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【第59話 祈りの後に残るもの】

初執筆、初投稿、良い歳したおっさんなので完走できるように長い目で見守ってください。

月曜日が基本固定休なので、月曜日更新を目指していきます。

※2026/01/27 イラストを変更しました

【第59話 祈りの後に残るもの】


 礼拝が終わった直後だというのに、教会の中には人影がなかった。


 扉を閉めた音が、やけに大きく響く。


「……さっきまで、人はいたはずだよな」


 オズマが低く言う。


「ああ」


 ルコールは周囲を見渡しながら答えた。


挿絵(By みてみん)


 長椅子は整然と並び、床も踏み荒らされた形跡はない。

 祈りの場としては、あまりに整いすぎている。


 ルコールは、長椅子の端にそっと手を置いた。


「……まだ、温い」


「温い?」


「完全に人が引いた後なら、もう少し冷めてる」


 オズマは一瞬、眉をひそめた。


「つまり……」


「全員、一斉に動いた可能性が高い」


 会話が、自然と小さくなる。


 教会は静かだった。

 だがその静けさは、夜の静寂とは質が違う。


 人の気配が、意図的に消されたような空白。


「不思議だな」


 オズマが、ぽつりと零す。


「祈りの場にしては、後処理が早すぎる」


「片付けが慣れてる、って言い方もできる」


「……それが、余計におかしい」


 オズマは、祭壇の方へ視線を向けた。


 飾られているのは、見慣れた世界救済団体の紋章。

 王都では珍しくもない光景のはずだった。


 だが――


「この教会」


 オズマは、ゆっくりと言葉を選ぶ。


「配置が、少し古い」


「古い?」


「王都の建築様式より前だ。

 ……いや、正確には」


 一歩、前に出る。


「後から“被せた”構造だな」


 ルコールは、その言葉で察した。


「下に、何かある」


「おそらくな」


 オズマは、壁際を見渡す。


「昔の王城には、いくつも抜け道があった。

 緊急時の避難路、密使用の通路……理由は様々だ」


「王族しか知らないやつか」


「そうだ」


 オズマは短く頷く。


「だが、その多くは封鎖された。

 少なくとも、表向きは」


 教会の奥。

 人の通らない影の溜まる場所。


 そこに、視線が集まる。


「……今夜は、ここまでだ」


 オズマが、静かに言った。


「深追いはしない」


「ああ」


 ルコールも短く答える。


「だが」


 オズマは、もう一度だけ教会を振り返った。


「この件は、王城に持ち帰る」


 声に、迷いはなかった。


「王族の通路に関わる可能性がある以上、

 俺の立場で確認しなければならない」


「一人で戻るつもりか」


「そうだ」


 外套を整えながら、続ける。


「今夜は、ここで何も起きなかったことにする」


 一拍置き、視線を細めた。


「だが――

 起きなかった“理由”は、必ず洗い出す」


 ルコールは、それ以上何も言わなかった。


 この男が、

 王子として動く覚悟を決めたことが分かったからだ。


 教会を出ると、夜の王都は相変わらず静かだった。


 何事もなかったかのように。


 だがその静けさの裏で、

 確かに何かが動き始めている。


(第59話 了)

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