イントロダクション
『ウィッチレルム』。
蒼き世界『ブルースフィア』に近接する、魔女と魔法と妖精が今も息づく小さな世界だ。
その小さな世界を存続させるため、『ブルースフィア』から『マナ』を盗む侵略者がいる。
その侵略者を監督し、監視し、行いを律する役割を担う、世界の守り手がいる。
そしてそれらと関わり、未来を切り拓く可能性の担い手がいる。
これは、そんな『侵蝕者』、『守護者』、そして『探求者』の三者が紡ぐ、二つの世界を救済する物語。
アルシャード・セイヴァーRPG 『ヴァルプルギスの侵略者たち』
――そして蒼き世界と魔女の世界に、また奇跡が生まれる。
■はじめに
――コンテンツが足りない、そう思った。
オンラインTRPGサークル"セイヴァーズ!!"を立ち上げてからそろそろ四年(2016年現在)。ただ遊ぶだけでなく、何かしら面白い事をしてみても良いのではないかと思った。
そんなことを考えていた2015年4月に、「富士見TRPGONLINE」での『アルシャード・セイヴァーRPG』リプレイの投稿受付が始まった。
もちろん投稿を受け付けるからといって、すぐにコンテンツが投稿されるわけではない。リプレイ収録というのは、準備はもちろんテープからの起こしや編集など、案外必要な手間は多い。そんな苦労をしてまでリプレイを投稿する人間がどれだけいるだろうか……と考えた。
そこで思い至った。オンラインTRPGというのは、そもそもログが半ばリプレイのようなものではないだろうか。
もちろん編集の手間はかかるが、少なくともテープからの起こしは必要はない。行動の記録はすべてチャットログに残されている。うまくすれば、ツールを一つ通すだけでリプレイの体裁を整えることすらできるかもしれない。
そんな甘い見通しから、この企画は始まった。
●キャンペーン『ヴァルプルギスの侵略者たち』
この文書は、オンラインTRPGサークル"セイヴァーズ!!"において実施された『ヴァルプルギスの侵略者たち』というキャンペーンTRPGのプレイ風景を、読み物として編集したものだ。
今回のキャンペーンのコンセプトは、次のようなものを目指している。
・なるべく手軽にリプレイを執筆してみる
・複数のチームによる同一キャンペーンゲームの実施
・とりあえず、やってみようじゃないか
このコンセプトを満たすため、今回のキャンペーンは日取りを変えて「チームA」と「チームB」に分けて、同一のシナリオをそれぞれのチームで遊ぶ、という想定でいる。
実際にできるかどうかはわからないが、もし両方できなければこの文書は誰の目にも触れることはないし、片方だけが成立したならこの部分は削除されていることだろう。
つまり、この文書をあなたが見ているということは、すべてうまくいって二つのリプレイが完成した、そんな素晴らしい未来が訪れたと言うことになる。
この文書は、『ヴァルプルギスの侵略者たち』のプレイグループ「チームA」のセッション風景を、「チームA編」として編集したものだ。
もし時間があれば、「チームB編」にも目を通してみて欲しい。同じシナリオを別の人間がプレイした場合、遊び方がどのように変化するものなのか、なかなか普通は見られない光景を楽しむ事ができるだろう。そうであることを願っている。
●TRPGリプレイとは
そもそも、TRPGとは何だろう。そこから説明が必要だろうか。
幸い、この文書はウェブ掲載を前提としており、ウェブを参照できているならばWikipediaなどの検索も簡単だろう。なので、ここではTRPGそのものの定義については触れないことにする。
もしかすると本文書が製本される機会があるかもしれないが、その時はこの直後あたりに必死になって文章を取り繕っている筆者の姿を見ることができるだろう。なぁに、それは全てが最高にうまくいってしまった場合のことだ。苦労してくれたまえ、未来の自分。
ここでは、TRPGリプレイというものに関し、筆者の考え方を述べたいと思う。
TRPGというのは、漠然とした遊びだ。「ごっこ遊びの延長」という人もいれば、「きわめて創造的な交流ゲーム」という人もいる。中には、「世界征服の手段」と言ってる人間もいるかもしれない。そういう考え方も「アリ」だろう。共有できるかどうかはおいといて。
筆者が主張したいのは「あくまで他人とともに楽しむ遊びである」ということだ。
他人を相手にする遊びであるからこそ、そこには他人との意思疎通や配慮、世界の共有が必要になる。お互いが信頼し、尊重しあっているからこそ、そこにできあがるセッションは「いいゲーム」となる。
もしこの先に続く文書……アルシャード・セイヴァーRPGリプレイ『ヴァルプルギスの侵略者たち』が面白いとしたら、それは筆者の編集力もさることながら、何よりもこのゲームを共に楽しんだプレイヤー達と、ゲームマスターである筆者の間で「いいゲーム」が作り出されたということだ。なにしろ「いいゲーム」でなければ、この文書があなたの目に触れているはずがないのだから。
ちなみに、もしもつまらなかった場合……おそらくそれは筆者の編集力の問題だろう。そうだとしたら極めて残念なことだが、筆者達が楽しんだ「いいゲーム」の価値はまったく損なわれることはない。是非これに懲りることなく、別のリプレイを読んだり、別のゲームに参加するなどして欲しい。
『TRPGリプレイ』というのは特殊な読み物だ。遊びの過程を編集したものなのだから、全てを空想で作り出すのは難しい。
つまり、リプレイが存在するということは、それが作り出される過程で「いいゲーム」が楽しまれたということなのだ。
そんな遊びの風景を空想しながら、この先を読み進めてみて欲しい。TRPGという遊びの楽しさを、一部だけでも伝えることができるならば幸いだ。
●レギュレーション
今回のキャンペーンは、次に示す条件でメンバーを募集し、キャラクターを作成した。
読み物としては余分な情報が含まれているが、これは「実際に長期間にわたってキャンペーンセッションを行うための参考資料」としての意味合いで掲載している。
▼募集要項
・毎週月曜日、時間固定による分割セッションとして実施
・メンバーは3人固定。(キャラクターの掘り下げに力を入れるためと、予定調整のリスクの低減のため)
・募集はハンドアウトに対して、演じたいキャラクターイメージを添えて応募。その内容からGMがプレイヤーを選出
▼キャラクター作成
・市販されているすべてのアルシャード・セイヴァーRPGのルールブックおよびサプリメントを使用する
・"セイヴァーズ!!"独自のローカルルールおよびローカル汎用特技を使用する
・プレイヤーキャラクターはクエスターレベル3で作成し、追加経験点5点の使用を許可する
・セッション終了ごとにフルリビルド(クラス構成を含むすべてのデータの組み直し)を認める
"セイヴァーズ!!"ローカル汎用特技については、付録として別途掲載する。
なお、これは2015年5月現在の仕様であり、この文書が読者の目に触れる頃には廃止、あるいは細部に変更が加えられているかもしれない。
"セイヴァーズ!!"ローカルルールについては、特殊な処理をした部分で逐次解説を行う。
●最後に
さあ、前置きはこんなところでいいだろう。
長々と面白くもない文章に付き合ってくれてありがとう。付き合ってくれない人も、大変結構。面白いのはここからなのだから。
――お待たせいたしました!!
これより『ヴァルプルギスの侵略者たち』キャンペーンの開幕だ!!




