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最強のハンター、神の光を拾う。〜滅びゆく世界で俺はもう一度守りたい〜  作者: 蛮ニル
第2章 影と囁き

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【第23話 沈む塔】

挿絵(By みてみん)

 ――地響きが、止まらなかった。


 焼け焦げた塔の根元。

 崩れかけた床の隙間から、淡い光が漏れていた。

 フォティが足を止め、目を細める。


「……下だ。まだ、誰かがいる。」


 ルコールは銃剣アッシュフォールを構えたまま、

 静かに崩落した瓦礫を見下ろす。

 下層から吹き上がる空気は熱を帯び、金属と血の匂いが混じっていた。


挿絵(By みてみん)


「フォティ、離れるな。ここは……生きてる要塞だ。」


「生きてる……?」


「ああ、こいつらはただの建物じゃねぇ。

 《世界救済団体》の研究支部は、根そのものが“機械”でできてやがる。」


 ルコールが言葉を終えるより早く、

 床の鉄板がうねり、まるで生き物のように波打った。

 残骸の中から腕――否、義肢の残骸が這い出してくる。


「……再生してる……!?」

 フォティが息を呑む。


「再生じゃねぇ、制御だ。

 こいつは《祈りの器》の残滓を利用して、死体ごと動かしてやがる。」


 瓦礫の隙間から覗いた白金の紋章が、一瞬だけ光った。

 その下、何かが呼吸をしているように見えた。


「行くぞ。止めねぇと、塔ごと飲まれる。」


「……うん。」


 二人は崩れた階段を駆け下りた。

 足を踏みしめるたび、階段が悲鳴のような軋みを上げる。

 壁は金属とも石ともつかない素材で、微かに脈を打っていた。

 フォティが指で触れると、そこに熱が返ってくる。

 まるで、生き物の皮膚のように。


 焦げた臭いと油の匂いが混じり、息を吸うたび喉が痛む。

 壁面には焼け焦げた文字――研究者たちの記録の断片。

 「試験体」「適合」「廃棄」。

 掠れたインクの中に、人の“恐怖”だけが生きていた。


「……これが、人間のやったことなのか。」

 フォティの声が震える。

 ルコールは返さず、ただ前を見据えた。


 その足元から、微かに光が滲み出した。

 フォティの歩いた跡が淡く光り、闇を照らしていく。


「フォティ、光量を抑えろ。敵に見つかる。」


「……これ、僕が出してるの?」


 ルコールが一瞬だけフォティを見る。

 少年の身体から、無意識に粒子のような光が漏れていた。

 まるで“この場所に反応している”ようだった。


「呼ばれてやがるな。まるで、鍵みてぇだ。」


 塔の底――不気味な鼓動音が響いた。

 光が一筋、下層へ導くように伸びている。

 そこには、黒く歪んだ扉。

 中央には教団の紋章と、深紅の点が刻まれていた。


「開くなよ、坊主。……罠の臭いがする。」


「でも、その向こうに“光”がある。」


 フォティの声が震えていた。

 ルコールは舌打ちをして、銃剣を構える。

「お前の“光”が本物なら……その扉、照らしてみろ。」


 フォティは目を閉じ、手を伸ばす。

 指先から淡い光が流れ出し、扉に触れる瞬間――

 金属が音を立てて軋み、紋章が淡く白に染まった。


 鈍い音とともに扉が開く。

 その奥から吹き出したのは、冷たい空気と――悲鳴のような声だった。


「ッ……なにこれ……!」


「下がれ、フォティ!」


 ルコールが前へ出る。

 扉の奥から、数体の影が這い出してきた。

 ――人でも、機械でもない。

 祈りの器たちの“失敗作”。

 脊椎が露出し、金属管に赤黒い血が通っている。


「《回収用再生体》……まだ動いてやがったか。」


 ルコールの声が低く響く。

 銃剣が一閃し、光と火花が散った。

 フォティも手を構え、光弾を放つ。

 しかし、撃ち抜かれた肉体はすぐに再生を始める。


「キリがねぇ!」

「なら、根を断つまでだ。」


 二人は背中合わせに戦い、奥へ進む。

 天井から滴る冷却液が、血のように床を濡らした。


 やがて、音が止む。

 静寂の中で、フォティが耳を澄ます。

 ――何かが呼んでいる。

 微かに、温かい光の気配。


 闇の中、かすかな声が響いた。


 ――フォティ。


 その瞬間、胸の奥が熱くなった。

 優しい、けれどどこか寂しげな声。

 彼は思わず立ち止まり、闇の先を見つめる。


「ルコ兄……今、僕の名前が聞こえた気がする。」


 ルコールは息を吐き、銃剣の先を闇へ向けた。

「……気のせいじゃねぇなら、行くしかねぇな。」


 塔の奥へ――闇の底へと二人は進む。

 壁の鼓動が強くなり、足元の光が導くように伸びていく。

 その先に、“失われた光”が待っているとも知らずに。


(第23話 了)

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