過去~the past~
(1)
私とアイツは、走っていた。
今までにない、全速力で。
桜並木が揺れていたあの夜。
「葉月っ!召喚術師討伐は頼んだよ!?」
「わかってるってっ!瑠璃こそ、そっちのデカブツ倒せよ?!」
「デ、デカブツって・・・。召喚されたドラゴンの事をそんな言葉で言わないの!」
走りながらはなしてるけど、まぁ、大丈夫。
これくらい、普通だから。
私は、瑠璃。
アイツは、葉月。
今は、悪い奴を討伐中。
まぁ、私たちのグループに、討伐して欲しい人の依頼が来るんだけど。
あ、何故ならこの地方の治安が悪いからなのね。
あ、私たちのグループって言うのは、八人いて、cloverっていうグループなんだけど、そのうちの一人が、私のパート・・・
「うわぁぁ!?」
「瑠璃!?ちょ、おい大丈夫か!?」
ちょっと油断したスキに、召還されたドラゴンが攻撃をしかけてくる。
「だい↓じょー↑ぶ!私は特具使い(アラツカーネ)!」
アラツカーネとは、特別な道具を使用する職業であり、特別な才能が無いと職業に就けなかったり、
特別な道具、いわゆる特具を持つには相性が良くないと持てないので、
滅多にいない職業の人間なのだ。
「ドーラーゴン!さーよーならっ!って事でーー」
私は、空中に高く飛ぶと・・・
特具・アンノイア(敵に幻を見せる特具)を取り出した。
「この幻で、苦しんでてね!」
チェーンソー型のアンノイアのチェーンが、一気に回りだす。
そして、空中からおりながら、アンノイアで、ドラゴンの肩に傷をつけた。
アンノイアは、肩に傷をつけることで対象の敵に幻影を見せ、
苦しみを与えることができる。
ここは戦場、戦いの場。
戦場と言っても、街の中。
夜だから、ほとんど人はいないけど、ささっと悪い人を片付けないと。
『ギィアアィィィ』
「何!?もうっ、ドラゴンうるさいって!こっちは斧術師がいるだけでもつらいってのに!」
召喚術師はキィキィ悲鳴をあげながら葉月の斧を止めている。
息が荒い。このままなら、多分あと30秒もしないで召喚術師は力尽きるだろう。
で、斧術士は、斧を多様な使い方で敵に攻撃する、特攻型の戦士。
めっちゃ力がないと就けない職業。・・葉月は、ひょろひょろしてるのに(体がね?)握力はあるのよ、アイツ。
「おっ!つらいって言ったな?俺はお前を上回ったって事だ」
葉月の斧は、鋭い。
まぁ、毎朝研いてるからだとは思うけど。
そして、召喚術師も斧を素手で受け止めてるのは・・・さすがだ。
「終わり・・・だな!
回転斧、ハーフクラウド!」
召喚術師は、その一撃を喰らって、倒れていった。
「 よっしゃ!」
葉月はガッツポーズを見せてる。
・・・けど、安心はできない。
このドラゴンはまだ、幻を見て死ぬわけじゃない。単なる足止め。
あれ、葉月・・・がこっちに来る。
なんだ、さっきはしないって言ってたくせに、ドラゴン討伐、加勢してくれるんじゃん。
とにかく、どうやって討伐しよう、ドラゴン。
「おい、瑠璃」
気がつくと、葉月の声がした。
「ん?何葉月・・って近っ!」
そして、葉月がすぐ近くにいた。
「メンゴメンゴ。お前、足。怪我してんじゃん」
「え、あ。本当だ」
足をみると、ドラゴンに引っかかれたのか、三つの爪痕が足に残っていた。
「うぅ、今思い出すと痛いからそんな事言わないでよ」
「しょーがねーだろ、怪我したのお前だし。とにかく座れ。手当てすっからよ」
ーーーうぅ、しょーがない。
コイツ、反論の言葉を言い出すと、反対されてキリないから、座ってやるか。
「はぁ・・・え!?」
近くにあった石に座ったあと、
ドラゴンの方をチラリと見ると、
ーーー何か知らないけどドラゴンがすっごい息吸ってる!?
ドラゴンが息をどんどんすっていた。
「ヤバイかも・・・っ!葉月、これ、転送のブレスだ・・よね!?」
「うぉ!?やべぇーな!?」
葉月も振り返って初めて気づいたらしい。
召還されたドラゴンは、特有の技を用いて戦う。
だけど、このタイプのドラゴンは、あんまりいない。
転送のブレス・・・どこかに転送するブレスを吐き出す。
どこか、は奈落の底が多い。
『ギガァヵ』
「きゃぁ!?風圧が・・って、葉月!?」
ドラゴンのブレスが、もう、飛んでくる。
なのに、葉月が前に出てる。
やばい、無理だ。
バチバチッ!!!
目、開けてみる。
爆音、やばかった。
「・・・葉月?」
「ごめんな瑠璃・・・転送されちまうわ、俺」
「なんでよ!なんなら一緒にーー!」
目を開けると、葉月は私を庇って転送のブレスをうけたようで、
転送されそうになっていた。
「じゃあな」
私がおぼえている言葉は、「じゃあな」。
その瞬間、私はなにがなんなのか分からなくなって
気づくと、ドラゴンが倒れていた。
葉月は、いなかった。
まだ、夜はあけていなかった。
桜が、風にのって散っている。
そして、
わたしは一人で、泣いていた。
ーーもう、大切な人を奪わせない
ーーそれなら、
ーー何が代償でも強くなってやる
ーーーー生き抜くよ
ーーごめんね、葉月