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第二章:ミドルフェイズ (1)人知らぬ封鎖領域

■ミドルフェイズ 1 シーンPC:洋一 登場:全員自動


 七瀬中央公園……過日の『エキドナ戦役』の決戦の場となった場所だ。

 世界中から集まったクエスター達が、闇の太母『エキドナ』と戦い、これを辛くも撃退した。そのことから『エキドナ戦役』と呼ばれているが、その傷跡は『ブルースフィア』でも数少ない奈落噴出点として残された。

 その時の影響から、この公園には色濃い奈落が漂い、生ある者が近寄ることはほぼ不可能。ほとんどの一般人からは、存在していたことすら記憶から失われている。

 実際、今回仕事で来るようにと言われるまで、洋一自身も存在を忘れていた。かなり大きな公園だというのに。

「……言われてみれば、ここに公園があったんだよなあ……あれ、何で覚えてなかったんだろう」

 子供の頃、伯父の天城太陽と一緒に、桜を見に来た記憶が蘇る。

「これだけの数の記憶偽装処理が可能。と言うのも、凄いお話、ですね」

 どこか強ばった顔で、ほとりが呟いた。


GM :さて、中央公園付近の駐車場に車を止めて、公園の入口あたりに集まっている状況となる。

ほとり:地図で見るとかなり大きいですよね。七瀬中央公園。

GM :実際来てみると、その周囲に本来存在していたはずの保育園、商店、その他諸々も姿を消し、ちょっとしたゴーストタウンになってしまっている。見た感じは普通の公園だが、中にまるで人の姿も、気配も見当たらない。

 それもそのはず、よく見ると公園の周囲は、いくつもの結界子で囲まれ、現実世界から隔絶されている。

洋一 :「人の居ない街ってマジやべぇ……ホラー映画みてえっしょ」周囲キョロキョロ。中にいる奈落獣でも見えるのかしら。

GM :外にいる間は見えないね。あと奈落獣はよその世界ローカルの種別だ(笑)


 紛らわしい名称だが、奈落の怪物『奈落獣』については『メタリックガーディアンRPG』を参照のこと。


覚醒 :「色んな所が手を組んで対処してるからねえ。ここは色んな意味で特別なのかな」

洋一 :「と言うかその……駅ナカだか駅チカってそんなにすげえバケモノだったんだ?」

ほとり:「エキドナ、ですね。『ウィッチレルム』にも名前が伝承に残っているほどの、大奈落です」

覚醒 :「色々な奈落の化け物の母でもあるからねえ。彼女を倒した後でも、彼女の『子』が今でも活動してたりするし」

GM :四谷「そして、その影響で発生した『シャドウガイア』も忘れてはいけません」とフォロー。

洋一 :「うへぇ……それで、そんな場所で何すんだっけ?」

GM :四谷「皆さんの任務は、ここから出現する奈落クリーチャーの発生原因の特定です。おそらく外縁部に存在すると考えられますが、手が出せないほど深層部にあるようならば即座に撤退してください」

ほとり:地図を見て「外縁と言っても、なかなか簡単ではなさそう、ですね」

洋一 :「うぃーっす……一息ついたら海行かねえ? 海」(お気楽顔)

覚醒 :「そういうの、フラグって言わない?」(笑顔)

ほとり:「夏の間に一息つけるんでしょうか」

洋一 :「だ、だいじょうぶだといいなあ! 水着とか見たいし!!」

覚醒 :「まあ、不吉なフラグはサトリちゃんが引き受けて葬祭もとい相殺するからダイジョブダイジョブ† ともあれ危険そうだったらすぐ撤退するからそのつもりでね」

GM :四谷「その時は、運転手は引き受けましょう。……では、私は付近で待機しています。何かあれば回収に向かいますから、連絡を」

ほとり:「よろしくお願いします。四谷さん」

覚醒 :「現場に近いし、そっちも気を付けてね!」

洋一 :「んじゃ……行くっしょ!」精一杯素人なりに気をつけてるつもりで突っ込みます。

GM :というわけで、四谷のロケバスは公園からちょっと離れた場所に移動していく。

覚醒 :「チーム『SHIRANUI』、しゅつどー!」



■ミドルフェイズ 2 マスターシーン


 三人が、中央公園の中に消えた、その直後のこと。

「……七瀬中央公園か」

 物陰に身を隠していた二階堂俊彦は、原付のメットを片手に、公園の入口に目を向けた。

「そういえば、随分前から、あること自体忘れていたな」

 一人呟きながら、三人の後を追おうと足を進める。しかしまっすぐに公園入口に向かっていたはずの足は、気がつくと鋭角に向きを変えてしまう。結界の作用だが、そのようなことを普通人の彼が知る由もない。

 だが、それでも彼は、自分の振るまいが異常であると気づいた。

「……どういうことだ、これは」

 それが異常であると、自分が目的地にたどり着けないということを認識できる段階で、既に二階堂俊彦は普通人の領域を踏み越えつつあったのだ。

「くそっ……これが……『見えない』ということなのか」

 二階堂は、首を傾げて苛立つ。

 その時、誰かが囁いた。

『ここは危ないよ』

「えっ?」

 二階堂は、顔を上げて、目を懲らす。

 そこにあったのは、桜色の髪をした女の子。どことなく神秘的なトーガを纏った、十代前半くらいの風貌の少女である。

『見えない人は、早く逃げないと、危ないよ』

 少女は繰り返す。非現実的な色を纏って、目を見せず、何を考えているのかもわからない風体で、囁く。

 二階堂は、胸の内で言葉を練る。言いたいことはいくらでもある。

 『見える』とは何なのか。ここはどうなっているのか。少女は何者なのか。洋一とほとりはどこに向かっているのか。

 そんな疑問は――


 ドスッ


(な………?)

『……もう、遅いけど』

 疑問は、口から紡がれることはなく。

 渦巻いていた胸の真ん中を、背中から不可視の矢が幾重にも刺し貫いて。

 痛みもなく、苦悶もなく、ただひたすらに全てが冷たくなっていく中で、二階堂は。

『ごめんね、私は、あなたに選択肢をあげられない』

 そう呟く少女の、まるで下弦の月めいた笑みを網膜に焼き付けて、そして――。



■ミドルフェイズ 3 シーンPC:覚醒 登場:全員自動


 一歩踏み入ると、世界は色を失っていた。

 木々はねじくれ、空気は淀み、建物は崩れ、生命の気配はまるで窺えない。道は延々と続き、ねじれ、かつての地図はまるで役に立たない。

 深い霧に閉ざされた空は、その先にあるものを見通させない。霧の合間にわずかに覗く硬質なシルエットは、そこに『何か』が浮かんでいることを伺わせるが、外縁たるここからでは詳細を推し量ることはできない。

「粘つくなあ、やっぱり……」

 覚醒が、体にまとわりつく何かを振り払うように手を動かす。『ダークワン』……奈落に汚染された体である彼女は、この地の奈落から何らかの悪影響を受けているのかもしれなかった。


GM :というわけで、公園の内部を進んでいくシーンだ。

洋一 :「……げ、ゲームのダンジョン?」

GM :道は薄暗いが、そこら中が薄ぼんやりと光っているのか、光源の有無によってペナルティが生じるようなことはないね。周囲に漂う色濃い霧によって、視界はかなり制限されているけれど。このために、本来の公園の地図は役に立たない。

ほとり:「妖精を出します」と空っぽのランタンを用意しますね。『妖精光球』を入れて中で待機してもらっておきます(装備している演出)

GM :懐かしい演出だ。キミ達の行く手を、ランタンの白光が照らし出す。それでも、視界はそう遠くならないけれど、気分的には随分楽になったはずだ。

ほとり:「『ウィッチレルム』の死んだ森も近い雰囲気ですが、ここまでのものは私も見たことがありませんね」

覚醒 :「それだけエキドナが凄まじい存在だったってことなんだろうけどね……うう、粘つく」

GM :それも、やはり奈落に汚染された場所だね。マナ欠乏によって生命力を失ったという程度ではあるけど。ここはそんなレベルではない、濃密な奈落が溢れて、そこら中を侵蝕している。

 あるいは、『侵蝕者』がどうにかしていなければ、『ウィッチレルム』はとうの昔にこうなってしまっていたのだろう。

洋一 :「何だ本当にここ……」(きょろきょろ)


 七瀬中央公園は、『ブルースフィア』でも珍しい、濃密な奈落の噴出した場所だ。

 公式の見解では、『エキドナ戦役』は人類勢力の勝利であったと言われている。しかし実態としては「結果としてエキドナは滅びたが、戦術的には敗北」だった。

 数多く集められたクエスターはエキドナの圧倒的な力によって追い詰められたものの、分け与えられた≪ガイア≫の力を束ね、どうにかエキドナを打ち砕くことに成功したのだという。

 だが、その破片は各地に飛び散り、更にその瘴気を祓う力も失われた。

 その結果が、この光景だ。七瀬中央公園は奈落の橋頭堡と化し、今も神秘組織はその隠蔽と、いつ噴き出すかわからない奈落の軍勢への対処に追われている。

 チーム『SHIRANUI』が請け負っている役目もそれだ。この場から、奈落の怪物が外に溢れ出すのを阻止する。そのために、その前兆現象かもしれない奈落クリーチャーの大量発生に対処している……。

 ――そんな残務処理のような仕事に、少年少女を駆り出したくはないのだけれど。

 表情には出さないまま、覚醒はそう内心で嘆息する。そんな瞬間のことだった。


GM :ああ、そうそう。覚醒、中央公園に入ったところで、ちょっとキミの心臓がどきりと動く。

覚醒 :動いているのだろうかとは思いますが動いてるんでしょうね! どきり!

GM :どっちでもいいよ。どちらであれ不整脈だ(笑)

 何かに呼ばれるように、何かの気配を受け取ったかのように、心臓が動く。ほんの一度、疼くように。

覚醒 :「(……何だろう。しおのに反応したのか、奈落に反応したのか……)」心臓の辺りに触れながら。

GM :濃厚な死と冒涜の香りが呼んでいるような気がする。その「なんとなく」な方向は、地図上の『ジュライ・シオノ-アインス』の魔女の樹が植えられたとされる、公園の東部とだいたい一致している。

覚醒 :「……どっちにしろ『彼女』、か」その方向を見据えて。

洋一 :「カノジョ?」

ほとり:「心当たりがあるんですか?」

覚醒 :「……」少し口ごもった後「……この公園にも、あるみたいなんだ。『ジュライ・シオノのレルムシード』が」

洋一 :「ジュライって……あのよく判んねえ女の子の?」

覚醒 :「今回の調査対象と関係あるかは分からないけど……ね。今回は安全の確保が難しいから、深入りするつもりはないけど」


 覚醒は小さく頷き、洋一の問いかけを肯定する。

「……もしかしたら、二人にもまた、無茶をさせてしまうかもしれない」

 それは、もしもチャンスがあれば、力を貸して欲しい、という要望だった。


洋一 :「……あー、いや。付き合うっしょ、もちろん!」(ぐぐっと拳を握る)

覚醒 :「……ありがとう、でも無理はしないでね。それに、今回のメインのお仕事はそっちじゃないから」ふんわり笑顔で。

ほとり:「彼女の、ジュライ・シオノさんのシャードがあるとしたら、ここでしょうか?」

覚醒 :「分からない。でも、資料によるとここのレルムシードは『アインス』……名前的には、一番最初の、じゃないかなって」

ほとり:「なるほど……なら、私も手がかりがあるとすれば、確認してみたいです」


 ほとりは頷き、自分が負っているシャードのクエストが【ジュライ・シオノのアルシャードを捜す】というものであることを明かした。


覚醒 :「ふむむ……不思議なクエストだねえ」何故本人ではなくシャードなのか、というところでちょっと考える顔。

GM :では、そのあたりで状況を動かそう。覚醒が先導する道の先から、わざわざわざと何か黒く歪な獣の群れが近づいてくる。


「よっちーほとりん、ちょいストップ」

 最初に気づいたのは覚醒だった。少年少女二人を制止し、一歩前に出る。

 見れば、周囲にわだかまる靄の合間に、黒々とした塊がにじり寄ってきているのが、わかる。

 恐らくは鼠、猫、犬、蝙蝠などの都会に棲息する動物の成れの果てだろうか。このところチーム『SHIRANUI』が戦ってきた相手が、ことさらに大規模寄り集まって押し寄せてきている。

 だが、それだけではない。どうも妙なものが混じっている。

「何だあれ……人間!?」

 洋一がうわずった声を上げる。

 なるほど、確かにそれは、剣や槍で武装した人間にしか見えなかった。


GM :人間の形をしているだけで、明らかに人間ではない。奈落の塊が人の形をとっただけ、という感じだね。装備は中世風、円型の盾に鎖鎧、それに槍という風な、それなりの文明圏の装備を模倣しているように見える。

ほとり:「どうやらああ言う外見の奈落、みたいですね。すこし相手をしづらいですね」

GM :そういったものたちが、キミ達に向かってゆっくりと前進してくる。数は……ちょっと多そうだ。モブグループが複数、という雰囲気に見える。

洋一 :「に、人間じゃない……ん、だよな」胸に手を当て、深呼吸。

GM :というわけで、そのまま迎撃するなら、ヒトガタは何か雄叫びのような声を上げて、獣たちとともにキミ達へと殺到してくる。

覚醒 :「気を付けて――いくよー!」抜刀!

ほとり:クロスボウを構えてランタンを開きます。

洋一 :「――ぶっ飛ばせ! 『ライジングフォース』!!」斜めに傾いで指突きつけて。

GM :『――――W*tc*!!』

 しゃがれてかすれて聞き取れない声で、奈落達は雄叫びを上げる。明らかな憎悪と悪意を燃え上がらせて――


 というわけで、早速のミドル戦だ!

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