第二章:ミドルフェイズ (3)君を救いたいから
■ミドルフェイズ 7 シーンPC:覚醒 登場:自動・任意
中央公園を脱出したチーム『SHIRANUI』は、覚醒の事務所に向かった。体を蝕まれた覚醒とほとりを休ませ、善後策を練るためだ。
幸い、公園を離れたことで、覚醒とほとりの体を蝕むものは、その力を衰えさせたようだった。
初めて目にするアイドルの事務所というものに、洋一は落ち着きなくきょろきょろ視線を巡らせる。そんな様子に少し苦笑して、覚醒はゆったりした応接ソファにほとりを座らせ、自分は仕事机に浅く腰を載せた。
――さて、ここからどう手を打ったものだろうか?
GM :さて、今後の方針を決定するシーンだ。
覚醒 :ひっひっふー。
ほとり:私と覚醒さんの【邪毒】はどうなっていますか?
GM :中央公園を離れたことで、影響が薄れたようだ。シーン終了とともにバッドステータスは解除され、離れたことで再び【邪毒】が発生することもないようではある。逆に言うと”中央公園の瘴気とかそういうものにあてられて、覚醒やほとりに悪影響が生じている”というところまでは確信が持てるね。
ほとり:「あそこでは私たちは、長く戦えないみたいですね」
洋一 :「なんでかねぇ」うーむ。
覚醒 :「むーん。サトリちゃんがアンデッドとして復活して早数年。奈落とは何度も戦ってきたけどこんなことは初めてだなー」腕組んでむむむんと。
GM :ではそんな相談をしていたところで、ちょっと割り込みの電話が、洋一の携帯に入る。一ノ瀬からだね。
洋一 :「(ぴ)あれ。イッちゃん?」
GM :一ノ瀬「おーい、天野。お前二階堂と一緒じゃない?」
洋一 :「ニカちゃん? いや、知らないっしょ……なんかあった?」現在時刻は――。
GM :夕方五時くらいかな?
一ノ瀬「カラオケの約束してたのに、結局顔出さないし、電話も通じないんだよ。なんか知ってたらと思ったんだけどさ」
洋一 :「んー……まさかのオンナ?」
GM :一ノ瀬「まさか。あいつあれで二次元派だぜ? でもまあそういう話だったら野暮だし、もし見掛けたら連絡くれよ。ブッチの詫びにハンバーガー奢らせるからさ」という感じで電話は切られる予定。
覚醒 :ニカちゃんそーなのかー……(笑)
洋一 :「まあ実際ちょっとここのトコ、ニカちゃんなーんか変だしねぇ……すっぽかすにしても連絡一つないとか」んーむ。嫌な予感はするが「りょーかい。オレもちょっと聞いてみるっしょ。なんでオレのぶんもバーガー取り立てよろしく」
GM :一ノ瀬「おっす。……天野も奢れよ、最近付き合い悪いんだからさ」と冗談めかして言って、電話が切られる。
というわけで、現状では情報収集項目として、以下の三つが挙げられる。
・奈落の軍団の分析 調査:情報・魔法、軍事(理知) 目標値12
・二階堂を捜す 探索:情報・噂(幸運) 目標値10
・奈落侵蝕の原因と対処 調査:情報・魔法(理知) 目標値11
GM :通常の情報収集として行動して構わない。各自一回のメジャーアクションとして情報収集を行うことができる。
洋一 :二階堂探したいなあ。
ほとり:軍団の分析は私がやってみます。
覚醒 :となるとサトリちゃんが侵蝕原因と対処ですね。
そんなわけで、順繰りに情報収集判定を行っていく。
ほとり:【理知】で判定を……(ころころ)出目8で12、ちょうど出てくれました。
GM :ほい。では様々な資料を付き合わせて、わかったことがいくつかある。
・奈落の軍団
基本的には中央公園に棲息していた動物を元としているが、奈落によって変質している上、本来公園に存在しなかったものも変異を遂げている。
目だって異常なものとして、人型の中世兵士型の奈落が出現しているが、これも人間が憑依されたものではなく、何らかの理由で奈落が人型を形取ったものであろうと考えられる。
性質的には≪夜の眷属≫などで召喚される眷属と同質のものだが、奈落兵士の武装の仕様を調査したところ、1400年代のフランス軍の軍装に酷似しているとわかる。
何故、中央公園の奈落がフランス軍の軍装を纏っているのかは不明。
この情報を得ることで、敵の布陣の傾向を見抜くことができる。敵大規模エネミーの【HP】を-20する。
洋一 :「まさか歴史の授業が役に……」
GM :ちなみにその前提を得ることで、彼らが喋っていたのがフランス語に近い言語であることもわかる。何を言っていたかというと『魔女!!』『邪魔をするな!!』など。
ほとり:「なんだか授業で習ったことが役にたっちゃいましたね。天野さん」と、学校のノートや教科書も広げてみて、嬉しそうにいいます。
洋一 :「(うわ可愛い)」
覚醒 :「中世の魔女狩りかー……うーやだやだ。世が世ならサトリちゃんも対象だったろーねえ」
洋一 :じゃ、次俺かな。「…っと。んじゃゴメン。ちょっと友だち探してくるっしょ!」原付のヘルメット手にして、二階堂探しに行ってくる。
判定結果は11。目標値は10なので、成功だ。
洋一 :あぶあぶ。
GM :では、まず中央公園の付近に、二階堂の原付が乗り捨てられたままになっていたことがわかる。公園の近くに落ちていたメットも、二階堂のものだ。
洋一 :「……この原付、ニカちゃんの? 何でこんなヤバいところに……まさか、いや、でも……」あの真鍮の騎士を思い起こしつつ。
GM :それからあちこち歩き回ってみたが、最後に二階堂の自宅に立ち寄ると、既に帰宅していると家族が教えてくれる。
ただ、何か体調が悪いらしく、既に寝てしまったとか。
洋一 :取り敢えず、お大事に、と。後電話にでろよー、と。
GM :伝言する感じかな。母親が「伝えておくわね、ありがとう」と微笑んでくれる。
洋一 :……正直、こっそりダイナミックエントリーしたら、中に誰もいないんじゃという気がするんだが。
GM :さて、どうかな?(悪い笑顔)
疑念を抱きつつも、最後に覚醒の手番。『奈落侵蝕の原因と対処』を調査する。
覚醒 :(ころころ)……12! 良かった成功。
・奈落侵蝕の原因と対処
奈落侵蝕の痕跡から、おそらくジュライ・シオノに繋がっている真名の契約のバイパスを経由し、奈落が流れ込んできているものと思われる。
ほとりに奈落侵蝕が伝わったのは、真名の契約を中継し、覚醒を侵蝕した奈落がほとりに侵入したことによる。
これを阻止するためには、外部からの奈落の侵食を遮断する装置、フューネラルコンダクターなどが開発する対奈落障壁などを携帯することで対応可能。
この情報を得ることで、覚醒とほとりは奈落侵蝕による邪毒の付与効果を3ラウンドまで免れる。
GM :このラウンドは、戦闘開始から数えて3ラウンド。たとえばミドル戦からクライマックスになだれこんだ場合、別途にカウントする。
覚醒 :合計3ラウンド、ではなく都度3ラウンドずつ、ということでしょうか。
GM :そういうこと。
ほとり:長期戦じゃなければどうにか出来そうですね。
覚醒 :了解です。そしてやはり、しおのとの契約からでしたか……。
GM :対奈落障壁などはフューネラルコンダクターが用意してくれるので、問題なく対応できる。
まあここで重要なのは、契約を通じて奈落が流れ込んでくる、という事実の方だね。
覚醒 :「……これってつまり、前回のアレはやっぱり仕組まれたことだったってことかなー」
ほとり:「それも、考えないといけませんね」
洋一 :「……あれ、そういえばなんでサトリちゃんとジュライ・シオノの契約って切れてないんだっけ?」
覚醒 :「どちらかというと、前のアレで繋ぎ直されたって感じかな」
洋一 :「あー、あれ? そんな簡単に繋ぎ直したりできるもんなん?」
GM :ああ、契約が切れてないのは、そもそも契約が解除されなかったから。一方的にジュライ・シオノの方から記憶操作と認識遮断が行われて、『ずっと存在していた契約をないように見せかけていた』状態だったんだね。
ほとり:そもそも契約が切られていないんですね。
覚醒 :欺瞞が解けたって感じですかね。まあ感覚的には繋ぎ直された感じはしてそうなところです。
GM :そもそも、契約は両者の合意のもとでなくては切ることはできないからね。
≪真名の枷≫は、『ブルースフィア』が抱えている、『ウィッチレルム』の魔女への不信と恐怖を体現しているものだ。
それを一方的に魔女の側から解除することができるようでは、そもそも安全装置としての役目を果たせない。両者の同意が必ず必要となる。
つまり、覚醒の契約は、たとえジュライ・シオノが解除を望んだとしても、覚醒自身がそれを受諾しなければ消えることはない。
そして、現在契約が存在する以上、仮に奈落の侵蝕を避けるために覚醒が契約を破棄しようとしても、これは成立しない。更には、仮に覚醒が契約の存在を忘れていたとしても、隠されたままの契約を通じて、奈落が覚醒を侵蝕していたであろうということでもある。
GM :あ、あと余談ながら、覚醒が奈落堕ちすると……契約のバイパス通ってほとりにも行くんで気をつけて(笑)
覚醒 :……連動してほとりんもってことですか。うわー……。「サトリちゃん一人の命じゃない……これはいわゆる『絶対に負けられない戦い』!」
洋一 :「ま、まあ、ああなんなきゃ、それでいいっしょ!」
ほとり:「でも、理由がわかって安心しました」
GM :あ、一応ついでに、『奈落侵蝕拡大の阻止方法』について、別シーンになるけど調査するならしてもいいよ。だいたい見当付いてると思うけど(笑)
次のシーンに中央公園にリベンジするか、それとも情報収集を延長するかの二択。
覚醒 :まあ、契約関係なら『枷』かければってことでしょうねえ……。
GM :今回のシナリオにおいては急いで調査しなければいけない内容ではない、とは言っておく。
洋一 :正直、ニカちゃんがPLはすげえ気になるけど打つ手も思いつかない……。
ほとり:はっきりしないと気持ち悪くはありますね……。
悩んだ末、洋一は≪運命の予感≫で、今だPL視点の状況証拠しかない、二階堂と真鍮の騎士の関係を明らかにしたいと提案した。
これを受け、GMは単純に情報を与えるだけにせず、二人の対話するシーンを用意することとした。
■ミドルフェイズ 8 シーンPC:洋一 登場:シーンPCの任意
洋一の直観が告げていた。二階堂の行動を質す必要があると。それが自分の、シャードが示すクエストでもある。
そのために、二階堂に会わなければならないと思った。そのために一人、夜の七瀬市に繰り出したのである。
時計を見ると、時間は午後十時を示していた。普通に考えれば、こんな時間のこんな場所に、見知った誰かがいるはずもない。
しかし、洋一には確信があった。果たして、足を向けた先、ほとりが植えた『魔女の樹』の側に、洋一は二階堂俊彦の姿を見つけたのだ。
洋一 :ニカちゃん探しに出たのよな。
GM :洋一、キミは今無性に二階堂と対話したい、と思った。まだ断片的な状況証拠しかない。しかしキミは何故か、真鍮色の闘士と二階堂俊彦の関係に確信を抱いている。
その直感に従って町を歩くと……そうだな。先日レプラカーンが出現したショッピングモールがいいだろうか。その広場……ということは、ほとりの魔女の樹の側ということになるかな。
薄ぼんやりと輝く魔女の樹……普通の人間には見えないはずのその樹を見上げて、二階堂がたたずんでいる姿を、洋一は発見する。
洋一 :「――――」自身の直感に従い、わずかに距離をとって「へいニカちゃん、もうこんな時間に何ぼーっとしてるっしょ?」声をかけよう。
GM :二階堂「天野か。ここで待っていれば、お前が来ると思っていた」と二階堂はキミの方を見ないまま、樹を見上げたまま応える。「……お前には、これが見えていたのか?」
洋一 :「……ニカちゃんにも、見えるのか?」俯いて。
GM :二階堂「ああ、俺にも見える。見えるように、なった。これだけじゃない。お前が何なのか、海部が、あと……アンデッドアイドルサトリちゃん……だったか?」ものすごく言いにくそうな顔をしているが、名前を知らないので仕方がない。「彼女についても、わかるし、見えている」
洋一 :「ああ、うん……アンデッドアイドル、な……」
二人の間に、間の抜けた微妙な空気が満ちる。それを振り払うように、洋一が頭を掻いた。
洋一 :「あー、その、黙っててゴメン。巻き込んじゃいけない系っていうかだいぶヤバい? 感じで」顔を上げ、ヘラヘラ笑いつつ。
GM :二階堂「黙っていた理由もわかるから、別にお前を責める気はない。ただ……」そこで洋一に目を向けて「……何もしていないことは、認められない」
洋一 :「な、何も? いやえーっと、ほ、ほら、色々頑張ってるっしょチーム組んだり! ニカちゃんもこうなったら一緒によー!」
GM :二階堂「それは認められない。そんな時間はない。……やはり、お前には『見えていない』んだな」二階堂は小さく溜息を吐き出す。
洋一 :「いや見えてるって……やっぱ、り」真鍮色のヴィジョンが、さとりを明らかに敵意持って襲ったの思い出して「それは、サトリちゃんに襲いかかったのと、同じ理由、か?」
GM :二階堂「……ああ、俺だ。そして、理由も同じだ。お前の操る幻像と同じ、真鍮色の戦士。あれを使って、あのアイドルを襲ったのは」
洋一 :「やっぱり、ニカちゃんが新手の魔法使いか!! ちょっといくらなんでもいきなり過ぎっしょ……!」
GM :二階堂「それについては俺も同感だ。情報量が多すぎて、まだ俺自身飲み込み切れていない」
「だが、はっきりとわかっていることが三つある」
戸惑う洋一に、二階堂は指を三本立てて見せた。
「三つ……?」
「一つ、このままでは海辺ほとりは世界に貪り食われる」
「!?」
薬指を折り、告げる。一瞬、洋一の心臓が止まった。
「一つ、それを阻止するためには、『ウィッチレルム』を滅ぼさなくてはならない」
中指を折る。
「一つ、俺は彼女を救いたい」
言いながら、人差し指を折る。
「結論として、俺は彼女を救うために、この力を使う。そう決めた」
そして二階堂は、己が意思を突きつけるかのように、拳を固めて見せた。
洋一 :「な、いや、滅ぼすってヤバすぎっしょ! と、取り敢えず落ち着けってニカちゃんな? もうちょっと相談とか……」(おろおろ)
GM :二階堂「この樹だけでは足りないんだ」と、至極冷静に、魔女の樹に触れて二階堂が告げる。
洋一 :「……この樹で足りない?」
GM :二階堂「このセカイには、大小織り交ぜて数十の『魔女の樹』があるらしい。そこから供給されるマナが、『ウィッチレルム』を支えている……とんでもない。
このセカイから盗み取っているだけのマナで、一つのセカイを支えるのに足りるはずがないんだ。
『ウィッチレルム』が今のセカイを維持するために必要なマナを100%とすると、魔女の樹が供給しているのは、ほんの20%程度でしかない。
……では、あと80%はどうやって供給されていると思う?」
洋一 :「え、どうやってって……」
GM :二階堂「……この世界でもっとも大きなマナソース、それは神と、その欠片であるシャードだそうだ。『ウィッチレルム』には、その力を最大限に引き出し、術者ともどもマナ供給源に特化した形態に変化させる術があるらしい」
「その名を≪樹霊化身≫という」
樹霊――樹の霊。
(……ジュライ・シオノ……?)
洋一の脳裏に、何度も矛を交えたライムグリーンの少女の姿が思い起こされる。
「ジュライ・シオノという魔女が、直前に≪樹霊化身≫を果たしたクエスター……サクセサーだそうだ」
果たして、二階堂の続けた言葉は、洋一の直感を正しく証明した。
洋一 :「そ、それをさせない為に、ってか、よ」
GM :二階堂「そうだ。この術を使ったが最後、その魔女は植物と同等の寿命を得るが、その寿命の全てを『ウィッチレルム』のマナ供給のために貪られることになる。この宿命を打ち砕くには……『ウィッチレルム』というマナ欠乏の根本原因を除く以外、方法がない」
洋一 :「それこそ直接……いや、駄目だ……」短い期間でも、ほとりが故郷大事にしてるの、わかるしなあ。「だ、だからって故郷壊したら、ほとりちゃんどうなるっしょ!?」
GM :二階堂「最悪、故郷の記憶を消すこともできる。残りの生命の全てを世界にしゃぶり尽くされるのとどちらがマシか。それに、事はそれだけでも終わらない」
どれだけ言い募っても、二階堂は揺るがない。彼の行動は、よほど強固な確信に裏打ちされているのだろう。
*舞台裏*
ほとり:でも、不自然ですよね。昼間まで一般人だった彼が、どうしてそこまで情報を持ってるのでしょう?
洋一 :だよなあ。問いたださないといけないのは、そこか。
洋一は呼吸を整え、二階堂に問いかける。
洋一 :「……ニカちゃんの言うこと、わかんねぇのはわかったっしょ。でも、なんでニカちゃんがそんな事知ってるんだ?」
GM :二階堂「……こいつが、教えてくれた」
そう言って、二階堂は懐から、琥珀色の結晶体を取り出して見せた。
(――――!?)
それを目にした瞬間、洋一の背筋を、産毛全てを逆立てるような怖気が駆け抜けた。
GM :二階堂は掌の上に結晶体を載せて言う。「こいつが、俺に真実を教えてくれた。そして、俺の願いを叶える力を与えてくれる」
洋一 :「―――だ、ダメだ!! ソイツはダメだにかちゃん!?」
GM :二階堂「……何故だ? こいつはお前が持っているシャードと何も変わらない。俺に力を貸してくれるし、そしてお前のシャードが持つのと同じ、奇跡を起こす力を持っている」
洋一 :「違う! そいつはそんな生易しいモンじゃないっ! もっとどす黒い”吐き気をもよおすような邪悪”だっ!!」
GM :その通り。洋一の直感が告げる。彼の『シャードのようなもの』がもたらす加護は、次のようなものだ。
●≪シャドウガイア≫(キャンペーン)
タイミング:いつでも 対象:さまざま
効果:
≪ガイア≫と同等の奇跡を起こす。この加護を使用した場合、代償として使用者は≪BOSS属性≫を得る。
この加護は≪オーディン≫では打ち消しても使用したことになるが、≪ガイア≫によって「消費されたが使用されなかった」ものとして打ち消すことができる。
なお、この効果は本キャンペーン、本シナリオのためにアレンジされたもの。『ブルースフィア・ワールドガイド』記載のものとは異なる。
覚醒 :やっぱり≪シャドウガイア≫だー!
洋一 :ですよねぇーっ!
ほとり:つまり”≪オーディン≫しても≪BOSS属性≫を得る状態になってしまう”、そして”≪ガイア≫なら『消費されなかったとして差し戻す』となる”ですね。
GM :そういうこと。≪ガイア≫なら、≪BOSS属性≫を発生させずに願いの発動をキャンセルできる、ということね。
ただしその中和行動が、彼にとってどういう行動に見えるかは言うまでもない。……さて、ともあれ。
「……お前が何を言っているのか、わからん」
二階堂は首を傾げる。自分自身では、これの邪悪さを認識できていないようだ。
「俺だってわかるかよ!? でもダメなのはわかるんだよ!」
「……お前は俺以上に混乱しているな」
「混乱してるよ! ただ、今のニカちゃんがヤバい方向突っ走ってるのは確かっしょ!! 簡単にぶっ壊せって、あっちにだって人は住んでんだぞ……!?」
「その前に移民させるしかないだろう。どちらにせよ『ウィッチレルム』はもう保たないんだ」
「保たない保たないって、そんな何もカンも頭ごなしに……!!」
白熱する洋一と対照的に、二階堂の対応は不気味なまでの冷静さを貫く。それは洋一も知る彼の気質の一面ではあったが、しかしこんなにも揺るがない意思の持ち主だっただろうか。
そんな洋一の頭に冷や水を浴びせるように、クスクスという少女の笑い声が差し込んだ。
見れば、二階堂の背後に、小さな女の子の姿と、その長い髪が覗いている。
「え、何……」
声が詰まる。洋一は、その姿に見覚えがあった。
「アウラか。話に割り込むのは感心しないな」
「ごめんね、トシヒコ。でも、お話が先に進まないみたいだから」
二階堂が、困ったような顔で背後に視線に巡らせる。それに形程度の謝罪を返しながら、少女はクスクス笑いのまま、洋一の前に姿を現した。
ふわりと踊る、長い髪。その色は、見るも鮮やかな桜色。
その双眸は、前髪に隠れて見えない。しかしその髪の色、『ブルースフィア』の人間ではあり得ないそれは、確かに洋一の記憶にある色。
彼をクエスターに導き、彼にいつも力を分け与える声の主のものだった。
洋一 :う、うぉぉ!?
GM :「そう。私が行かない限り、全部飲み込んでそれでおしまいなの」と、桜色の少女が言う。前髪で目が隠れていて、表情は窺えない。ただしその風貌には見覚えがある。洋一が本来のほとりの姿を目撃した時、洋一を導いた少女に瓜二つだ。
声も、洋一がシャードを手にしたときに聞いた声、そしてシャードが第四の加護をキミ達に与える時に聞こえてくる声と同じと確信を持てる。
洋一 :「アンタ、オレが落っこちた時の……?」
GM :「久しぶり、ヨーイチ。あなたの活躍はずっと見てたよ」と、桜色の少女は口元だけで微笑む。
「改めまして、こんばんは。私は、アバター。ガイアの、そして聖樹サクラダ・アウローラのアバターだよ」
そう言って、桜色の髪をした少女、サクラダ・アウローラの≪化身≫は、優雅にスカートの裾をつまみ、一礼した。
それからのことは、記憶が曖昧になる。
ただ混乱の坩堝に叩き落とされ、目を白黒させている間に、二階堂に頭を下げられたのは、はっきりと覚えている。
「天野。お前の力が必要だ。……俺と一緒に、中央公園の奥、『ジュライ・シオノ-1』のところに行ってくれ」
何をするのか、と問いかければ、二階堂は「お前達が事実を知り、そして海部を救うために必要なことをしにいく」と答えた。
そして返答を待たず、二人は去って行った。ただ翌朝、中央公園入口前で待っていると、一方的に約束を押しつけて。
桜色の少女を伴って、二階堂の長身がモールの通路に消えるのを見送って、洋一はその場に膝を突いた。
「どうすりゃ……」
去り際に脳裏に焼き付いた、目元を見せないままの桜色の微笑み。真剣そのものの二階堂の請願。
「どうすりゃいいっしょ、これ……!?」
ぐちゃぐちゃにかき回された思考から、どうにか絞り出したのは、そんな呆然とした呻きだけだった。
■ミドルフェイズ 9 シーンPC:ほとり 登場判定:任意
誰かに聞いて欲しかった。誰かに答えて欲しかった。
何が正しいのかわからない。何が起きているのかわからない。
普段ならば、理性と良識が思いとどまらせただろう。しかし、今はどうしても、誰かに話を聞いて、答えを教えて欲しかった。
だから、深夜という時間にもかかわらず、洋一の足はほとりの家に向かっていた。
災禍の中心にいながら、自らは今だに何も知らされぬままであろう少女の元へと。
ほとり:はい。
GM :さて、そんなわけで。何事もなければ翌日に至るまでの準備シーンの予定だが、洋一が相談に来るというならそのシーンとなる。
ほとり:先の戦いで消耗したので、私も休んでいそうですね。
洋一 :さすがにさっきの話をそのままにはしておけないっしょ。相談シーンでいい?
ほとり:わかりました。
洋一 :じゃあ……のっくのっく(ドアをノックする音)。
ほとり:「……?」ドア越しに「はい、海部です」
深夜ということもあり、ほとりは怪訝な顔で応対する。
普通ならば無視しても然るべき状況だが、この家を知っている人間はそもそも、チーム『SHIRANUI』と『ウィッチレルム』関係者だけということもある。
洋一 :「あー、ほとりちゃん? オレっしょオレオレ」
ゆえに、洋一のまるでこの特殊詐欺のような呼びかけにも、ほとりは誠実に対応したのである。
ほとり:「天野さん、どうしました?」ドアを開けます。
ドアの隙間から見える部屋は、生活感のあまり感じられないものだった。
洋一自身、同年代の女性の部屋に詳しい訳ではないが、これほど娯楽の類いの姿がない部屋というのは珍しいのではないかと思える。
台所には食材の欠片などが残されているので、そこで生活しているのは間違いのないことなのだろうが……。
だが、それを指摘できるほど、洋一には心の余裕がなかった。
ほとり:「あ……やっぱりまだ傷、痛みますか?」
洋一 :「あーいや、怪我は大丈夫なんだけどその……なんか、色々、ヤバい」
へろんと前髪を垂らして、洋一はぼそぼそと、『ヤバい』内容を伝える。
洋一 :「ニカちゃんが何か変な力持っててなんか色々知ってて、あ~その……」ちょっと言葉を濁す。
ほとり:「ニカ……二階堂さんが、ですか?」きょとんとして「変な力というと、奈落、ですか?」
洋一 :「奈落、なのかな……ジュライ・シオノほど出鱈目じゃなかったけど」
ほとり:「ジュライ・シオノとは違う……?」それを口にしてからはっとして「い、いけませんね。それなら、覚醒さんにも連絡したほうが、よいでしょうね」
*舞台裏*
覚醒 :お呼ばれするなら登場しますけど、お二人で話したいことがあればお先にお願いします(笑)
ほとり:いえ、こういうところ事務的なので、さっさとSNSで連絡入れてしまいますね(笑)
洋一 :え~~~……(笑)
と言いつつも、話に入るタイミングを伺うためにも、覚醒は少し様子を見ることに。
ほとり:「今、お茶を淹れますから、食卓にでもどうぞ」
洋一 :「あ、ああ、うん……」
ほとり:「――『ウィッチレルム』のお花のお茶ですから、少し天野さんには慣れない味かもしれませんが」
そうして差し出される茶は、透明なポットの中で、注がれた湯を吸い込んで、乾燥させた花がふわりと開いていくものだった。
『ブルースフィア』にも存在する様式の茶だが、洋一が目にしたことがなくても不思議のないものだ。
気を落ち着けるハーブの類いだろうか。ポットから注がれるお茶から漂う芳香が、洋一の混乱する心を僅かなりとも諫めてくれたようだった。
洋一 :「それで……ニカちゃんが言うには、ほとりちゃんもこのままだとマズいっぽい。
このままだと、ほとりちゃんはジュライ・シオノと同じ、ずっと『ウイッチレルム』にマナを送り込むだけの、えーっと、”とれんと”? だかになるって聞いたっしょ」
ほとり:「そう言う、お話でしたか」寂しそうに、呟く。
洋一 :「そういう、って……え、ナニ、知ってた系?」
ほとり:「詳しくは知りません。でも――おばさまがこの前からおかしかったですから。
私がクエスターになったと知っても、喜んでくれている気がしなかったので、悪い事はあるんだろうと思ってました」
ほとりは思い起こす。普段から鉄面皮の伯母ヴァネッサだが、ほとりがクエスターに目覚めたと知った時、わずかに複雑そうな表情を浮かべていた。
今から考えると、クエスターとなった『侵蝕者』が迎える運命を知っていたからこその反応だったのだろう。
つまり、洋一が聞き出してきたこと――≪樹霊変化≫の術の存在と、ジュライ・シオノがそれによって『樹人』に変化していたということも、真実であろうと判断できた。
それを伝えると、洋一は顔を青ざめさせ、「急に真実味増しちゃったっしょ……」と頭を抱えた。
「でもきっと、それが『ウィッチレルム』のためになるなら――イヤでは、ないかもしれません」
そう、ほとりが自分の思いを確かめるかのように漏らした呟きが、更に洋一を打ちのめした。
「ちょ、なんだよそれ! そう言うんじゃっては思ってたけど、樹になるんだよ!?」
洋一が、激昂して机に身を乗り出す。その上の透明なポッドの中で、微かに桜色がかった茶の湯が揺らめき、多弁の鮮やかな花が踊った。
「命は、やがて樹になるものですから」
詠うように、どこか神聖な佇まいで。
「それに、私がそうなって『ウィッチレルム』のマナが増えるなら、病気も減ります。ウィッチレルムにいる私の両親の体にも、いいことです」
そう言うほとりの笑顔は、ポッドの中の花弁のように、儚く揺らめいて見えた。
洋一 :「やがてって、食物連鎖じゃなくて直接はなんねえよ!? ……ああ、いや、その、オレは嫌っしょ!! まだ海だって行ってねえし! もっといろいろ楽しいことだってあるのに! 何でそんな風に笑えるんだよ!?」
ほとり:「そうですね」丁寧にお茶を注ぎながら「きっとそれは私が『ウィッチレルム』の”魔女”だからです」
洋一 :「だからって……だからってなんでほとりちゃんが犠牲にならなきゃいけねえんだよっ!」
ほとり:「なぜ、私が犠牲なんですか?」
さらり、と問いが返された。
洋一 :「何で、って……」(ぽかーん)
ほとり:「生まれてきた使命を果たすことは、犠牲じゃないですよ、天野さん」
本当にまるで、子供にものを教えるように、口にする。
「…………………」
洋一の口が、ぱくぱくと開いては閉じた。喉から言葉を紡ぐことができないまま喘いだ。
洋一 :な、何も返せねぇ……さ、さとりんへーるぷ!
覚醒 :了解しました、登場します(笑)
「へいへいぼーい、こんな時間にれでぃーの部屋に突撃とは穏やかじゃないねー……って」
SNSで呼び出された覚醒が、ほとりの部屋に姿を現したのは、そんな溺れるような沈黙の最中だった。
「茶化してる場合でもない、か」
必要以上に明るく振る舞った覚醒だったが、場の空気を読み取り、表情を引き締めた。
洋一 :ちょっとこう、打ちのめされて、『ずずーん』となってます。
ほとり:「覚醒さん。上がってください。天野さん、二階堂さんについて、詳しく伺っていいですか?」
洋一 :「あ、うん、その……」
呼吸を整え、洋一はぽつぽつと、ほとりの『魔女の樹』の側で起きたことを説明する。
それは、事前の覚醒の『嫌な予感』を裏付けるものであり、予想以上に拗れた状況に覚醒は唸りを上げた。
覚醒 :「うーん……中央公園と聞いた時点で嫌な予感はしてたけど、本当に来ちゃったか……」
GM :覚醒にとって耳新しいこととしては、ジュライ・シオノが≪樹霊化身≫でマナ供給源になっているという話と、あとはシャドウガイア絡みかな?
と言っても二階堂もアウラも、自分たちがシャドウガイアだなんて一言も言ってない、アウラなんて自分がガイアのアバターだって言ってるけどね(笑)
覚醒 :とはいえ中央公園絡みで、何よりレジェンドであるよっちーの感覚を信じると、十中八九シャドウガイアだろうなあと予想は出来ますね……(笑)
GM :そうだね。その判断をしていい。そしてそれを前提に推理を組み立ててもいい。誰がどういう嘘をついているのか。
もちろん無理に推理しなくても問題無くシナリオは進む(笑)
覚醒 :なるほど。なら、こんな感じに話をしていきますかね。
「うーん……そうなると色々とまずいかもしれない。もしニカ君がシャドウガイアに選ばれてしまったダークレジェンドなのだとしたら、出来る限り早く解放しないと……」
洋一 :「車道ガイア? だーくれじぇんど?」
覚醒 :「シャドウガイアというのは、中央公園が奈落の吹き溜まりになった事件の結果生まれた存在で……見た目はこのガイアのアバターにそっくりだけど、まぎれもない奈落だよ」
ほとり:「つまり天野さんの持つような力と同じ性質を所有する奈落、ですか」
洋一 :「……あのヴィジョン、あの能力も、やっぱニカちゃんの……」(悩)
覚醒 :「そう。そしてガイアのアバターに選ばれたレジェンドのように、シャドウガイアに選ばれるのがダークレジェンド。……多分だけど、ニカ君はこのダークレジェンドにされている可能性が高い、と思う……」
覚醒は、二人に彼女が知っている範囲での、ダークレジェンドについての知識を語る。
大筋においては、強い願いを持ち、それを叶える代償に奈落の力を受け入れた者のことだ。シャドウガイアによって才能のある人間が選別されたものであるがゆえに、通常のスペクターに比べてより強い力を発揮することが多く、そして、一度ダークレジェンドとして覚醒した場合、その奈落の力を引きはがすことは極めて困難だという。
ダークレジェンドについて詳しくは『ブルースフィア・ワールドガイド』のP.107からを参照のこと。
覚醒 :「ダークレジェンドから奈落を切り離すのは、正直……かなり難しいって話を聞いてる。急がないといけないかも」
ほとり:「下手をすれば、今までの中で、もっとも危険な相手かもしれませんね」
覚醒とほとりが深刻な顔を突き合わせるのから少し離れて、洋一は一人俯く。
(それでも、ニカちゃんもほとりちゃんを助けたがってる。そこに嘘はない……と思う)
ほとりが受け入れている以上、このまま進めば彼女が犠牲になるのは明らかだ。そして洋一の望みは、ほとりを助けることであることに代わりはない。最初から、洋一の原動力は海辺ほとりという少女そのものだった。
ならば、洋一としての正解は、ほとりを救うため、目的を同じくする二階堂と共に行くことだ。だが……。
(でも、あの感じは、絶対にダメだ。なら、ほとりちゃんを助けること自体が間違いだってのか?)
それだけは、認められない。誰かを助けることが間違いだなんて、そんなことがあってはいけない。
認められないからこそ、答えに辿り着くことができない――。
覚醒 :「……一つ、サトリちゃんの考えを言ってもいいかな?」
洋一 :「うぇ、あえ?」
ほとり:「お願いします。この場で一番詳しいのは、覚醒さんですから」
覚醒 :「明言はしてないけど、よっちーの感じた不快感からして、ニカ君のバックにいるのは十中八九シャドウガイア。ニカ君が何を考えているのかはともかく……”奈落が、本当に『ウィッチレルム』を救おうとしている”と思える?」
洋一 :「い、いやでも、移民させるとは言ってて……」自分でも信じてないけど。
覚醒 :「それはあくまでニカ君の考え、だよね? 奈落の性質を考えると、ニカ君の思いをいいように利用していると考えた方が自然じゃないかな」
ほとり:「二階堂さんに根本的な間違いを教えている。と言う危険ですか?」
覚醒 :「そ。……『ウィッチレルム』の現状に関しては、サトリちゃんも分からないところは多いんだけど。それでも、ニカ君が起こそうとしていることが、この世界の―――ほとりんのためになるって確証は、どこにもない」
ほとり:「あ……ええ、あるいは『間違いは教えていない。しかし真実をすべて話していない』と言う事もありえますね。こうしたやり方なら『問いかけの魔法』でも見破れません」
覚醒 :「うん……ど、どうかな? 何だかんだでこれも全部サトリちゃんの予想でしかないんだけど」(おずおず)
洋一 :「……結局、ともかく行ってみないと判らない、とか?」
覚醒 :「そうだね。やることは変わらない……でも、相手が奈落なら、その言葉に乗るのは危険だってことは、ちゃんと覚えておいてね」
真剣な顔で、覚醒はそう諭す。その振る舞いは、紛れもなく熟練のクエスターである。
覚醒 :「……まあ、サトリちゃんも奈落っちゃ奈落なんだけど!」いつもの謎ポーズ!
”――これがなければなあ”
呆れて肩をコケさせた洋一は、重苦しかった気持ちが少しだけ軽くなったことに気がついた。
その後情報を整理した後、相談シーンで分析を行ったということで、GMは『奈落侵蝕拡大の阻止方法』についての調査を認めた。
覚醒 :理知は弱いですがいざ……出目3!? ダメだー!
ほとり:では……(ころころ)達成値13、成功ですね。
覚醒 :サンクスほとりん……!
ほとり:二人で判定したと言う事は、たぶん覚醒さんの知識を下敷きに、考えてみた手段なんでしょうね。
GM :では、情報を総合して得られた結論は以下の通りだ。
・奈落侵蝕拡大の阻止方法
奈落侵蝕拡大は魔女の契約のバイパスを通じて感染しているため、契約の完全な破棄によって阻止することができる。これには両者の合意が必要になる。
一時的な措置としては、≪契約の枷≫の効果時間中、停止したバイパスを経由する奈落の侵食は停止する。
両者の合意が成立しない状態である場合、奈落に侵蝕された契約者を消去することが、もっとも有効な手段となる。
覚醒 :……んん、これはよもや。いざとなったらサトリちゃんが犠牲になる展開!(早計)
GM :お望みなら!
覚醒 :だが断る!
GM :その意気や良し! というわけで、明日の方針を決めてもらおうか。
1:二階堂と一緒にジュライ・シオノ-1を目指す。
2:勝手にジュライ・シオノ-1を目指す。
3:暑いし寝てる。
覚醒 :3は一体……(笑)
GM :3を選ぶというならそれはそれでGMがんばります……(笑)
ほとり:難しいところですね。
覚醒 :個人的にはシオノ-1とは落ち着いて話してみたくはあるのですが、ニカ君達を放置するのもどうかなと思うところで……。
洋一 :1を選んでも協力するワケじゃないし、先回りして二階堂の関与しない場所での情報を得たい、のはあるなあ。
GM :そうだね。二階堂と一緒に行動する場合、二階堂より早く到着することも遅く到着することもあり得ないけど、ジュライ・シオノ-1と対話するような余裕はなくなるだろうね。
そのかわり、道中は間違いなく楽になるだろう。洋一がもう一人いるようなものだから。
つまり、勝手に行くなら、急いで敵陣を突破する必要が生じる。二階堂より早く現着しなければ意味がない。
あと暑いからって寝てると一日分リソースを回復できるけど、二階堂がどう動くかは……(笑)
と言う感じ。
覚醒 :個人的には、ここは先んじて突入するのが良いかと。やはりシオノ-1との会話はしてみたいので。
洋一 :同じく。
ほとり:そうですね……それなら、奈落対策もあるとは言え、長期戦になるとやはり。道中で覚醒さんの状態がひどくなる危険が高いですし。
覚醒 :……タイマーメールで約束の時間に送信されるようにニカ君宛てに「先行くぜ」メールを設定し、実際の突入はそれより前にすればちょっとは時間を稼げるかなとちょっと思ったり(笑)。
GM :姑息な(笑)
ほとり:”先んじる”ことで時間を短縮して、そのリスクを減らす。と言うのも考慮出来る分、流れとしてはそちらがいいかもしれません。
覚醒 :一応こう、約束を反故にすることに気を使ってのことでもあるんですよ!(笑)
洋一 :正直、行くなら睡眠ルール無いなら、即入ったほうがいいよね?
GM :一応1シーン使って舞台裏休憩とかしてもいいけど、そのくらいかな(笑)
覚醒 :確かに同時突入では道中リスクは軽減されるかもしれませんが、いずれにしろサトリちゃんにリスクが及ぶなら、先に行って対策を立ててから相対する方が良いでしょうね。
そんなわけで、一行は二階堂に時限式で連絡だけ入れて、自分たちは先んじるということに。
出発の前にGMが許可したので、【HP】の回復処理と、一回の購入判定を行うこととなった。
結果、ほとりが≪ヒール≫で全員の【HP】を回復。そののち洋一と覚醒がMPポーションを調達しようとしたが、失敗。ほとりが≪高等遊民≫の効果を得てこれを入手し、洋一に手渡した。
「うちのお茶は、魔法力の回復にも役立つんですよ」
少し自慢げに、ほとりがそう笑った。




