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第一章:ミドルフェイズ (1)闖入者

■ミドルフェイズ1 マスターシーン


 オープニングフェイズが終了し、PCはそれぞれにコネクションを取得する。

 覚醒は洋一とほとり両方に[幼子]を。ほとりは洋一に[貸り]、覚醒に[秘密]。

 洋一はほとりに[慕情] 覚醒に[信頼/疑念]を取得した。

 ……待て、それはシステムが違わないか(笑)



 洋一たちが『ブルースフィア』に帰還し、三々五々解散してしばし。

 『ウィッチレルム』と『ブルースフィア』の時間の流れの不均衡さ(何しろ『ウィッチレルム』で外泊したつもりが、『ブルースフィア』ではせいぜい数時間しか経過していないのだ)に目を白黒させる洋一の影から、するりと小さな何かが遊離した。

 それは物陰にわだかまり、何かに引っかかっているのかしばらくばたばたと蠢いていたが、やがてぽんっと気の抜けた音を立てたかと思うと、一匹の小人の姿を現した。

「ひゃっほーい!! はるばる……来たぜ青い世界!」

 快哉を上げて、小人……すなわち、妖精レプラカーンのTTTトートートーが樹を駆け上がる。

「うおー、空も、陸も、水たまりも、全部広い! ピカ玉一匹もいやしない! でっかい! すっげぇ、これが『ブルースフィア』か! やばいよやばいよ身体が焼けるよ!」

 大声で騒ぎ回るTTTに、不審げに通りすがりの子供が樹上を見上げる。幸いにしてまだ姿を視認されてはいないが、マナの秘匿を心得た術師が知れば、卒倒しかねない大胆さである。

「よーし、遊ぶぞひゃほーい!!」

 レプラカーンは、上機嫌で植樹の上を駆け抜けていく。

 その在ることを、そしてその行く手を知るものは、未だ潮風を除いて他になかった。


*舞台裏*

覚醒 :騒ぎになる予感しかしない!

ほとり:レプラカーンってこう言う妖精ですからね……(笑)

洋一 :取り敢えず再起不能リタイヤさせねえと

GM :洋一、もしかしてオラオラですか。

洋一 :オラオラします(目標

GM :OMGオーマイガッド! まあそれはともかく……ミドルフェイズに入った上でのマスターシーンなので、アイテムの調達などがあればどうぞ。


 このマスターシーンの舞台裏で、≪高等遊民≫のほとりがMPポーションを調達。【MP】で毎度苦労している洋一に手渡した。

 『ウィッチレルム』からのお土産だったのかもしれない。



■ミドルフェイズ2 シーンPC:ほとり 登場判定:任意・目標値9


ほとり:はい。

GM :さて、『ウィッチレルム』に赴いてから数日。キミ達は普段通りの日常を送っている。

 ほとりにとっての日常というのは、つまりは『侵蝕者』としての日常だ。

『ウィッチレルム』から戻った翌日、ヘクセンから新たな『レルムシード』が届いた。今度はジュライ・シオノではない、別の名前のついた『レルムシード』だ。

ほとり:この世界に支障をもたらさないように、マナが強くて、お裾分けしてもらっても問題ない場所をちゃんと探さないと……わりと大変ですねこれ(笑)

洋一 :しかも、あまり辺鄙なところに作ると通勤時間が。

GM :学校は、前回のことがあるので上からも避けるように指示されている。なので、その近くでマナが強めで、迷惑がかからなくて、ほとりの好みにあう場所ということで……海浜公園とかを提案するけど、どう?

ほとり:職場とプライベートでの憩いの場所が同じ場所になるのは、ちょっと、切ないですね……(笑)

GM :生々しい話が骨身に染みる(笑) では、ショッピングモールとかどうかな。多分港湾部の埋め立て地に新しい郊外型モールができあがってると思う。前の話で覚醒がライブをしていたところ、になるかな。

ほとり:いいですね。そのまわりに何本か樹なども植えられているでしょうし。

GM :では、そこにしよう。覚醒の監督もあり、いざってときのために洋一も呼びつけて(これは多分ほとりではなく覚醒がやるだろう)、発芽の儀式。これらは滞りなく終了し、現在は樹の生育をゆっくり見守るフェイズに入っている。

ほとり:よかった(ほっとした顔)。実は前回、わりと不安だったんです。全部一人でしたから。そして本当に事故が起きましたから……(笑)

GM :前の時に奈落が噴き出してきたのは、今のところ原因不明。これについては『ヴァルプルギスの夜』も本格的に原因調査に乗り出している。

 ほとりに関しては、今のところは「クエスターとして『守護者』の指導のもと、力を蓄えよ」という指示と、「『侵蝕者』として、『レルム』の育成と監視を行うこと」というのが任務となっている。

ほとり:では地面にしっかり植え付けたついでに……ちょっと上の方に一本だけ、お呪いをしておこうと思います。演出なんですが挿し木を一本だけ。

GM :ふむ、どんな感じに?

ほとり:万一異常があった場合わかりやすいように、私の魔力のこもった枝を、ちょっと付け足しておくのです。

GM :なるほど。OK、そのあたりは普通にやっててもおかしくないね。

 ではそれを前提にシーンを作って行こうか。


 七瀬市海浜地区のショッピングモールの一画、イベントホールに面した小さな庭園に紛れて、ほとりの新たな『魔女の樹』は植えられた。

 手順は、以前のそれと同じ。地面に『レルムシード』を植え、発芽の魔法をかける。成長した樹はショッピングモールに集まる人々の感情の動き、マナの流れを吸い込んで『ウィッチレルム』へと送り込んでいく。

 人々の生活に影響が出ないように。万が一にも、また奈落を呼び込むことなどないように。不安を噛み殺しながら育てた『魔女の樹』は、今回は幸いにして何事もなく成長し、穏やかに梢を揺らしている。

「うまくいっているはず……この大きさ、ちょっと、怖いですけれども」

 おずおずと幹に触れて、ほっと息を吐き出す。技術的には大丈夫だと自信があっても、実際に奈落災害を引き起こしたという負の実績は拭いがたい。

 なにしろ、先日の『レルムシード』が奈落に堕ちた原因は、未だにはっきりしていないのだから。


洋一 :ここで、登場してみるっしょ(ころころ……)


 出目は8で、洋一はほとりへのコネクションを持っているため、達成値+2で14となった。成功である。


洋一 :よしよし。じゃあこう、スタバ的なフォーチューンのお店で二人分のドリンク買って持ってきます。こう、樹の育成の間は離れてたとかで。

「ほとりちゃーん、そろそろ休憩とかどう?」

ほとり:「ああ、ちょうど確認が終わったところです。ありがとうございます……これ、なんですか?」不思議そうにプラコップの中身を見つめて。

洋一 :「ん? フラペチーノ。ちょっとあっちーしさ。後ほら、やっすいけどこないだのサンドイッチのお礼、的な?」

ほとり:「フラペチーノ」呪文みたいな名前の飲み物ですね。

洋一 :味はお任せします。自分の分はコーヒーフラペチーノで。「あ、えーっと、シェイクみたいなもん?」シェイクも多分判んないよなあ(笑)

ほとり:では季節のオススメ、ストロベリークリームフラペチーノ。


 洋一に手渡された、ほんのりピンク色の冷たいカップをまじまじと見つめて、ほとりはもう一度「フラペチーノ」と名前を呟く。『呪文のよう』と形容したが、実際注文のための文言がすっかり呪文化しているということまでは、ほとりの想像の及ぶところではない。

 一口、ストローに口をつけてみる。つるりと口の中に滑り込んでくる冷たい感触。

 ほとりの目が、丸くなった。

「あ。凄いです。果実が入ってるんですね……」

 ストローから口を離し、口元を手で隠して感想を述べる。

「あれ? なんだか一口目と二口目で、味も違うような……少し魔法素材でも使っているんでしょうか」

 改めて、もう一口、二口。変幻自在な未知の味覚を堪能する。

 そんな少女の姿に、心の中で、洋一は快哉を上げた。

(買ってきてよかったァ……ッ!!)

 誰が、咎められようか。誰が、笑えようか。

 握ったままのコーヒーフラペチーノの表面に結露した水滴が、ぽたぽたと洋一のズボンを濡らしていたとしても。


洋一 :少し見とれてぽやーっとして、はっと正気に戻る。「いや、魔法は使ってないんじゃないかな、ほらえーっと、カガク?」

ほとり:「科学、ブルースフィアは凄いですね」凄く感動しています。

洋一 :「でしょでしょ、あこっちも飲んでみる?」自分のまだ手を付けてない方を。

ほとり:「あ。いえ。それは失礼に当たりますので」ちょっと慌てて、赤くなって。

洋一 :「え? あ、いいいや別に下心とかじゃなくてですね!?」(挙動不審)

ほとり:「下心!?」

洋一 :「あああいや何でもないです何でもッ!!??」(顔真っ赤っ赤)


*舞台裏*

GM :なんだろう、この甘酸っぱい空間……(笑)

覚醒 :いいデスねー青春デスねー†(ふんすふんす)

GM :だがこのままでは許せない……もとい、話が進まない。ここらでお邪魔虫の登場としよう。


GM :その時、横から聞き覚えのある声がした。

「ん、どうしたんだ天野。それにそっちは海部さんか……何をしてるんだ?」

 そういう声の主は、通りすがりのクラスメイトの二階堂だ。クールなバカの方。

洋一 :「あーいやにっちゃん!? なななな何にもないデスヨッ!?」

ほとり:「ふらぺちーのと言うのを、教えてもらいました」

GM :二階堂「……ああ、もしかして、お前達、デートk」というところで、物陰から飛び出してきた何かが、二階堂の襟首を引っ張った。


「ぐぉっ!?」

 ぐいっと襟を引っ張られ、長身の二階堂が後ろにのけぞった。

 軽く咳き込みながら肩越しに振り返れば、そこにあるのはぐるぐる眼鏡でそばかすの女子の顔。クラスメイトの五代に他ならない。

「……何をする五代」

「うるさい、ちょっとこっち来なさい」

 有無を言わせず、五代は二階堂の襟を引きずっていく。

「苦しい、襟を引っ張るな」

「黙れお邪魔虫。あはははは、失礼しました、ごゆっくりーー」

 呆気にとられて見送る洋一とほとりに、にこやかに手を振りながら、五代とそれに引きずられた二階堂は、モールの通路の影へと消えていった。


覚醒 :神出鬼没にも程があるなあ五代ちゃん……(笑)

GM :確認しにいかないとわかりませんが、物陰で五代ちゃんに二階堂は叱られてます。

洋一 :「……ナニやってるんだあの二人」(ぽかーん)

ほとり:「仲が良いんですね。あの二人」


 二階堂と五代の二人が消えていった角を、洋一達は呆然と見送る。所在のなさに何となくほとりと顔を見合わせれば、目に飛び込んでくるのは澄んだ虹彩異色の双眸。

 とっさに視線を逸らし、明後日の方向に彷徨わせる。ほとりに怪訝な顔をされるが、二つの理由で構っている余裕はなかった。

 一つは、もちろん意中の少女の瞳に見惚れかけた自分を誤魔化すため。

 いま一つは、そうして彷徨わせた視線の先に、とんでもないものを発見してしまったためだった。


GM :と、いうところで、唖然とする君達の視界の隅に、やばいものが飛び込んでくる。

洋一 :お?

GM :見上げたモール上層の手すりの上を、なんか小さな人形みたいなものが駆け抜けていく様が見える。

 レプラカーンだと、洋一にもほとりにも見てわかっていい。


「……とととととととととと」

 洋一の喉から、妙な声が漏れた。回廊を指さして、隣のほとりに異常を訴える。

 果たして、ほとりは怪訝な顔をしつつも洋一の指先に視線を沿わせ、その先に示すものの姿を捉える。

「……あ」

 まろび出たのは、自分ながら間抜けな声。

「あ」

 状況を咀嚼できない。ぽかんと開かれた口を隠す掌の隙間から、見慣れた、馴染んだ格好の小さな妖精が見える。

「ああ、なんで、どうして!」

 楽しげにケラケラと笑いならが駆け抜けていくそれは、紛れもない、妖精レプラカーンだった。


洋一 :「(ごくん、げほっ)TTT……!?」

ほとり:「もしかしてあの時の、ですか?」

GM :その通り、帽子の色や細かな特徴から、TTTだと確信できる。「ママーお人形が走ってるー」「あらまあ、最近のロボットはすごいのねえ」とか親子が会話してるあたり、まるで認識阻害とかやってない!

洋一 :……見えてるっ!?

GM :ほとりはもちろん認識していい。ウィッチレルムの妖精がこの世界にいるというのは、それだけで『とても厄介なこと』であり、侵蝕者はこれを捕獲しなくてはならないと。

ほとり:「これは……追いましょう。なんとかしないと、大変な事になってしまいます!」

GM :というところで、ここで洋一にクエストが発行される。【レプラカーンを取り押さえる】だ。シャードもほとりを助けなさいという意図を示している。

洋一 :はぁい。全く悪い子だ。オラオラだ。「あぁ、もう……急ぐっしょっ!」

GM :では、二人が駆けだしたところでシーンを閉じよう。



■ミドルフェイズ2 シーンPC:覚醒 登場:任意・判定目標値9


GM :さて、覚醒の日常だ。ライブをしていてもいいし、オフを堪能していてもいい。場所はショッピングモールの近くということになる。

覚醒 :仕事だ仕事だお仕事だー! ということでモデルのお仕事してます。

GM :モデルね。背丈がしっかりしてるから見栄えはよさそうだ。ちょっと血色が良くないから室内撮影が主とかになりそうかな?

覚醒 :ですね。モールの近くにスタジオがあることにします。

GM :カメラさん「それにしても覚醒ちゃんはスタイル変わらないねー」とか言いながらシャッターをぱしゃぱしゃ。ジャンルは何がいい?(笑)

覚醒 :「えーそうですかー? 褒めても何も出ませんよー†」とか言いながらポーズを決めるゴシック系ガール(超本格派)で。夏向けゴシック。

GM :カメラさん「”ウェヌス”がゴシック系の新作出したはいいけど、この季節に着こなせる子少ないからねー。覚醒ちゃんのお陰で助かっちゃうわ」


 ちなみに”ウェヌス”というのは、基本ルールブックP.312掲載の公式NPCアフロディテが経営するファッションブランド。

 ガイア時代からリプレイシリーズを読んでいると、色々思い入れが生まれるNPCの一人だ。


覚醒 :アフロディテ手広いですねえ……(笑)。「いえいえーサトリちゃんも“ウェヌス”の服を着れて嬉しいのでー†」

GM :カメラさん「あの人自分もタッパと筋肉あるもんだから、本気のゴスは着こなすのも難度高いのよねー。それじゃあと三枚、ポーズ取ってー」

覚醒 :「私も結構身長あるつもりだけど流石に本職さんには敵わないですからねー」と言いつつポーズチェンジ。

GM :カメラさん「はい目線くださーい」 ぱしゃ、ぱしゃ。「じゃラス1ー」 というところで、カメラを『何か』が横切る。

覚醒 :「はー……い?」返事しようとしてそれに気づきます。

GM :カメラさん「……ん?」 首を傾げて目をぱちくり。ファインダーを覗いていたので何が通過したのかは見ていないようだ

GM :覚醒が視線で追いかけると、カメラさんはまだ気づいていないが、大鏡の前でゴスな服をめちゃめちゃにまとってポーズを決めてるレプラカーンの姿がある。

覚醒 :それは思わず『げ!』って顔しちゃいますね……(笑)


 レプラカーンは大鏡の前で、全身にめちゃめちゃに服をまとって……というよりも巻き付けて珍妙なポーズを決める。両手を上げ、下げ、まるで変身でもするつもりなのかという風情に気取った姿勢を見せたところで、自分の姿の背後に、覚醒の姿を認めた。

 肩越しに振り向いたレプラカーンと、覚醒の視線が交錯する。

「……あ、やべ」

 次の瞬間、レプラカーンはまさに脱兎の如く、覚醒の前から逃げ出した。


覚醒 :あ、ちょっと! と声を上げようとして……「カメラマンさん! そろそろ大丈夫でしょうか!?」とちょっと慌てつつ確認を! 声をかけることで目線をこちらに集める意図もあり!

GM :カメラさん「あ、うん、じゃあラスト一枚よろしく!」レプラカーンが逃げていくのにも気づかず、カメラさんは無情にも撮影継続を要求する(笑) 幸いその声かけのお陰で、周囲はレプラカーンに気づかずに済んだようだ。

覚醒 :気付かれなかったことにちょっとほっとしつつ、控えているはずのマネージャーのよっちゃん(四谷さん)にアイコンタクト。『あちらの件発生、後のフォロー頼む』的な。

GM :四谷さんはアイコンタクトで頷く。


「すみません、ちょっと次の仕事が早回しになったみたいで。この一枚取ったらすぐに上がらせてよろしいですか?」 

「えー、しょうがないわねえ」

 四谷の取りなしに、カメラマンは不承不承という顔で頷く。この後雑談などに付き合わせ、あわよくばその場面の写真も撮ろうというような魂胆もあったのだろうが、今回ばかりは、覚醒にそれに付き合っている余裕はない。

 ラストワンが撮影され、四谷が目配せする。あとはレプラカーンを追いかけるだけだ。


覚醒 :「ごめんなさーい†」とカメラマンに謝りつつ、よっちゃんに小さく感謝のブイサイン。「ではお疲れ様でしたー!」と言いつつ追いかけます。多分服は着替えないといけないでしょうけれど……。

GM :いざというときのための時空マント。もちろんまじめに着替えるならそれでもいい(笑)

覚醒 :時空マント超便利! ということで着替え時間短縮で即座に追いかけます(笑)。「騒ぎになる前に捕まえないと……! 何でこっちに来てるか考えるのは後回しで!」

GM :では、そうして走り出したところでシーンエンド、と言いたいけど、その前に。

覚醒 :む?


 時空マントからいつもの服を引っ張り出し、即座に着替えた覚醒がモールに飛び出すと、回廊の向こうをレプラカーンが飛び跳ねながら走り去っていく姿が見えた。そちらに向けて、人混みをすり抜けて駆け出す。

 その時、覚醒の視野に、決して見逃してはいけないライムグリーンの輝きが見えた。

(え……!?)

 思わず足を止め、目を懲らす。人混みの向こう、回廊に据えられたベンチに、幼い少女が腰掛けている。

 白い帽子を目深く被り、広い鍔の下でソフトクリームを舐めている。それだけなら、目を惹く要素はさほどない。

 帽子と襟元の間から、ライムグリーンに輝くおさげの髪が覗いていなければ。

 くいっと帽子の鍔が上げられる。虹彩異色の瞳が、覚醒を挑発するように見返した。


覚醒 :「……!?」思わず二度見ですねそれは!

GM :目を懲らして見つめようとすると、その姿は人混みに紛れて消えてしまう。

 ただ、覚醒が想像しているように、その顔立ちは、明らかにちっちゃくなってはいたものの、珠来しおののそれに間違いはない、そう思えた。

覚醒 :「……またか! またなのか……!」と声を殺して唸り、そのままショッピングモールに急ぎます。

GM :では、そこでシーンエンド!



■ミドルフェイズ3 シーンPC:洋一 同行者:ほとり 覚醒は任意のタイミングで自動登場


GM :さて、レプラカーンを追いかけた洋一とほとりは、ショッピングモールをあちこち引きずり回されたあげく、屋上の小さなイベントホールに辿り着いた。

 イベントホールは、普段は特撮ヒーローとか着ぐるみヒロインショーとかやってるんだけど、今日はたまたま休みのようで、人気はない。

洋一 :「ぜひゅー、ぜひゅー……さ、さんっざん走り回されオエッ」(ぐったり)

GM :イベントホールの真ん中で、レプラカーンのTTTは、そこらで盗んできたらしいフローズンヨーグルトなどをぺろぺろ舐めて優雅にしている。

「あれ、ヨーイチのアニキじゃん? どしたのこんなとこで?」

洋一 :「……」めらめらと怒りを燃やします。「へ、へへっ。怒りってのはよぉー……完ッ全に行き過ぎると寧ろ笑えて来るってのは本当だよなぁ~~……」

GM :「……あれ、アニキ様、怒ってらっしゃる?」TTTの笑いが引きつった。

洋一 :顔を上げ、首を傾げてガン付ける。け、結界など誰か張ってくれませんかね(笑)

ほとり:「レプラカーンはときどきこうなっちゃうから……もう」認識阻害魔法の演出として《シールエリア》を使います。

GM :では、人払いに成功した。そして結界が張られたことで、この場所は覚醒にも把握できるようになる。

ほとり:そのマイナーで「妖精の粉」を装備して、イニシアチブプロセスで使用。《アローキャスター》の効果で、射程を伸して、レプラカーンを空中に浮かばせます。

GM :ほう、いきなりそうきたか(笑)

 「お、おわっ、鬼ばーちゃんの姪っ子! やめろーオイラを吊すなー」と、TTTは空中でばたばたしている。イニシアチブが回ってくるまで降りられない(笑)


 実はこの時点でデータの扱いに間違いがあり、魔法攻撃ではない魔法装備である「妖精の粉」の射程は《アローキャスター》で伸ばすことはできない――が、ここでは気づかなかったし、さほど問題はないのでそのまま処理している。


洋一 :「お、サンキュ、ほとりちゃん。さぁって」ゆっくりと近づいて、その上からさらに《インビジブルハンド》で拘束したい。『ライジングフォース』の手で掴む演出。

GM :OK、どうぞ(笑) ズァッと出てきた『ライジングフォース』に、レプラカーンは吊される。

洋一 :「――――捕まえろ! 『ライジングフォース』ッ!!」片手で顔を覆って指差して指示。そのままこっちに曳航。

GM :TTT「な、なんかすっげぇヤバい予感……やめろーヨーイチアニキーぶっ飛ばされるぞーオイラがーー!!」

洋一 :「安心しなTTT……」

GM :TTT「え?」

洋一 :「オレとっ! 『ライジングフォース』がッ!! テメーを月まで”きっちり”ブッッッ飛ばすッッッ!!!!」(ドドドドド) あ、どうか止めてください(笑)

GM :TTT「ぎゃびーーー!?」

覚醒 :「はーいよっちーそこまでそこまで」そこで登場、パンパンと手を打って洋一を制止します。

GM :TTTが全身の毛と帽子まで逆立てて怯えてたところで、覚醒に気づいて「あ、さ、さとりん助けて!! オイラまだ死にたくないよ!!」

洋一 :「っと、覚醒ちゃん? イヤでも……」

覚醒 :「よっちーの『ライジングフォース』でブッ飛ばしたらこの子タダじゃすまないからねー。気持ちはわからないでもないけどすとっぷすとっぷ†」

ほとり:「覚醒さん! ……あの、なんとか捕まえはしたんですけど、この世界だとこの子、どうすればいいのか、私、わからなくて」

洋一 :まあこー、取り敢えずどうやってコイツ元の世界に返すかって話?

覚醒 :「そうだねー……」実際のところどうなんでしょう?

GM :一応、『守護者』の立場とフューネラルコンダクターとマナの秘匿の立場からすると「殺しちゃっていいんじゃね?」になるね。それを覚醒が選ぶかどうかは、まるで別の話だけど。

 連れ帰るのは、ほとりが責任を持てば可能だ。それを保障する権限が、『守護者』にはある。

覚醒 :なるほど。「んー、基本的にはこう……スパッと?」親指で首元をついっとするジェスチャー。

GM :TTT「ぎゃびーーー!?」

洋一 :「こ、殺す!?」

ほとり:「ああ。魔法が人に知られてはいけないと言う事は、そうなってしまうんですか」


 青ざめる当人(TTT)と洋一に比して、なるほどという顔で頷くほとり。

 覚醒は、そんな三人を安心させるようににっかりと笑って見せた。


覚醒 :「とはいえそれは夢見が良くないからねー。何とかウィッチレルムに送り返す方法があればそれで行きたいんだけど。穏便に穏便に†」

洋一 :「そ、そーっしょ、うん、いや殺すとかまでいきなりうん」

覚醒 :「いわゆる亜人さんとかは隠れ里があったりするけど、そういうのは昔からのものだからねえ。昨日今日『来た』子の扱いはそうなっちゃうんだよねー。サトリちゃん一応『そっち側』だから一応肩入れしちゃうわけで」

GM :TTT「そ、そーッスよヨーイチアニキ! 妖精はもっと大事に! オイラ反省してるから! ちょっと青い世界を見てみたかっただけなんだ! 青い空とか、青い水たまりとか! まだタイヨーは見つからないけど!」

洋一 :「……太陽?」空を見て。

ほとり:「……太陽なら、空に、あります。よね?」

洋一 :「うん、ねぇ?」ほとりと顔を見合わせて。

ほとり:(私も最初、太陽について確認したなんていいづらい)

覚醒 :「まあ向こうの感覚だと分からかったのかもねー」空を指さして。

GM :では、TTTが「いや、天球じゃなくて、こう……」と言うところで、割り込むようにして……。


 その瞬間、ガラス窓を粉砕するような音を響かせて、結界が、砕け散った。


ほとり:「え」

覚醒 :「!?」

洋一 :「え、へ?」

GM :結界の破片に紛れ、ステージの舞台袖から何かが飛んできて、TTTの手元にすぽっと収まる。一見すると『レルムシード』だ。

 ……ほとりははっきり見覚えがある。『ジュライ・シオノ』の『レルムシード』と、完全に同種の種子だ。

ほとり:「『レルムシード』! どうしてこんな場所に」

GM :TTT「ほへ?」ときょとんとして、手の中に収まった『レルムシード』をしげしげと眺めるTTTだったが。

覚醒 :「! それを放して!」と叫びますが間に合わないですかねえ。

GM :もちろん(笑) その瞬間、『レルムシード』の真ん中に、禍々しい瞳が開く。

洋一 :「な、なんかやべ……!?」『ライジングフォース』の拘束が緩む。

GM :その瞬間、赤黒い触手が『レルムシード』……というより、『アビスシード』そのものとなったそれから溢れ出して、TTTを絡め取った。

洋一 :「TTTッッッ!!?」

覚醒 :「『アビスシード』……!」時空鞘から番傘を取り出して構え。可能なら結界を張り直したいです。

GM :残念ながら間に合わない。これから展開される結界の方が、はるかに出力が大きい!!

「……ちょうどいいから、使わせてもらうね」

 そんな、幼い声が舞台袖から聞こえてくる。麦わら帽子から溢れるライムグリーンの髪。十歳くらいに見えるが、その虹彩異色と髪の色は、珠来しおののそれそのもの。

ほとり:「そんな……倒した、はず、なのに」

GM :「これで、シナリオが一つ、繰り上がるかな。頑張ってね。覚醒、ほとり、それから、オマケ君」十歳くらいの珠来しおのがにっこりと、邪悪な笑いを浮かべて。

覚醒 :「しおの……『別の』しおのってこと……?」

GM :「あ、ア、アニキぃぃぃぃぃーーーーーーー!!」とTTTが悲鳴を上げると同時に、世界はまっ白な結界に包み込まれる。

覚醒 :「しおの……ッ!」

GM :キミ達の意識はそれぞれ遠のき、広く広く白い結界はショッピングモールを包み込んでいく……シーンエンド!! 

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