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最強のハンター、神の光を拾う。〜滅びゆく世界で俺はもう一度守りたい〜  作者: 蛮ニル
第3章 保護区潜入編

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【第43話 連れていく理由】

挿絵(By みてみん)

 出発の準備は、静かに進んでいた。


 馬車の脇に積まれていくのは、最低限の物資だけだ。

 水、乾いた食料、替えの布、工具箱。

 どれも多くはない。


 長旅を想定していないわけではない。

 ただ、最初から重装備で動くつもりがなかった。


 ミラは少し離れた場所に立ち、その様子を見ていた。


 近づくでもなく、離れるでもなく。

 声をかけられるのを待っているわけでもない。


 けれど――

 ここにいる。


 それだけは、はっきりしていた。


 フォティは荷を運びながら、何度か視線を向けていた。

 声をかけるべきかどうか、迷っているのが分かる。


 ルコールは馬車の前に立ち、無言で手綱を確かめていた。

 いつもと変わらない動作。

 だが、その指先が一瞬だけ止まる。


「……連れて行かない理由が、もうねぇな」


 ぽつりと、そう言った。


 決断を告げる声ではない。

 状況を整理した末の、確認に近い口調だった。


 誰も驚かない。

 誰も反論しない。


 それが答えだった。


 ミラは一瞬だけ目を見開いた。


「……わたし……?」


 自分のことだと分かっていても、確かめずにはいられなかった。


「ああ」


 ルコールは短く頷くだけだ。

 それ以上の説明はしない。


 フォティは胸の奥に溜まっていた息を、ゆっくり吐いた。


 バルドは馬車の荷台に回り、奥から一つの包みを取り出す。


「まあ、そうなると思ってた」


 軽く肩をすくめながら、布を解いた。


 中から現れたのは、落ち着いた色合いの服だった。

 飾り気はなく、装甲もない。

 動きやすさだけを考えた、素朴な作り。


 冒険者の服ではない。

 戦う者の装いでもない。


 どこかの村で、普通に暮らす娘が着ていそうな――

 そんな服だった。


「……これ……」


 ミラは戸惑いながら、それを見つめる。


「目立つ格好は向いてねぇ」


 バルドは淡々と言う。


「最初から“仲間面”する必要もないしな」


 ミラは言葉の意味をすぐには理解できなかった。

 だが、拒まれていないことだけは分かった。


 少し考え、服を受け取る。


「……ありがとう……」


 着替えを終えて戻ってきたミラは、ほんの少しだけ雰囲気が変わっていた。


 特別な存在であることは変わらない。

 だが、装いが変わったことで、

 この場に立っていていい理由が生まれたように見える。


 フォティは自然と隣に並んだ。


「……大丈夫?」


 ミラは少し考えてから、小さく頷く。


「……うん……たぶん……」


 不安がないわけではない。

 分からないことだらけだ。


 それでも――

 一人で残されるよりは、ずっといい。


 ルコールは操者席へと移り、前を向いた。

 手綱を取り、進路を確認する。


挿絵(By みてみん)


 バルドは後方に回り、荷と周囲を見渡す。

 フォティとミラは並んで腰を下ろした。


 誰も「連れて行く」とは言わなかった。

 誰も「守る」とも言わなかった。


 ただ、そこにいることを選んだだけだ。


 合図もなく、馬車がゆっくりと動き出す。


 揺れに、ミラは一瞬だけ体を強張らせたが、

 フォティの肩がすぐそばにあることに気づき、落ち着いた。


 外の景色が、少しずつ変わっていく。


 こうして――

 四人になった。


(第43話 了)

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