推しの令嬢、守護します! 1-11
老翁の質問に、部屋の空気が変わり、エドガーもその異変に気が付いた。
「誰の発案?
勿論、私の父、カリスでございます。
――息子ながら、とても優秀な料理人だと尊敬しておりますッ」
老翁の質問に、少しだけ不意を突かれたエドガーであったが、大きく動揺するような事はせず、淡々と質問に答え、嘘と本音を交えながら話した。
(成程な、もうこの爺さんが知りたい事は何となく分かった。
この世界が、『LOVERS』の世界と似てると知ってから今日まで、やりたい放題やってたからなぁ~~。
探りが入ってもおかしくは無いか……。
まぁ、まさか自国のガルバニア王国じゃなく、他国からとは思わなかったけど……)
エドガーは、貴族の老翁が探っている事が、何となく察しが付き、自分の不都合が出ない程度には、相手をしてやると心の中で決める。
「ほう……。
当然と言えば、当然か……。
――そなたの亭主は素晴らしいなッ! こんな料理、ここの国の様々な店に行ったが、殆ど見かけなかったぞ?」
「父は研究癖が凄いので、色々作っては成功したり、失敗したりをしております。
変な料理も多いので、同業からは気味悪がられたりしますよ」
エドガーはあくまで自然に、受け答えをし、エドガーに不思議な魅力を感じつつあった老翁は、そんなエドガーを見て、興味深そうにほくそ笑む。
「でも、総合的に見ても成功しているのだろう? お店も繁盛しているようだったし。
――ここだけの話、かなり設けているのではないか??」
老翁は10歳の少年に対し、下世話な話題を投げ掛けるが、エドガーも悪い笑みを浮かべながら、老翁の話題に乗り始める。
「儲けは上がっております。 ウハウハでございます。
――ただ、困った事に父はそこまで強欲ではないのですよ~~。
まだまだ儲けられるチャンスは、いくらでもあるんですがねぇ~~」
エドガーは、うつけを演じる為にも、生意気で余計な事をペラペラと喋る、そんな少年の振舞を続けた。
「ほう。
まだ儲けるチャンス? 強欲では無いと……?
――いや、てっきり既に巨万の富を持っていると思っておった」
「へ? どうしてそんな事を??」
老翁は勘違いしていたと言わんばかりに呟き、老翁のその勘違いに、エドガーも疑問を持った。
「いやな? こないだここで食べた料理のレシピを、売っている商人を見かけてな??
てっきりそういった商売にも手を出しているのかとな?」
老翁はエドガーを完全に揺さぶる様にして、質問を投げ掛けていたが、あくまで表面上では、普通の世間話をしているように振舞、エドガーと同じように完全に惚けていた。
(ふぅ~~ん、そんな事まで知ってるのか。
三日もこの国に居ついて、方々回ってれば気付くか……)
エドガーはある商人と契約し、裏でコソコソとやっている商売に、老翁が気付き掛かっている事を理解した。
(カリスも承知してる商売だし、別にこの爺さんに言っても問題ないか。
――問題は、完全にこの酒場を疑っているってこと、そして、最悪なのは、父さんでなく俺に目を付けてるかもしれないという事……。
父さんを直接崩すのではなく、俺から情報収集してるって事ならまだ良いんだけど……)
「お気づきになりましたかッ! やってるんですよ実は~~。
そっちの利益もかなりありましてね~~??
――ただまぁ、父があまり乗り気ではなく……」
「ほう? 何故?」
「父さんの目的は、お金を大量に稼ぐ事ではないのです。
目的と言うならば、既に達成されていると言いますか……、店を持ち、最愛の人と店を切り盛りする事が父の夢なのです。
最近は、私も店を手伝う事で増々、幸せを噛み締め、他の事に興味が無いのです…………」
エドガーは大きく溜息を吐き、呆れた物言いで話し、エドガーの言葉に老翁は元気よく、笑みを浮かべた。
「はっはっは~~ッ!! 良い事ではないかッ!?
素敵な亭主だ」
老翁は笑い飛ばすように言い放ち、ずっと静かに食事を楽しんでいたレアリーは、そんな老翁を驚いた表情で見た後、エドガーに冷たく視線を飛ばす。
(レアリー嬢は終始、俺を睨むように観察してるな……。
料理は食ってるから、多分好みを大きく外してるわけじゃないんだろうな。
――とゆうか、爺さんに構い過ぎて、目標を全く果たせてないッ!!
レアリー嬢の好みがまるで分からん!)
エドガーはレアリーの痛い視線で、少し忘れかけていた本来の目標を思い出し、目標達成の為にも老翁を利用してやろうと、利用する報酬として、ある程度なら情報を出してやろうと考えていたが、全く思い通りになっていなかった。
そして、エドガーは今になって、重大な事に気が付く。
(あれ? レアリー嬢、ローブを取ってる……。
いつ?? 飯を運んだ時は被ってたよな???
――飯を食べてる時に、流石に邪魔だったから取ったのか?)
レアリーは、初めて酒場に訪れたように、頭からローブを被っていたが、今エドガーの目の前にいるレアリーは、ローブを外し、エドガーに素顔を露わにしていた。
以前も来店している際にみた琥珀色の瞳はそのままに、少し青みがかった白い長い髪を靡かせ、白く美しい肌を持つ事も相まって、瞳の魅力はより一層に際立った。
まだまだ顔付には幼さが残るものの、目付きだけは鋭く、美しい白髪を持っていた為、儚げな印象も感じるが、瞳の力強さだけで、その令嬢の威厳をエドガーは感じた。
あまりの美貌に、老翁との会話の途中であったエドガーは、狐につままれたようなそんな感覚を感じ、ただただ呆然と、レアリーを見つめてしまう。
「――して、少年よ!
他にも質問があるのだがいいかな??」
「え? あ、はいッ!?」
レアリーの美貌に呆然としてしまったエドガーであったが、老翁の言葉ですぐに意識を取り戻し、老翁へと視線を戻す。
頭の中で色々と考えていたエドガーであったが、レアリーの素顔により不意を突かれ、老翁の要請に、反射で返事をしていた。
「この酒場、かなり妙な噂があるんだが、知っておるかな??」
「はぁ、噂ですか??」
老翁の言葉にエドガーはまるで心辺りが無く、素で返事を返した。
「ほう、酒場の関係者が知らんとは……。
実はな? 聞く所によるとな?
この酒場、沢山の利用をすると出世すると言われておる」
「出世……、聞いた事無いですね」
「そうか?
トレブ・ジェイス子爵、マービス博士……、他にも冒険家がいたかな。
皆、元はここの酒場の利用者、あるいわ常連だったそうな」
老翁は、具体的な人物の名前を上げ、エドガーの反応を注視しつつ、会話をした。
エドガーにとって、どれも関わりの深い人物の名前に、内心、少しだけ同様するも、冷静は簡単に保つ事が出来た。
「成程、皆さん確かに出世というならば、出世したかもしれません。
――もう暫くお店には来てくれてないですけど。
会いたいなぁ~~」
エドガーは平然と取り繕いながら、最後には大げさに感情を零しつつ、老翁の言葉に答えた。
そして老翁は、その後もエドガーに、何点か質問を投げ掛けるが、エドガーは、大きく自分の不利益になる情報は出さず、レアリーの思わぬ美貌に少しだけ、情緒を乱されつつも、飄々と老翁の質問を答えていった。




