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王国では王女様が目を覚まし、国中が喜びに満ち溢れていた。
誰かが、呪いを掛けた魔法使いを倒してくれたのだ。
しかし、誰が魔法使いを倒したかは、知られる事はなかった。
王女が目覚めた後、誰も国へと帰って来なかったからだ。
街が見渡せる小高い丘の上から、僕は街の様子を眺めていた。
王女様が眠っていた時とは違い、街は今、活気に満ちている。
今回の件で、多くの人が亡くなったけど、あの様子なら、問題はなさそうだ。
その事に、僕は安堵する。
「坊やは街へ行かなくていいの?」
後ろから、魔女さんが声を掛けてくる。
そんな魔女さんの言葉に、僕は苦笑いした。
「こんな姿では、戻れませんよ」
魔法使いの、最期の呪いを受けた僕は、血も肉も溶かされ、骨だけとなった。
自分の命を原動力とした呪いは強力で、どうやら不老不死の呪いの回復力を上回っているようだ。
不思議な事に、骨だけとなっても死ぬ事はなかったけど、僕の身体が元に戻る気配はなかった。
「魔女さんには、感謝していますよ」
骨だけとなった僕が動けるのも、魔女さんが掛けてくれた呪いのおかげだ。
そうでなければ、あの塔でずっと野ざらしになっているだけだっただろう。
「うふふ、坊やの事はそれなりに気に入っているから」
クスクスと、楽しそうに笑う魔女さん。
「それに、あのままでも面白そうだっけど、やっぱり坊やには動いて貰わないとねぇ?」
魔女さんの瞳が、妖しく光る。
「人とは違うその姿で、坊やがどんな困難に遭い、苦しむのか……これからも私を楽しませてね、坊や」
そう言って魔女さんは消えてしまった。
「相変わらずだなぁ……」
変わらない魔女さんの態度に苦笑いする。
「さ、僕もそろそろ行こうかな」
最後に街へと目を向けて、僕はその場を立ち去った。
僕がした事は、人に知られる事はないだろう。
だけど、それで良いと思う。
僕は自分がやりたいと思った事を、やっただけなのだから。