【第38話 光る残骸】
スカイハウルの格納区は、いつもより静かだった。
外では朝の気配が街に満ち始めているが、
この区画だけは時間が止まったままのように暗い。
積み上げられた金属片。
歪んだ装甲板。
用途不明の機構部品。
焼け焦げた導管。
――いずれも、表には出せない“着服品”だ。
「……相変わらず、ひでぇ眺めだな」
バルドは片膝をつき、スクラップの山をかき分けた。
教団の解体場。
処分前の回収物。
戦場で拾った残骸。
どれも正式な記録には残っていない。
だが彼の中では、“使えるかもしれない物”として、ずっとここに眠らせてきた。
(ルコールの武器が、ああなるってのはな……)
脳裏に浮かぶのは、ひび割れたアッシュフォール。
刃でも銃でも、限界を超えて戦い続けた痕跡。
「……この先の相手には、さすがに無茶が過ぎる」
バルドは、金属の塊をひとつ引き抜いた。
外装は剥がれ、フレームも歪んでいる。
だが――内部は、ほとんど無傷だった。
「……お?」
次の瞬間。
――カチ。
微かな起動音。
続いて、淡い光が漏れ出した。
青白い導線が、脈打つように点灯する。
「……生きてやがる」
バルドの口元が、わずかに吊り上がった。
さらに周囲を探ると、
同じ反応を示す残骸が、いくつか連鎖するように光り始める。
まるで“呼応”しているかのように。
「こいつら……同系統か?」
エネルギー制御核。
外部増幅前提の試作部品。
武装用ではなく、補助・接続用の機構。
――単体じゃ役に立たない。
だが、組み合わせれば話は別だ。
その時。
ギィ……と、格納区の扉がわずかに開いた。
「……バルド?」
覗き込んできたのは、フォティだった。
薄暗い中で光る部品群に目を見開く。
「なに、これ……光ってる」
「来ると思ったよ」
バルドは肩越しに振り返り、苦笑した。
「お前、こういうのに敏感すぎんだろ」
フォティが一歩踏み出した瞬間――
光が、強まった。
スクラップの山の奥から、
低く、澄んだ起動音が重なって響く。
「……!」
フォティの胸元が、かすかに温かくなる。
「これ……前にも……」
スカイハウルで、かつて起きた“増幅”。
フォティ自身も、理由を説明できない現象。
バルドは、その反応を見逃さなかった。
(やっぱり、そうか)
部品と少年。
機構と光。
偶然で片付けるには、出来すぎている。
「……なぁフォティ」
バルドは真剣な声で言った。
「こいつら、まだ“武器”じゃねぇ。
だが――」
手にした発光部品を、ゆっくり掲げる。
「使い道次第じゃ、あいつの命を救う“核”になる」
フォティは、ごくりと息を呑んだ。
「……ルコ兄の?」
「ああ」
バルドは短く頷く。
「今のアッシュフォールは、もう限界だ。
直すだけじゃ、生きて帰ってこれねぇ相手が、この先にいる」
光る残骸を見つめながら、静かに続ける。
「だから俺は――
“新しく作る”」
フォティの目が、強く揺れた。
スクラップの山。
着服された残骸。
そして、まだ名前もない可能性。
スカイハウルの格納区で、
新しい武器の“芽”が、確かに息づき始めていた。
(第38話 了)
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