【第67話 王城の真下】
初執筆、初投稿、良い歳したおっさんなので完走できるように長い目で見守ってください。
月曜日が基本固定休なので、月曜日更新を目指していきます。
【第67話 王城の真下】
通路の空気が、はっきりと変わった。
「……ここまでとはな」
先頭のバルドが、足を止めて呟く。
湿った土の匂いは消え、
代わりに、乾いた石と油の残り香が鼻につく。
「整備されてる」
ルコールが短く言った。
「しかも、最近だ」
「だろうな」
ロウグが頷く。
「古い非常通路なら、もっと荒れる。
だがここは――“今も使われている”」
全員が、自然と前を向いた。
◇ ◇ ◇
通路の突き当たり。
そこに現れたのは、巨大な石の門だった。
「……でかいな」
バルドが口笛を吹く。
「装飾なし。
紋章もなし。
だが厚みは王城区画レベルだ」
「王城……?」
フォティが小さく声を上げる。
オズマは、無言で門を見上げていた。
「……王城の真下だ」
低い声。
誰も否定しなかった。
「だが――」
オズマは一歩近づき、石の継ぎ目を確かめる。
「この門は、記録にない」
「王族用でも?」
「少なくとも、俺は知らない」
その言葉が、重く落ちた。
◇ ◇ ◇
「隠してた、ってより――」
バルドが考え込む。
「最初から“表に出す気がない”場所だな」
「あるいは」
ルコールが続ける。
「知る必要のある人間が、限られている」
「……嫌な話だ」
ロウグが吐き捨てる。
「王城の真下で、それをやる意味がな」
◇ ◇ ◇
「ここ……」
ふいに、ミラが口を開いた。
全員の視線が、彼女に向く。
「通る場所ですね」
「……通る?」
フォティが聞き返す。
「はい」
ミラは門を見つめたまま、首を傾げる。
「立ち止まる場所じゃないです。
祈る場所でもない」
「根拠は?」
オズマが問いかける。
ミラは少し考え、困ったように笑った。
「……そういうふうに、できてます」
◇ ◇ ◇
「待て」
オズマが声を上げる。
「不用意に触るな」
だが――
ミラは、もう門の前に立っていた。
「大丈夫です」
「ミラ!」
フォティが慌てて手を伸ばす。
その指が、門に触れた。
◇ ◇ ◇
――ゴ……。
低く、地鳴りのような音。
「……は?」
バルドが目を見開く。
鍵穴も、操作もない。
ただ、触れただけで。
巨大な門が、ゆっくりと内側へ動き出した。
「……開いた」
ロウグが呟く。
誰も、すぐには言葉を発せなかった。
◇ ◇ ◇
門の向こうには、さらに奥へと続く通路。
暗く、静かで、
確実に“人の気配”がある。
ミラは振り返る。
「ほら」
いつもと同じ、穏やかな声。
「通れます」
オズマは、息を詰めた。
――鍵は、存在しなかった。
この門は、
“誰が触れるか”を選んでいただけだ。
(第67話 了)
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