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僕の住んでいる国は、豊かな国だった。
街に住んでいる人達の表情は明るく、王様達も、気さくで優しい人達だった。
そんなある日の事、王女様が悪い魔法使いに呪いを掛けられてしまう。
嘆き、悲しむ王様の為に、何人もの人達が立ち上がった。
屈強な戦士や偉大なる賢者。そして王国最強の剣士。
彼らなら、魔法使いを倒してくれると、国民の誰もが思っていた。
けれど、旅へと出た彼らが、帰って来る事はなかった……。
彼らが帰ってこない事に業を煮やした騎士団長は、多くの兵を連れて、魔法使いの討伐へと向かう事にした。
今度こそは大丈夫だろう。
誰もがそう信じて、いや、信じようとした。
だけど数日後に戻って来たのは、傷付き、打ちひしがれた何人かの兵士だけ。
多くの兵士達は魔物との戦いに敗れ、騎士団長と共に命を落としたらしい。
もう城に残っているのは、生きて戻ってきた何人かの兵士。
そして、騎士団長に連れて行ってもらえなかった、僕のような少年兵だけだった。
「どうしようか……」
その日、僕は城に残った仲間達と相談をしていた。
「どうするも何も、剣士様達や大勢の兵士達が勝てなかったんだ。俺達に何か出来る訳がないじゃないか!」
仲間の一人が、自棄になったように叫ぶ。
「けど、このままじゃ王女様が……。それに、王様だって……」
騎士団長の失敗の報告を聞いた王様は、もう王女様を救う事を諦めかけていた。
王女様の眠る部屋へと入り浸り、ただただ悲しみに暮れている。
「何とかしたいじゃないか……」
王様も王女様も、いつも僕達に優しくしてくれた。
だから僕は、王様達の為に何かしたかった。
それはここにいる仲間達も、同じ想いのはずだ。
「けど、弱い俺達が魔物に勝てるはずもないし……」
仲間の一人が、悔しそうにつぶやく。
確かに僕達は幼く、騎士団長に付いていった兵士達よりも弱い。
だけど……!
「……一つだけ、方法があるかもしれない」
皆が悔しそうにうつむいている時、仲間の一人が声を上げた。
皆がその声に、顔を上げる。
「ここから西へと行った森に、魔女が住んでいるのは知っているか?」
彼の言葉に、頷く者もいれば首を傾げる者もいた。
そんな仲間の反応を見つつ、彼は言葉を続けた。
「その魔女は長い年月を生きていて、呪いについての知識も豊富にあるそうだ。その魔女に頼めば、あるいは……」
彼の言葉に、皆の表情が明るくなる。
「だけど、魔女は恐ろしいって話だぞ? 俺達の頼みを聞いてくれるかどうか……」
そんな僕らを戒めるように、魔女の事を知る仲間が声を上げる。
「それでも……何もしないよりマシじゃないか……僕は、魔女の所へと行きたい!」
僕の言葉に、皆が頷く。
こうして僕らは、魔女のいる森へと向かう事にした。