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最強のハンター、神の光を拾う。〜滅びゆく世界で俺はもう一度守りたい〜  作者: 蛮ニル
第3章 保護区潜入編

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【第33話 影を嗅ぎつける群れ】

挿絵(By みてみん)

 ――スカイハウル内部は、まだ闇の静寂を抱えていた。


 ミラは深く眠り続けている。

 その胸元のタグ【MI-07】だけが、かすかな光を吸って微弱にきらめいた。


 フォティは彼女のそばに座り、毛布を整えながらずっと見守っていた。

 光因子がざわついている。

 その揺らぎが、誰のものなのか――自分でも判別できなかった。


 静かに扉が開く。


「……異常はなかったか?」


 ルコールが低い声で問う。


「うん……なにも。でも――」


 フォティは視線をミラから離さず、ぽつりと続けた。


「戻ってきた時に言ってたよね。

 “次は、お前らを巻き込ませねぇ”って……。

 あれ、なんか……すごく怖かった。」


 ルコールは短く息を吐き、わざと肩の力を抜いて見せた。


「気にすんな。ああいうのは……ただの“決意”だ。」


「でも――」


「フォティ。」


 その名を呼ぶ声音は、強くも優しい。


「お前とミラにだけは、同じものを見せたくなかった。ただそれだけだ。」


「…………」


 返す言葉を探すフォティ。

 その沈黙を破ったのは――スカイハウルそのものだった。


 ガンッ!!


 外壁を叩く鋭い衝撃。

 金属が歪み、船体がわずかに揺れる。


「……ッ!」


 フォティが跳ねた。

 ルコールは即座にアッシュフォールを引き抜く。


「フォティ、ミラから離れるな。

 “絶対に”だ。」


「わ、わかった……!」


 ルコールはハッチへ向かう。

 冷たい朝の風が吹き込み、薄闇が足元に揺れた。


 ――そして見えた。


 光る無数の眼。


挿絵(By みてみん)


 黄色い点が、地面の上で低く、広く、真円を描くように取り囲んでいる。


「……ダスクウォルフ……?」


 その名を呟く声は、戦場帰りの兵士のそれだった。


 本来なら森の奥深くに棲む群生魔獣。

 都市部に近づくどころか、人里の匂いを嫌い、警戒心も強い。


 だが今日の群れは――


 “迷いがない”。


 “恐れもない”。


 むしろ、**狙いを定めている動きだった。**


「……誘導されてるな。自然じゃねぇ。」


 ルコールの脳裏に、第七支部の崩壊した廊下で見た“タグ”の欠片がよぎる。


 ――Mi、Se、Ra。

 ――識別。

 ――区分。


(まさか……タグ自体に反応してる?)


 思考がそこまで至った瞬間、群れが突進してきた。


◇ ◇ ◇


「――ッ来いよ!!」


 ルコールの叫びとともに、火花が散った。


 一体の顎を蹴り砕き、別の一体を地面に叩き伏せ、

 背後からの飛びかかりを外套で受け止める。


 だが数が多い。

 この数は、偶然集まった群れではない。


 **“導かれた群れ”の動きだ。**


 その時――


「ルコ兄!!」


「出てくんなっつっただろ!!」


 船内からフォティが飛び出してきた。


「でも……ミラが……!」


 フォティが抱きしめるミラの胸元――

 タグ【MI-07】が、ごく微かに脈打つように光っていた。


「……そういうことかよ。」


 ルコールは低く呟く。


「フォティ! ミラを抱えて下がれ!

 あれはミラか、お前……あるいは“両方”に反応してる!」


「……っ!」


 フォティは後退しながら、ミラを強く抱きしめた。


 光因子が胸で震える。

 群れが低く唸り、スカイハウルを包囲した円が縮まる。


 まるで“嗅ぎつけている”ように。


 命ではなく――

 **光を。**


◇ ◇ ◇


「……なるほどな。」


 ルコールは刃を下げ、構え直した。


「誰かが誘導した群れ……

 その目的は“光因子”か“タグの反応検知”……

 どちらにせよ、ただの襲撃じゃねぇ。」


 群れが唸り、跳ぶ。


 ルコールは迎え撃つ。


 鋭い牙。

 膨れ上がる殺気。

 そのどれもが、最初に森で遭遇したものよりも“狂って”いた。


(……やっぱり、あの時の奴らとは違う。

 あれは自然の魔獣……これは――)


「――作られた個体、か。」


 確信が形になる。


◇ ◇ ◇


「フォティ!! 絶対にミラから離れるな!!」


「う、うん!!」


「塞いでおくぞ……一体残らず!!」


 ルコールの叫びが空を裂く。


 ダスクウォルフの群れが巨大な波のように押し寄せる。

 その影の奥に、“黒幕の気配”がうっすらと滲み始めていた。


(……これは試しだ。

 俺たちがどこまで進むか……

 誰かが“嗅ぎつけて”きてやがる。)


 鋼の刃が闇を裂いた。


 ここからが――本当の戦いだった。


(第33話 了)

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