第一章:エンディングフェイズ 不知火は蒼く興る
GM :というわけで、エンディングフェイズだ。最初は洋一がいいかな。
洋一 :あいあい。
GM :場所やシチュエーションの希望があるならどうぞ。GMからは、人払いした海浜公園で、スマキにしたTTTをどぉーんと睥睨してるような感じを提案しておく感じ。
洋一 :実際それしかなさそう?無駄に格好いいポーズで!
■エンディングフェイズ 洋一の場合 登場:自動成功・任意
戦いは、終わった。
ジュライ・シオノ・ノイツェンは消滅し、レプラカーンのTTTは無事にほとりが捕縛している。これをほとりが連れ帰り、あとは『ウィッチレルム』の司法……『ヴァルプルギスの夜』に任せる事になるのだろう。
二階堂と五代、そして幻影迷宮に巻き込まれていた人々は、フューネラルコンダクターのエージェントが保護していった。必要に応じて記憶操作を施し、後は日常へと帰されるのだという。
ピカッと光る催眠装置で意識を失った二人が、フューネラルコンダクターの車に運び込まれる様を見送り、洋一は改めて感じていた。
――彼らと、自分の生きる世界は、いつのまにかこんなにもずれてしまっていたということを。
そして同時に感じることもある。
自分たちの戦いによって、彼らの命と尊厳を守ることができたのだ――ということを。
GM :そんなわけで、幻影迷宮を脱出した洋一は、捕縛したTTTをスマキにして、その前でどぉーーーんと無駄に格好いいポーズで睥睨している。
「……ぷるぷる、オイラ悪いレプラカーンじゃないよ」
身動き一つ取れない状態で、ひきつった笑顔でTTTは洋一を見上げている。
洋一 :「ほとりちゃんに感謝しておけよTTTォ~? お前が! 月までぶっとばなかったのは! 全部あの子のおかげだからなぁ~!」と言いつつも、内心ほっとしている。
GM :TTT「エインセルの鬼ばーちゃんの姪っ子が? へー……ちょっと意外かも」(きょとん)
TTTの疑問は、ほとりは動物とか妖精に対して優しいけれど、それを洋一に強く主張するかどうかっていうと、ちょっと疑問があった、という意味合いである。
洋一 :「ま、向こうに行ったらどうなるかはオレも知らないんだけどな」
GM :TTT「……アニキ! 是非オイラを舎弟にしてこっちに置いといてくれませんかいやマジで。さすがに奈落に踊らされて暴れたとか、鬼ばーちゃんとかのお仕置き怖すぎる」
洋一 :「……諦めろTTT、一応悪い事は悪いっていうか……ま、まあ、お仕置き、だろ? そのくらいは諦めてよ。ほら。太陽も海も見れたし」
GM :TTT「まあなー、オイラもさすがにやりすぎたと思うし、コッチに迷惑かけないっていうのがウィッチレルムのお約束事だしなー。はぁ……わかったよタイヨーと海とすげぇ面白かったショーテンガイの思い出を胸に十三階段昇るよ……」いつの間にか縄を抜けてとぼとぼと。
洋一 :「……こ、殺されたりはしないようにオレからも頼むよ、うん」罪悪感。
GM :TTT「アニキ素敵! さすがタイヨーの子!」
洋一 :「……太陽の子ぉ?」
GM :TTT「だってアニキの服、タイヨーと同じだぜ?」と、背中のマークを指さしている。
洋一 :「あー、うん……イカすだろ?」に、と笑って背を見せる。ややダサい。
GM :TTT「スゲーかっけー! 強そう!」
洋一 :「へっへっへ……ま、お守りだからな。これ」やんねーよ? と笑って。
GM :TTT「えー、ケチー」なんて言っていると、TTTの足下にそろそろ見慣れ始めた魔法陣が浮かび上がる。
ほとり:「そろそろ時間ですよ」と制服姿で現れます。
洋一 :「あ、ほとりちゃん。サンキュ、見送らせてくれて」にへらー、とダサい柄のコートで。
GM :では、「うん、それじゃさよなら、ヨーイチのアニキ。向こうに行ってもオイラアニキのこと忘れないよ」とTTTは何故か、魔法陣の外から中の洋一に向けて手を振っている。
ほとり:「太陽はもう、満喫しましたか? ……私たちの世界の人間だと、ちょっと光が強すぎるから、時々眩しすぎるんですけれどもね」
洋一 :「忘れられるかっての。あんだけ好き放題やってよ~……またな、っしょ」笑って手を振る。
ほとり:「では、天野さん、ちょっとおばさまに挨拶してきますので、しばらくこちらはよろしくお願いします」と一礼します。……猫みたいにTTTの首を掴んでぶら下げて(笑)
洋一 :「へ、へーい……ほとりちゃんもまたな」手を振る。
魔法陣の光の中に、TTTとほとりが消えていく。
TTTを手放すわけにもいかないので、ほとりは目礼だけを洋一に送る。そんな仕草も可愛い、などと感じてしまうのは、まさに恋は盲目という奴なのだろうか。
「そーだ、アニキ。オイラの名前忘れんなよ。回る回るよ糸車、オイラの名前はTom Tit T………」
そんな名乗りが終わる前に、TTTとほとりの姿は、この世界から消え失せた。
「……ほんっと、最後までしまんねえの」
くすっと笑って、洋一はその場に背を向け、歩き出した。
夏の始まりを告げる太陽を映し、洋一の背中に縫い込まれた銀糸の太陽が、きらりと輝いた。
■エンディングフェイズ ほとりの場合 登場:不可
結局、レプラカーンの処遇は、引き起こした事件の割りには穏健に済ませられた。
元々、『ウィッチレルム』の法は、妖精達の引き起こすトラブルについて寛容である。たとえ対話が可能でも「そういう生き物である」という前提としての理解がなければ、寿命も価値観も何もかもが異なる生き物との共存は難しい。
だがそれでも、今回ばかりは内容が内容だけに、『処刑』の可能性もあった。それがたかが自分が請願したというだけで許されたことに、ほとりは安堵とともに薄ら寒さを感じていた。
後になってほとりは述懐する。自分は……クエスターとなった『侵蝕者』は、自分が思っていたよりも遙かに巨大な権限を与えられていたのだろうと。
GM :そんなわけで、TTTが物干し台の上で三日三晩陰干しの刑が決まった後、ほとりはヴァネッサ伯母さんと面会している、という形かな。
ほとり:はい。
GM :ヴァネッサ「ご苦労様、ストランド。偶然とはいえ、きちんと『ブルースフィア』の奈落事件を解決してみせたようですね」
ほとり:「お褒めにあずかり光栄です。ヴァネッサおばさま」
GM :どの程度まで事態を報告している? 具体的には、覚醒が真名を取り戻したあたりとか。
ほとり:思うところがありますので、ジュライ・シオノさんが再び現れた事、その事による事件が起きた混乱などについては説明しますが、覚醒さんが真名を取り戻したことなどは話しません。
覚醒 :面倒な事態になりそうですからねえ。ここはサトリちゃんからもほとりんに頼んでたということで。
GM :了解。すると……ヴァネッサは言う。「『侵蝕者』という立場は、必ずしも私達魔女にとって快いものではありません。しかし、その枷の上でも己の役割を全うしてみせたこと、賞賛に値します」
ほとり:「その事なのですが、おばさま。一つご質問、よろしいでしょうか?」
GM :ヴァネッサ「……どうしました?」
ほとり:「家族であるおばさまにしか、恐ろしくて聞けないお話です――『レルムシード』は、どこから産まれるのですか?」
GM :ヴァネッサ「……そうですね。すでにあなたも『侵蝕者』でありクエスターでもある。……その断片に触れる資格はあると言えるでしょう」
ほとり:「もしかすればそれは、私のようにクエスターになった『侵蝕者』の、魔女の樹からではないのでしょうか?」
GM :「………」
ヴァネッサは背を向け、自らの部屋から外にある火時計塔に目を向ける。幾重にも炎の環が浮かび上がり、時を刻んでいるようにも、別の何かを刻んでいるようにも見えるものだ。
ほとりはそこで言葉を切り、敬愛する、しかしどこか畏怖をも感じる伯母をじっと見つめ、その返答を待つ。
やがて、ヴァネッサは深呼吸をするように深く息を吐き出し、そして口を開いた。
GM :ヴァネッサ「シャードがある程度以上に成長したとき、シャードとクエスターが一つ上の階梯に成長する『サクセション』という現象があるのは、知っていますか?」
ほとり:「……知識としては、です」
GM :ヴァネッサ「では、そうして新たな階梯に昇ったシャード……『アルシャード』と呼ばれるものが、時折『アバター』と呼ばれる分身を作り出すことは?」
ほとり:「そこまでの知識はありませんでした。初耳です」
GM :ヴァネッサ「『アバター』に、『アルシャード』は何らかの『使命』を与え、たとえば新たなクエスターを導かせたり、サクセサーにより大きな力を与えるといいます。そしてそれは元となった『アルシャード』と密接に繋がり……相互にマナを補いあっている」
ほとり:「相互に……?」今の自分はシャードにほとんど力を与えられるだけですので、そこはピンときませんね。
GM :ヴァネッサ「たとえば『ブルースフィア』の大いなる存在≪ガイア≫は、いくつもの化身を派遣し、さらにはその力を受け継ぐクエスターにシャードを与えることで、その衰えつつある力を補っているという学説もあります」
ほとり:「ああ――それは、向こうで聞きかじった記憶があります」
GM :ヴァネッサ「……もし、『アバター』を生み出すことに特化した『サクセション』の形があったとしたら」
ヴァネッサは言葉を切り、じっとほとりの目を見返す。
GM :ヴァネッサ「それはきっと、マナを得るためにもっとも効率的な形の一つとなるでしょうね」
ほとり:「そして『何人も、同じ人物のアバターが現れ続ける』としても、不思議ではない。ジュライ・シオノさんがそうであるように」
GM :ヴァネッサ「……あなたの階梯で開示できる情報はここまでです」ヴァネッサはそう言って、じっと、ほとりに問いかけるように目を見つめる。
ほとり:「充分な答えでした。感謝いたします。おばさま――つまりは今後も、彼女は現れるかもしれない。その覚悟だけは、出来ましたから」
GM :ヴァネッサ「結構。……そうそう。二つ、伝えることを忘れていました」
ほとり:「はい。うかがいます」
GM :ヴァネッサ「一つ。クエスターとなったあなたの功績に伴い、あなたの親族のうち数名を、マナの密な施療院に入院させる特権が認められました」
ほとり:「――はい」
GM :ヴァネッサ「特権を行使しますか? 序列を引き上げるのみに留めることもできますが」
これは、専門治療施設のベッド空きや、ドナーの待ち順などに近いものだ。
もちろん、マナ欠乏症患者の専門治療施設に余裕があるわけもなく、特権の行使には冷酷なリスト操作が付きまとう。
ほとり:「……出来れば、少しだけでも、二人をよろしくお願いします」これはそう言う取引なのだと、納得します。
GM :ヴァネッサ「よろしい。ではそのように。……恥じることはありません。あなたはそれに見合う代償を支払っているし……」
そう言って、ヴァネッサは少し逡巡するように言葉を切る。
「もう一つ。そろそろ、『ストランド・カニングフォークの樹』の座標を、きちんと確認して記録しておきなさい」
ほとり:「それは、どうしてですか?」当たり前にやっているとは思いますけど。
GM :ヴァネッサ「……そろそろ、あの樹を、あなた以外の人間が捕捉することが困難になってくるでしょうから」
ほとり:「――心しておきます。『ジュライ・シオノの樹』もそうして記録されていたのですか?」
GM :ヴァネッサ「ええ。でも、今となってはその座標に赴いても、誰もあの樹を視ることはできません。……強くなりすぎた『魔女の樹』を、誰も視ることはできないのです」
ほとり:「わかりました。こちらに来る都度、必ず確認しておきます」
GM :ヴァネッサ「結構。……ストランド、あなたの今後の活躍に期待しています」話は終わり、という風に席を立つヴァネッサだが、まだ聞く事があればどうぞ。
ほとり:「……最後に一つ、いいでしょうか? 天野洋一さんの事です」
GM :ヴァネッサ「……あの少年がどうかしましたか?」
ほとり:「私になにかあったとき、彼については、どうなさいますか? この世界の事も知っていますし、マナの波長のこともあります。『ウィッチレルム』にとって、放置しておける人間とは、思えません」
マナ波長の一致。それは、ほとりに施された魔術的制約が、洋一にも同じように作用する可能性が高いということだ。
すなわち、もしも覚醒がほとりを≪真名の枷≫によって束縛した場合、洋一も同時に魔法の力を封じられる……ということでもある。
「…………」
ほとりに言われて、ヴァネッサは少し思索するように視線を宙に彷徨わせた。
その頬にふっと、穏やかな小さな笑みが浮かんだような気がしたのは、ほとりの気のせいだったろうか。
「あなたの双子です。あなたが決めなさい。私達の世界にとって、彼にそれ以上の意味はありません」
次の瞬間には、ヴァネッサは毅然とした様子を再び纏い、姪っ子を穏やかに見返してそう告げた。
「あなたと彼で、意味を決めなさい」
ほとり:「わかりました――では、『ブルースフィア』に行って参ります」
GM :ヴァネッサ「……あの銀色に輝く太陽に、よろしく」
そう言って、返事を待たずに、ヴァネッサは部屋から退出していく。
ほとり:「はい、おばさま」
ヴァネッサの背中を見送って、ほとりは続く言葉を紡ぎかけて……それを喉の奥に飲み込んだ。
かわりに、人の気配のなくなった執務室の窓から、『ユプサリア・ルキオ』の火時計を見上げる。それは『ウィッチレルム』の時を刻むと同時に、『何か』を測定しているのだと言われている。
見上げるその指標は、ほとりが前に見たときよりも、明らかに火勢を弱めていた。
ひやりと、腹の底に不吉な気配が這い上がる。
『私になにかあったとき』。ほとりは自分の言葉を唇で再現する。それは探りでもあった。そして果たして、ヴァネッサの表情は、その瞬間かちりと一層強ばったのだ。
火時計を見上げる。天球の弱々しい光の中で、ぼんやりとゆらめくそれを見つめながら、ほとりは先ほど飲み込んだ言葉を小さく吐き出した。
「はい。……私の悲願は『ウィッチレルム』とともにあります」
■エンディングフェイズ 覚醒の場合 登場:自動・任意
記憶を取り戻したからといって、何が変わるという訳でもない。
謎はまだまだ山積し、本当の珠来しおのの行方は、未だようとして知れないままだ。
それでも仕事はやってくる。いつも通りのクリーチャー退治。まったく人使いの荒いことだ。
だが、そんな日々も、従前と違うこともある。
スクーターで丘を上がってくる、未熟ながら、心に強い煌めきを宿した少年。
断崖の端から、遠くに輝く青い海を見つめる、鮮やかな色の少女。
そんな二人との出会いと、共に歩んでいく、そんな日々のこと。
GM :さて、そんなわけで数日が過ぎた。今日も、覚醒のユニットに出動任務が下される。
内容は、七瀬川上流に作られたダムに出現している、水棲奈落クリーチャーの討伐だ。
覚醒 :水棲奈落……。
GM :というわけで、ダムの上で待ち合わせ。ついでに貰ったダムカードなど片手に、覚醒は他の二人の到着を待っている感じだ。
このダムからは、遠くに七瀬市の様子を見下ろすことができる。ちなみにこのダム、最近制作される七瀬市のご当地キャラにも反映される予定のようだ。
洋一 :ななっしーとか?
GM :いえ、巨乳ツーテールのななこちゃんです(マジ)
ほとり:公式で七瀬市のゆるキャラ、設定されましたからね(笑)
●ななこちゃん
ゲーマーズ・フィールド誌 19th Vol.5掲載シナリオ『ご当地キャラ・マスト・ダイ』にて登場した、七瀬市ご当地キャラ。着ぐるみも存在する。
覚醒 :「なーんだか特撮映画みたいな状況だねー。まあこのお仕事ってそういうものだけど†」ダム湖を前に、何故かビキニ水着のサトリちゃん仁王立ち。
GM :四谷「……健康的、と言って良いのでしょうかね」肩をコケさせて、マネージャーの四谷が苦笑している。
覚醒 :「やーん褒めても何も出ないよよっちゃーん† 出ても人魂くらい?」と笑顔で返す。
洋一 :んじゃそこで「飲み物買ってきたっすよ―」べぽべぽべぽ、と原付で登場。「……ってうわをぅ」さすがに美人のビキニには赤くなって目を逸らす(笑)
覚醒 :「おお、よっちーさんくす! よっちゃんお金払っといてネ!」……って、こっち(洋一と四谷のこと)もちょっと紛らわしい!(笑)
GM :四谷「わかりました」
四谷は、苦笑して洋一に財布から千円札を渡す。
その手の動きがちょっとぎこちないのは、その身体を蝕んだ奈落の残滓であるということを、今の洋一なら感じ取ることができるだろう。
洋一 :「……あ、さんきゅっしょ」一瞬それを察してぎこちなく。
GM :四谷「……気にすることはないですよ。なるべくしてなったことですし、なったからには楽しむと、嫌と言うほど覚醒さんには教えられていますからね」と、元リーダーは大人の笑みを見せる。
……そう、洋一は覚醒の過去で、彼を見たことがある。そして彼が『プログラム』のリーダーであり、唯一の生き残りである人物だと、今ならわかる。
つまり、覚醒の仲間と、そして覚醒本人の死も、紛れもなく『本当にあった過去』であり、奈落との戦いは、そんなにも簡単に人が死んでいくものなのだと、わかる。
背筋に、シャツがべったりと張り付いた。それは暑さ故か、それとも別の……例えば戦慄や恐怖、そういった感情によるものだったのだろうか。
洋一は視線を覚醒に向ける。彼女は、もう何年も戦っているベテランだ。そして自分自身の死すら体験している。
それでもなお、あんなにも明るい。その精神性は、どういう経緯で培われてきたものなのだろうか――。
そんな思考は、『モデルスタイルの女性の水着のお尻』という事実の前に、視線と一緒に儚く押し流された。
ほとり:「どうして、覚醒さんはそのような格好なんでしょう? お腹、冷えませんか?」
覚醒 :「あ、そっかそっかほとりんは水着とか知らなかったんだっけ。夏になったら泳ぎとか色々教えてあげないとねー」
ほとり:「え」
ほとりの目が、丸くなった。
ほとり:「う、海で泳ぐと言うのは、誰がやってもいいものだったのですか」
洋一 :「は、ハイ……いや泳ぐのはだれでもできるっスよ?」
覚醒 :「んー、体質的問題とかそーいうのがなければ基本的にはねー。サトリちゃんは油断すると膨らんじゃいそうだけど」
ほとり:「水資源ですから、許可がいるものだと、ばかり……」
GM :四谷「私の見立てで良ければ、二人にも水着を用意しますが? そして覚醒さん、せめて水中花に留めておいてください」
覚醒 :「よっちゃんマネージャーも段々返しがうまくなってきたネ! いいよいいよー†」謎ポーズでびしっと。「あとほとりんの水着はサトリちゃんが見立てるから」真顔で釘を刺す。
洋一 :「あ、え、えーっと。きっと似合うっしょ」想像してでれーん。
GM :四谷「…………」苦笑して肩を竦めている。
「さて、そろそろ作戦決行時間のようです」
四谷が時計を見て、そう告げた。
「皆さんの活躍を期待するとともに……怪我のありませんように」
そう言いながら、いそいそと後方に退いていく。奈落に侵蝕され、彼の体は思うように動かない。それにクエスターでない彼に、奈落と真正面から戦う力はない――そういうことになっている。
それに合わせたかように、ダムの中から *ザッパーン* と水しぶきを上げて、奈落オオサンショウウオ的なものがジャンプしている様が見えた。
――いや、もはや生態は明らかに別のものだが。
ほとり:「みなさん、よろしくお願いします」
洋一 :「うっへえ、気持ち悪ィ……ッと、それじゃかっこよく決めるっしょ! 『ライジングフォース』!」傾ぐ。
覚醒 :「ほいほい! 『SHIRANUI』のお仕事のお時間ですよー† ……あ、ユニット名決めたの! 『SHIRANUI』! どうだろ?」と刀を構えながら二人に尋ねます。
洋一 :「知らぬい?」
ほとり:「なんでしょう? それは」
覚醒 :「そそ、『不知火』。炎と」よっちーを指さす。「海と」ほとりんを指さす。「死体で人魂!」自分を指さす。
洋一 :「最後が不吉な!?」
GM :四谷「困ったことに、既に登録が完了しています」肩を竦めて。
ほとり:「ええっ!?」
覚醒 :「大丈夫! 伝承だと龍の神様の灯火ともされてたから縁起良いよ! 『世界を平和に導く灯』って見れば、クエスターっぽくもあるじゃない?」笑顔でウィンク。
洋一 :「え、えーっと……いいのかなあ、これで」(きょろきょろ)
覚醒 :「あー、嫌だったら変更するよ? 勝手にやっちゃったのは先走り過ぎたなーって反省もしてるから……」
GM :四谷「まあ、そのあたりの言い合いはまたの機会に。……後ろ、来ていますよ」
言い合いをしている三人の背後から、奈落の怪物が大口を空けて迫ってくる。
洋一 :「い、いやまあ良く判らないし格好よさ気じゃあるけど……行っと、くっしょ、それで!!」顔赤くして逸らして、敵に振り向いて。
ほとり:「いいんじゃないでしょうか」相手の様子を観察して、クロスボウに使う矢を選びます。
覚醒 :「採用不採用はまた考えておいて! とりあえず今は……希望の灯を点しにいくとしましょうか!」眷属の人魂を呼び出しつつ刀を構える!
GM :「GHAAAAAAAA!!!!!!」
怪物の≪自己領域≫が、赤黒く世界を染め上げる。
血の色の世界を、三条の光が切り裂いていく。
魂火を従え、屍が走る。それを追い越し、錆色の闘士が駆け抜ける。その行く手を見守るは、魔女の番える魔法の鏃。
咆吼が轟く。だが畏れはしない。心強い仲間が側にいるのだから。
錆色のヒトガタが、拳に炎を滾らせ、魔獣より更に高らかに吠え猛る。その後を追って駆ける覚醒の耳朶に、誰かが囁いたような気がした。
『ほら、生きてりゃ良いこと、あっただろう?』
見れば、刀に映るのは魂火の蒼。
かつての仲間の魂たるそれを横目でちらりと見やって、覚醒は口元にふっと笑みの形を浮かべた。
――そうかもね。
そんな心の呟きを、誤魔化すようにぺろりと唇を湿らせて。
そして、『不知火』の名を得た三人の物語は、続いていく。
■『ヴァルプルギスの侵略者たち』 第一章 レプラカーンの迷宮 了
以上で第二話、第一章終了。
この後、幕間に世界魔法:ウィッチレルムや、キャラクターデータの紹介などを行った後に、第二章の連載を行っていきます。
遅々とした歩みではありますが、どうぞよしなに。




