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【第69話 広場と空腹】

いいのか…こんなに感想つけてもらって…(嬉死

【第69話 広場と空腹】


 通路を抜けた先は、妙に開けていた。


 天井は高く、壁面は白い素材で統一されている。

 地下にあるはずなのに、圧迫感はない。

 音も、匂いも、どこか整えられすぎている。


「……広場、か」


 バルドが低く呟いた。


 中央には、大きな“木”が立っていた。

 ただし、自然のものではない。

 幹は金属と樹脂を合わせたような質感で、

 枝の代わりに、淡く光る板状の構造体が広がっている。


 影ができる。

 人が集まるよう、計算された形だ。


 そして――


「……子供、います」


 ミラの声が、わずかに柔らかくなる。


 広場のあちこちで、子供たちが遊んでいた。


 走り回る子。

 床に座り、何かを並べている子。

 人工の木の根元で、ひとり座り込んでいる子。


 年齢はばらばらだ。

 あの時に近い服装は白だが、表情も違う。


 だが、不思議と――騒がしくない。


「……静かすぎるな」


 フォティが、小さく言った。


 笑い声はある。

 遊んでいるようにも見える。


 けれど、その動きはどこか“範囲内”に収まっていた。

 広場から外へ出ようとする子は、ひとりもいない。


 ルコールは、無言で周囲を見渡す。


 監視装置らしきものは見当たらない。

 だが、柱の配置、通路の位置、影の落ち方――


(見られてる)


 そう感じるのに、

 “誰に”見られているのかは分からなかった。


◇ ◇ ◇


 人工の木の下。


 ひとりで座っている子供がいた。


 膝を抱え、床を見つめている。

 他の子供たちの遊びに、混ざる様子はない。


 フォティが、自然と歩み寄った。


「……なぁ」


 声をかけると、子供はゆっくり顔を上げた。


 驚きはない。

 逃げる気配もない。


 ただ、少しだけ警戒している。


「おなか、すいてる?」


 その問いに、子供は一瞬だけ迷った。


 迷ってから、頷いた。


「……すいてる」


 小さな声だった。


「ここ、ごはんは?」


「……ある」


 子供は、人工の木の方をちらりと見た。


「でも……」


 言葉が、そこで止まる。


 フォティは、それ以上は聞かなかった。


 代わりに、背負っていた袋を下ろす。


挿絵(By みてみん)


「昼前に買ったやつなんだけどさ。

 歩きながら食べる用で」


 包みを開くと、香ばしい匂いが広がった。

 温かさが、まだ残っている。


 子供の目が、わずかに揺れた。


「……いいの?」


「いいよ」


 即答だった。


 子供は、少しだけ躊躇してから、

 大事そうに両手で受け取る。


 一口。


 そして、もう一口。


 噛むたびに、肩の力が抜けていく。


「……おいしい」


 その言葉に、

 フォティは思わず、ほっと息をついた。


 その様子を、ルコールは黙って見ていた。


(……ここでの食事じゃない)


 だから、なのか。


 子供の様子は、

 他の子供たちよりも“人間らしく”見えた。


◇ ◇ ◇


「ここは、あそぶところ?」


 子供が、ふと聞いた。


「そうみたいだな」


 フォティが答える。


「でも……」


 子供は、人工の木を見上げる。


「ずっと、ここ」


 その言い方に、

 ルコールの胸が、わずかに軋んだ。


「外には行かないのか」


「……だめ」


「誰が、そう言った?」


 子供は少し考え、

 首を横に振った。


「みんな」


 それ以上は、言わなかった。


 食べ終えると、

 包みを丁寧に畳んでフォティに返す。


「……ありがとう」


 声は、さっきよりも少しだけ明るい。


 だが、その目は、

 広場の外を見ようとはしなかった。


 ルコールは、広場全体を見渡す。


 遊んでいる子供たち。

 笑っているように見える。


 だが――


(守られてるんじゃない)


 はっきりと、そう思った。


(閉じ込められてる)


 人工の木の影が、

 静かに広場を覆っていた。


 その時。


 どこか奥の方から、

 低く、規則的な足音が聞こえてきた。


 大人の足音だ。


 ルコールは、自然と身構える。


 そして、胸の奥に、

 嫌な予感が、はっきりと形を成した。


(第69話 了)

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