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最強のハンター、神の光を拾う。〜滅びゆく世界で俺はもう一度守りたい〜  作者: 蛮ニル
第4章 合理の名で壊れるもの

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【第88話 飛ぶ男の流儀】

挿絵(By みてみん)

【第88話 飛ぶ男の流儀】


 スカイハウルの格納区画に、

 乾いた金属音が響いていた。


 工具が擦れ、

 留め具が噛み合い、

 外装板が正しい位置へ戻されていく。


◇ ◇ ◇


 操縦席の下。

 配線の影に潜り込みながら、

 バルドはふと顔を上げた。


「……で」


 一拍。


「坊主と王子は?」


◇ ◇ ◇


 ルコールが、即答する。


「外だ」


◇ ◇ ◇


 格納区画の外から、

 風を裂く音と、

 鈍い着地音が重なって聞こえた。


 続いて――


「もう一回行くぞ、フォティ!」


 オズマの声。


「……はい!」


 少し息の上がった返事。


◇ ◇ ◇


「はは」


 バルドは、工具を回したまま笑った。


「元気だな。

 空に喧嘩売ってる音がする」


◇ ◇ ◇


「止めなくていいのか」


 ルコールが問う。


「止めたら折れる」


 即答だった。


「折れる前にぶつかる方が、

 あいつらには合ってる」


◇ ◇ ◇


 そう言って、

 バルドは操縦席に腰掛け直す。


◇ ◇ ◇


 その時。


 ミラが、

 一歩遅れて格納区画に入ってきた。


 足取りは軽くない。

 調査の疲労が、

 まだ体に残っている。


◇ ◇ ◇


 それを、

 バルドは一瞬で見抜いた。


「……お嬢ちゃん」


「はい」


「無茶したな」


◇ ◇ ◇


「……少しだけ」


 ミラは、正直に答えた。


◇ ◇ ◇


「“少し”はな」


 バルドは鼻で笑う。


「後から全部まとめて来る」


◇ ◇ ◇


挿絵(By みてみん)


 ルコールが視線を向ける。


「問題はない」


「あるさ」


 バルドは言い切った。


「“疲れ”じゃねぇ」


◇ ◇ ◇


 レンチを置き、

 二人を見る。


 ルコールとミラ。

 その距離。


 近すぎず、

 離れすぎず。


◇ ◇ ◇


「……そうきたか」


 バルドが小さく呟いた。


「この朴念仁の、

 何がいいんだか」


◇ ◇ ◇


「?」


 ルコールは眉をひそめたが、

 深くは考えなかった。


◇ ◇ ◇


 ミラは、

 ほんの一瞬だけ視線を逸らす。


◇ ◇ ◇


「まあいい」


 バルドは話を切り替える。


「操縦は俺がやる」


◇ ◇ ◇


 異論は出ない。


 最初から、

 そうなる空気だった。


◇ ◇ ◇


「この船はな」


 外装を軽く叩く。


「腕がいいだけじゃ、

 言うことを聞かねぇ」


「壊れ方を知ってる奴向けだ」


◇ ◇ ◇


「だから、

 俺が行く」


 それだけだった。


◇ ◇ ◇


 外から、

 再び風を裂く音。


 そして――


「くそっ……!」


 フォティの悔しそうな声。


◇ ◇ ◇


「……元気で結構」


 バルドは肩をすくめる。


「空に嫌われてない証拠だ」


◇ ◇ ◇


 ミラは、

 無意識にルコールの背中を見る。


 広い背中。

 動じない姿勢。


◇ ◇ ◇


(……やれやれ)


 バルドは心の中で息を吐く。


(守る側は鈍感で、

 守られる側は厄介だ)


◇ ◇ ◇


「準備は続けるぞ」


 バルドは再び手を動かし始めた。


「空はな、

 嘘をつかねぇ」


◇ ◇ ◇


「覚悟がなきゃ落ちる。

 迷ってりゃ折れる」


 一拍。


「だが――」


◇ ◇ ◇


「腹を括ってりゃ、

 案外、応えてくれる」


◇ ◇ ◇


 格納区画に、

 金属音が戻ってくる。


 それは、

 出発前の音だ。


◇ ◇ ◇


 まだ飛ばない。


 だが、

 全員が分かっていた。


 ――次は、空だ。


(第88話 了)

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