ここはどこ?
「はぅっ!!」
あ~落ちたかと思った。
背中からストーンって投げ出された感覚で飛び起きた。
夢だとわかってホッとするのもつかの間、いつもと違う違和感に気付く。
は?私ベンチで寝てたの?昨日家に帰ってベッドに入ったよね。
飲み会帰りにつぶれて寝たとしたら、服はスーツのはず。
だけど来ているのは着古したよれよれのパーカーとスウェット。
靴だって履いていないし。
石畳に素足ってきついわ、冷え性だしね。
って何?どうやってここまで来たの?寝ている間に歩いて?夢遊病なの?ハイジなの?
「はー、訳わかんない・・・。」
ため息ついて周りを見渡すと、どうやら緑の多い公園らしき場所。
朝早いせいか、もやがかかってはっきりとは見えないが遠く一軒家が立ち並んでいるのが見える。
それも屋根の色はオレンジ色に統一されて、ヨーロッパを思わせる街並みだ。
目の前にある花壇はきれいに整備されていて、親近感が感じられない。
「こんな場所、思いつくのは九州の某レジャーランドしか思いつかないよ・・・。」
少なくとも自分が住んでいる東京下町界隈にこんな優雅な場所はないはずである。
新しく出来た大規模な新興住宅地かな~と思いつつ、公園から出て家に帰ることにした。
建物も近くで見たら、きっとなんちゃってヨーロッパ調だろうと思いきやかなり本格的なものだった。
年季は入っているし、なにより日本語が見つからない。
表札位はあるはずと建物一つ一つ見ても見つからず、住所が書いてある電柱を探しても一本も見当たらない。
「ほんとなんなのよ、どこなのここは・・・」
ならば人に尋ねるしかない、と周りを見ると
「あ、第一村人発見!」
遠くに走る姿の人影を見つけた。
一軒一軒、新聞を配る配達員のようである。
てきぱきとこなし、足も速い。裸足じゃ思うように走れず、声をかけられる距離までなかなか近づけない。
後を追いかけているとなんだか余計なものが目に入った。
ん、しっぽ?
妙に生き生き動くしっぽである。
そういえば髪の毛と同じ色でお揃いね、形も私好みの・・・っていやいやしっぽ付きなんて変人決定よ!
貴重な第一村人だけど、あきらめるしかないわね。
追いかけるをやめようと足を止めると、前の方で話し声が聞こえてきた。
変人配達員はどんな人と話すのかと建物の影からそっと顔を出すと、どうやら早起きの住人と会話しているらしい。
まともそうだったら、その人に尋ねようと伺うと相手の男性はつるつるの頭に耳の上だけふさふさの毛というスタイル。
「ぷっ!」
初めて見たスタイルに思わず噴き出してしまうが、意外に可愛く見えるのが不思議だ。
ふわっふわの垂れ耳みたいだからかな、おじさんのくせにやるわね。
と思っていると再び目に入るふるふる震える余計なもの。
また、しっぽ!?
呆然としていると、次第に目に入る人の姿が増えてくる。
あの人にも、この人にもしっぽ、しかもヘアスタイルも変わってて垂れ耳くっつけてるように見えるのは気のせいなの?
動物の仮装祭りなのかしら、世界各地でいろいろわっしょいしているらしいし、ああだからここってどこ?
人種的にも日本人ぽくないんだけど、いったいどこなのぉぉぉ!