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最強のハンター、神の光を拾う。〜滅びゆく世界で俺はもう一度守りたい〜  作者: 蛮ニル
第3章 保護区潜入編

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【第45話 国境の顔】

挿絵(By みてみん)

 国境の検問所は、想像していたよりも静かだった。


 高い壁も、重々しい門もない。

 街道を跨ぐ簡素な関所と、数人の衛兵。

 だが、その視線には確かな緊張がある。


 馬車の列が、一定の間隔で止められていく。


「俺が先に行く」


 ルコールは手綱を握ったまま、短く言った。


「詰所だな?」


 バルドが即座に応じる。


「ああ。

 冒険者タグと、ギルドの依頼書を持っていけ」


「了解」


 説明は不要だった。


 バルドは馬車を降り、詰所へと向かう。

 その背中に、いくつかの視線が集まった。


◇ ◇ ◇


 馬車のそばでは、別の衛兵が積荷の確認を始めていた。


「食料と水……工具か。

 ずいぶんと軽装だな」


「調査依頼だ。

 長居はしない」


 ルコールの返答は簡潔だった。


「最近は物騒でね。

 教団絡みの噂も多い」


「噂は噂だ」


 肯定も否定もしない。

 世間話の形を保ったまま、距離を取る。


 衛兵は小さく頷き、帳面に視線を落とした。


「空路の方が早そうだが?」


「早い分、面倒も増える」


 それ以上、踏み込まれることはなかった。


「念のため、魔力検査も」


 衛兵が取り出したのは、掌に収まる小型の測定具だった。


「形式だ。すぐ終わる」


 まずはルコール。


 測定具は淡く光りかけ――すぐに沈黙した。


「……反応、薄いな」


「魔力なし、か?」


 衛兵は一瞬だけ眉を寄せたが、

 すぐに測定具を軽く叩いた。


「たまにいる。

 魔力を持たない冒険者だ」


 帳面に印をつけながら、ぼそりと付け加える。


「……正直、検問やる側としては一番判断に困るんだがな」


 それ以上、追及はなかった。


 次にバルド。


 測定具は問題なく反応し、安定した数値を示す。


「異常なし」


 事務的に処理される。


「……次」


 フォティが、少し戸惑いながら手をかざす。


 測定具が淡く光った。

 だが――揺れる。


「……ん?」


 衛兵が首を傾げる。


「異常か?」


「いや……反応はある。

 ただ、数値が定まらないな」


 しばらく様子を見てから、肩をすくめた。


「子供には、よくある。

 成長途中だろ」


 帳面に簡単な印がつけられる。


 最後に、ミラ。


 ミラは言われるまま、静かに手を伸ばした。


 測定具は一瞬だけ淡く光り――

 すぐに沈黙した。


「……反応、なし?」


「魔力未発現か、微弱だな」


 衛兵は特に気にする様子もなく、検査具を仕舞った。


「以上だ」


 誰も、それ以上は追及しなかった。


◇ ◇ ◇


「――おや」


 その声に、場の空気がわずかに変わった。


 詰所の方から、一人の男が歩いてくる。

 整った身なり。

 自然と周囲が道を空ける立ち居振る舞い。


 オズマ・クラフトだった。


「この検問で、冒険者の依頼書を見ることになるとは思わなかったよ」


 穏やかな口調。

 だが、その視線は明確にルコールへ向いている。


挿絵(By みてみん)


「……久しぶりだな」


「覚えていてくれたかい。光栄だ」


 軽く笑いながら、オズマは書類を受け取った。


 依頼書に目を通し――

 その指先が、ほんの一瞬だけ止まる。


「……調査、か」


 声は低く、独り言に近い。


 失踪。

 国境周辺。

 関係者不明。


 視線が、わずかに鋭さを帯びる。

 だが次の瞬間には、いつもの穏やかな表情に戻っていた。


「いや、失礼」


 オズマは書類を畳み、続ける。


「なるほど。

 正式なギルド依頼だ。

 手続きにも問題はない」


 周囲の衛兵に向けて、静かに告げた。


「この一団は通して構わない。

 こちらで責任は持つ」


 それだけで、空気が変わる。


「……助かる」


「制度を使っただけさ」


 オズマはそう言ってから、馬車の奥へ視線を向けた。


 フォティ。

 そして――ミラ。


 一瞬だけ、何かを測るような沈黙。


 だが、問いは発されなかった。


「先を急ぐんだろう?」


「ああ」


「なら、ここで引き止める理由はない」


 オズマは一歩下がり、道を示す。


「行きたまえ。

 国境の向こうは……少し、空気が違う」


 忠告とも、予告とも取れる言葉だった。


 ルコールは頷き、再び手綱を取る。


 馬車が、ゆっくりと動き出す。


 検問所を抜ける直前、

 フォティは一度だけ振り返った。


 オズマは、もうこちらを見ていない。


 だが――

 確かに、何かが動き始めた気配があった。


(第45話 了)

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