表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/21

ゴースト・10

 機械仕掛けの巨人が、ケージに拘束されている。まるで、お伽噺のガリバーのように。巨人には右腕の肘から先がない。戦闘による破損で、失われているからだ。巨人の破損部はそれだけではない、カーボンの表面装甲はそこかしこが傷つき、地金を晒している。関節部の防護は一部破れ、切り口からは機体を動かす人工筋肉である電縮性ポリマーが覗いている。

 巨人の名はウェアウルフ。ラティファが駆るエーテルギアであり、ジムリアー連邦のドッグ内で修理を行なっている最中である。

 ウェアウルフの周りには、機械仕掛けのアームを複数生やした球状機械――無人作業機が複数浮かんでいる。それらは巨人に張り付き、破損した装甲にアームから霧状になったカーボンパテを吹きつけ、乾燥後に均している。これにより、僅かな時間で細かい装甲の破損は補修される。

 その他の細かい破損も簡単に直ってしまうが、大きな破損に関してはそうはいかない。今回であれば、大きく破壊された右腕だ。

 ラティファは無重力のドッグ内を漂いながら、ウェアウルフの存在しない右腕を見ていた。

「右腕は予備と交換するか」

 エーテルギアは高度なモジュール化が為されており、ある程度規格が合っていれば、別のフレームの腕をつけることすら可能になる。当然、部位単位での交換も容易である。

 今回の依頼に際して、パーツに関しては充分な予備を用意している。右腕と、喪失した人喰マンイーターはそれで補うことにする。

 ――だが、そのまま補修するだけで大丈夫か?

 痛々しい姿を晒すウェアウルフを見て、そう思ってしまう。いや、思わざるをえない。

 赤いエーテルギア――ジマーのドライバー、ニコライ・レザノフ。あの男は強い。ラティファが戦ってきた相手の中でもトップクラスの実力者だ。

 ――それだけではない。

 あの男は、揺るがない。

 それが、ラティファがニコライから受けた印象だった。

 吹雪の中であろうと、けして揺るがぬ大樹。

 その強さが、何処から来ていると言うのだろうか。技術とはまた別の領域、ラティファが持ち得ぬ何かが、力となっている。テロ行為に己の身を走らすような、何かが。

 欠落しているのだ、とラティファは思う。

 ラティファは欠落している。過去数年以前の記憶が欠落しているが、それだけが欠落ではない。欠落しているのはもっと別の、分かりづらくて致命的なものだ。自分は何かが不十分であり、不完全なのだ。

 戦うことで、その答えを求めていこうと決めた。だが現実は「貴様は不完全だ」と叩きつけてくるばかりだ。

 誰も皆そうなのかもしれないが、結局人間に理解できるのは自分のことだけである。

 網にかかった魚のように、進めばその身が痛むばかり。

「まったく」

 溜息を吐く。

 それでも尚進み、戦わねばならない。それが自分で選んだ道である。他の道は選ばなかったのか、選べなかったのか。どちらでも同じことだ。

 実務的に、ジマーに対する対策を考えねばならない。

 ラティファは電脳内に格納された戦闘データを読み込む。

 ジマーの恐ろしさは速度と攻撃力、ついで防御力だろう。単純に、強い。さて、それをどのようにして打ち破るべきか。

 射撃でどうにか出来る自信はない。生半可な射撃では装甲とエーテル防壁で耐えられてしまうし、それ以上にジマーと高機動戦闘を行いつつ、射撃武器を的確に命中させられる自信がない。

 白兵戦闘なら何とかならないこともない、ラティファは先の戦闘を思い出す。衝角による一撃は、間違いなくダメージを与えていた。

 ならば、とりあえず、近接戦闘で、相手に対して打撃を与えられる武装がもう少し欲しい。散弾砲ショット・キャノン機関砲マシン・キャノンの代わりに、プラズマソード辺りが有ればいいか。

「三条の予備兵装なら、プラズマソードぐらい余っているか?」

 三条 崇仁は、エーテルギア以外に、予備装備を満載したサポートキャリアを持ち込んでいる。その中には、プラズマソードぐらいなら有るような気がする。

 ――あとで融通してもらうとするか。

 そんな事を考えながら、電脳を介して作業用無人機に指示を出す。後は指示のとおりに作業用無人機が動き、給弾作業まで済ませてくれる。出来ないのは、機体レスポンスや、電脳との接続など、ドライバーの感覚に大きく依存する部分以外の調整だけだ。

 やることは済ませてしまったので、ラティファは無重力空間を泳ぎ、ドッグの外に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ