね。
ほとり:わかりました。
GM :というわけで……ほとりが転校してきてから、一週間ほどが過ぎた。授業は可も無く不可も無く。事前の勉強の甲斐あって、授業にわからないところもさほどなく。クラスメイトとのやりとりは……そこはほとりに任せよう(笑)
ほとり:何人かには話しかけられても、あえて友達になろう、と言う子はもう高校生なのでいない。と言う位の距離感ですね。ちょっとからかわれたりしそうですけど、特徴がないのでそこまでの注目すらもない(笑)
GM : すると放課後に声をかけてくるのは先生っぽいな。校門に向かって歩いているほとりに、担任の三鷹先生が「海部か。気をつけて帰れよ」と声をかけてくるけど、それだけ。
ほとり:「ありがとうございます」と会釈します。
GM :三鷹先生は「うむ」と手を挙げて会釈を返す。
そんな感じでほとりの静かな日常は、今のところとくに揺らぐこともなく過ぎようとしている……のだが。そこにピンクの髪が顔を出した。
ほとりは、校門の陰に小さな人影を見つけた。
校内をちょこちょこと身を隠しながら覗き込んでいる不審者。顔を出しては引っ込めるを繰り返し、そのたびにぴょこぴょことセミロングの髪が跳ねる。
十歳くらいの女の子だ。身体を隠しているつもりのようだが、鮮やかなピンクの髪が隠しきれていない。
しかし、その横を通り過ぎる生徒達は、可愛い子がいるな、という程度の反応しか示していない。つまりは、認識阻害の魔法がかかっているということだ。
鮮やかな髪の色と認識阻害となれば、同郷の魔女の可能性が高い。ほとりはゆっくりと、その少女の方へと足を進めた。
GM :「……あ、やっと出てきた! 遅いわよ!!」と偉そうに小さな胸を張って、ピンクの髪の少女はほとりを見上げる。「えーと……こっちでの名前は……海部ほとり!!」
ほとり:「はい。ほとりです。よろしくお願いします。そちらは?」
GM :「わたしはセンニンの……こっちでは鷹取いずみよ! 半年先輩なんだから、ちゃんとウヤマイなさいよね!!」と、ピンク髪の少女……つまりは”魔法少女”いずみが見上げて言う。
”魔法少女”いずみ 超上級ルールブックP.112掲載NPC。
齢10歳のウィッチレルムの魔女。ブルースフィアにマナ収得のための『レルム』を作り出そうと暗躍する侵略者。詳しくは超上級ルールブックを参照のこと。
なお、名字は『ヴァルプルギスの侵略者たち』用に便宜上付与したもので、公式には名字は定められていない。
ほとり:「はい。いずみさん」礼儀正しく、会釈をします。本人は本気なんですけれども、慇懃無礼にうつるかもしれません。
GM :「ふふん、それでいいのよ」といずみは十歳児らしく素直に受け取った!
ほとり:「いずみさん。どうします? お話、しやすいところ、ありますか?」
GM :「ん、それじゃ……そういえばそこの向こうの角にドーナツ屋さんがあったわね!」
ほとり:ドーナツ。お小遣いはもらっていますから、大丈夫ですよね。よ、寄り道(緊張)
GM :なるほど、優等生のほとりは寄り道の経験もなしか(笑)
いずみは「もちろん、センニンなんだからわたしがオゴるわよ! センニンは度量を示さないといけないんだから!!」と、偉そうに言っているが……実際にはお小遣いが足りなくて、折半という流れになる(笑)
ほとり:いずみさん、いい先輩ですね(笑)
GM :ちなみにいずみはまさしく先任の『侵蝕者』で、齢十歳にして既にブルースフィアに派遣されるほどの才媛だ。ウィッチレルムでは、クエスターの才能がありそうな人間は年齢を問わずブルースフィアに送り込むのがならわしになっているんだね。
なお、期待されてはいるのだけど、クエスターではない。
ほとり:なるほど。では礼儀をこめて、一番美味しそうなドーナツを一緒に選びましょう(笑)
GM :はい、ではドーナツ屋でおやつを買って、海浜公園みたいなところで一緒に食べる感じになる。「……ここのドーナツもとっても美味しい、是非レルムを作らせて貰わないと……」あむあむあむ、と、明らかに仕事のことを忘れてドーナツに夢中になっている。幸せそうだ。
ほとり:「それに、海も綺麗ですね」と笑ってみせて「いずみさん。任務の事ですが、聞いても大丈夫ですか?」
GM :「にんむ? ……あ、そうだった!!」いずみは慌ててドーナツを食べ尽くそうとして、もったいなくて手が止まる。
「……その……じゃ、えい」とドーナツはそのままに、空いた片手にタクトを握って、ちちんぷいぷい。魔女魔法≪絶対領域≫が展開される。
ほとりは普通に知っているけれど、基本的な魔女魔法の一つだ。認識阻害の効果がある結界で、この範囲内で行われた会話や行動は、一般人には認識されない。
ほとり:なるほど。それなら魔女で話すにはどこでも便利ですね。
GM :なお、空を飛ぶ時のスカートの中などを認識させない効果もある。
ほとり:素晴らしいです。
GM :という余談はおいといて「……『ヴァルプルギスの夜』からのシレーよ。あなたに、三日後の下弦の月の夜、あなたが適切であると思った場所で、『魔女の領域』を作ること、だって」
ほとり:「三日後の月の夜。下弦と言う事は」宙に指で弓を描いて「月の形はこうですね」
GM :「うん、そうね。……で、そのための『レルムシード』が、これ」といずみが差し出す、宝石箱のようなもの。そこには『ジュライ・シオノ-アハツェン(18)』と魔女語で刻まれている。
ほとり:「これが『レルムシード』。この名前は?」
GM :中には、クルミのような木の実のようなものが収まっている。「わたしはしらない。……せ、センニンだからって何でも知ってると思わないでよね!!」と、いずみは真っ赤になって抗弁する。
ほとり:不思議そうに手にとって少しみてから、鞄にしまいます。
GM :ちなみに基礎知識としてほとりは知っているけれど、本来『魔女の領域』の作成は『守護者』が現地の組織から派遣されてから行われるのが通例のはずだ。
ほとり: 私は例外なんですね。おばさまの意向かしら。
GM :そのあたりは不明だね。ちなみにいずみに聞いても知らないだろうし、今はドーナツの残りに夢中(笑)
ほとり:「ではいずみさん、ありがとうございました。お家までお送りいたしましょうか?」
GM :「だ、大丈夫よ、バカにしないでよね!! ちゃんと駅から電車に乗って隣駅で降りれば……えっと、カマクラ行きに乗ればいいんだっけ……」逆方向です。
ほとり:「いえ。これはお礼ですから」
GM :「そ、そう? じゃあエスコートさせてあげるわ!!」あからさまにほっとした顔で、偉そうな態度を取り繕いながらいずみは笑った。
そうして、ほとりといずみは駅に向かっていった。というところでシーンを閉じよう。
■オープニングフェイズ3 シーンPC:覚醒 登場:不可
GM :では最後に、覚醒のオープニングシーンだ。
▼PC3ハンドアウト 灰岡 覚醒
コネクション:珠来 しおの(じゅらい -) 関係:家族
キミは今をときめきたい、売り出し中の死体系アイドルである。売れる前に熟れないように気をつけねばならない。
キミはかつて、この世界を侵略する魔女と共にあった。キミの終わりに立ち会い、キミの始まりに出会い、キミの続きを共に歩んだ。
そんな彼女が突然姿を消して、はや五年。ライブを終えたキミは、参加者の中に彼女……珠来しおのらしき姿を見つける。
彼女を追ったキミは、とある学校の校庭で、下弦の月光に照らされた彼女と対峙した。
「いつかの約束、果たしに来たよ」
――どうしたことだろう。まるで月を映したかのような笑みを浮かべる彼女は、キミと同じ……いや、より重く深い奈落の絶望を纏っていた。
覚醒 :『売れる前に熟れないように』……(笑)
GM :(真顔で)ハンドアウトの内容はこのようになっているね。このシーンは覚醒の日常と、この珠来しおのと遭遇するところまでを目的とする感じ。
覚醒 :「わーいしおのちゃんがお仲間になったヨ†」とはならないんでしょうねえ……。
GM :それでは話が進まないからね(笑)
覚醒 :ですよね!
GM :というわけで……こちらとしては覚醒のライブが終わった、下弦の月の夜を想定している。ライブシーンを描写するかい? フィナーレあたりくらい(笑)
覚醒 : か、可能ならば(笑)
GM :ではやっちゃいましょ。まだアイドルとしてはあまり熟れてるもとい売れてる方ではないので、こうショッピングモールの広場でミニライブって感じかな?
覚醒 :ですねー。ショッピングモール大好きです! ゾンビ的な意味で!
GM :では、こう、メインプログラムが終わったところで、えらく不健康なメイクをしたファン達に「りぼーん! りぼーん!」とアンコールを要求されているところとなる(笑)
覚醒 :では「ありがとーみんなありがとー! それじゃあ土の下に帰る前にもう一曲だけ!」とか不穏な台詞からラスト曲に入ります。
GM :「「「ヴァーーーー!!」」」とお約束のように、歓声がゾンビっぽいロールで轟きわたる(笑) 鳴り響くBGM、アンコール向けのとっておきの一曲。ライブの〆としてはほぼ最高。
覚醒 : にっこにこ笑顔で全力歌唱している最中にふっとモノトーンになって時間が止まり、自分と彼女だけ色がついているとかそういう演出ですね!
GM :それそれ、そんな感じ。演出としてはこんな風だ。
最初に飛び込んでくるのは、鮮やかなライムグリーンの髪。
(―――え)
見間違いかと思った。そんなはずはないと思った。
地球人では見ることのない、鮮やかなパステルカラーの髪。それを一本の三つ編みにまとめ、細い肩に乗せて胸元に流している。幼げな顔立ち。そして……まっすぐに覚醒を射貫くブラウンとダークグレイの視線。
それは覚醒の記憶にある、五年前に別れたきりの相棒。魔女の世界からの『侵蝕者』「珠来しおの」以外は考えられない。
(―――しお、の?)
歌いながら、しかし視線は彼女に吸い寄せられて離れない。それをしおのも気づいているのだろう、にこりと微笑み、ゆらりときびすを返し、ステージに背を向ける。
(―――しおの!)
一刻も早く追いかけたかった。聞きたいことはいくらでもあった。だが覚醒の職業意識と、共に盛り上がっている自称『眷属』たちを裏切ることはできない。
心の片隅でだけ懸命に手を伸ばしながら、覚醒の喉は、ライブのフィナーレを紡ぎ上げていた。
GM :そこで、外界の音が戻ってくる。曲はいよいよフィナーレだ!
覚醒 :一瞬呆けた顔をしてましたがすぐに持ち直し、アイドルモードで曲に戻ります。プロ意識!
GM :よし、プロ偉い! では曲を歌いきり、盛り上がる眷属達の波に囲まれる。……しおのらしき人物は、モールの奥の角を曲がり、外に出て行ったようだ
キミは彼女をすぐに追いかけてもいいし、ライブをきちんと終わらせてからでもいい。
覚醒 :アンコールを歌い終わったらもう終わりでしょうから、ライブはきっちり終わらせます。気にはなるけどこっちも本職!
GM :では、プロとしてきちんと歌い上げた後、様子がおかしいことに気づいていたスタッフが気を回して、さっとステージから覚醒を退場させてくれる。フランケンシュタインの怪物なコスプレのスタッフが、ウインクして覚醒を見送ったりして。
覚醒 :「ありがとうございます†」と小さく言った後、降りてきたと同時に「マネージャー!」と呼びつけます。取得してるエキストラですね。名前は特に決めてません!
GM :じゃあ四谷さんで。怪談的に。「……どうしました、覚醒さん」とマネージャは真剣な面持ちで問いかける。
覚醒 : 事情を知らない人もいるはずなので小さい声で「『あちら』の関係で気になることがあったの。後は任せちゃっても?」
GM :「心得ました。後は心置きなく。装備はいつものトランクに」とマネージャは覚醒を見送ってくれる。
覚醒 :「ありがとう!」と駆け出します。途中でトランクを回収しつつ、急いであとを追いかけます。
GM :では、すっかり暮れた夜空に、下弦の月が輝く下、覚醒はモールを駆け出す。もちろん、仕事をしていた分出遅れていたわけで、普通であれば追いかけられるはずはない――のだけれど、覚醒には、モールの出口あたりからまっすぐに、海岸端の道に沿って何かの匂いが漂っているのがわかる。
腐臭ではない。しかし陰鬱な気配を内包した……奈落の気配だ。
覚醒 :「……お仲間、だったらサトリちゃん的には良いんだけどなー」と言いつつそちらの方へ。嫌な予感を感じつつ。
GM :さて、そこで覚醒は気づきます。しおのと別れたのは五年前で、彼女はあの頃十八歳だった。そして今見たしおのは……その時から歳を取っているようには見えなかった。
覚醒 :(しおの……アナタは―――『こっち』に来たの? それとも……)
GM :では、走って行った先。覚醒は、人気の無い海岸の道で、下弦の月の真下に、街灯に照らされたライムグリーンの少女の姿を認める。
背中を向けたままで、顔は見えない。
覚醒 :「―――しおの?」その背中に呼びかけます。
そうであってほしいという気持ちと、違っていてほしいという気持ちをせめぎあわせながら。
GM :では――
「――覚醒」
懐かしい声で答えながら、ライムグリーンのおさげが揺れる。
くるりと身を翻す。羽織ったオリーブ色のカーディガンの裾と、黒いセーラー服のスカートが揺れる。
その色、その仕草。振り返ったその姿は、紛れもなく、覚醒がかつて共にあった『侵蝕者』の少女だ。
あの時の記憶のまま……突然姿を消した、”五年前の姿のままの”珠来しおのの姿が、そこにあった。
まるで、空に浮かぶ月を映したかのように、鋭利な笑みを浮かべて。
GM :「久しぶりだね、覚醒。元気そうで嬉しいよ」
覚醒 :「……五年ぶり、でしょうか。また会えたのは―――ワタシも、嬉しい」言ってかぶりを振って「嬉しいけど……その姿は、何? 今まで、何を? 聞きたいことがあり過ぎて……どうしていいのか、分からない」
GM :しおのは答えない。ただ微笑んだだけで、惑う覚醒の様子を楽しむようにその周囲をてくてくと歩き、そしてまた正面に立ったところで。
「いつかの約束、果たしに来たよ」
そう、月を映したような笑みを浮かべて……その手に、大鎌を抜き放った。
覚醒 :「―――!」
GM :そこで、覚醒にクエストを発行しよう。【しおのの行動を質す】だ
GM :というわけで……ミドルフェイズに移行しようか。
一同 :はーい!




