表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のハンター、神の光を拾う。〜滅びゆく世界で俺はもう一度守りたい〜  作者: 蛮ニル
第2章 影と囁き

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/91

【第22話 降下作戦】

挿絵(By みてみん)

 ――警告音が、夜明け前の格納庫に鳴り響いた。


《警告:クロウギア温度限界 臨界域突破》


 スカイハウルの整備区画。

 焼け焦げた両腕の外骨格が鈍く光を失い、冷却蒸気すら上がらない。

 ルコールの両腕に装着されたクロウギアは、真紅に灼けて沈黙していた。


「おい死神! 動くな、腕が吹き飛ぶぞ!」

 バルドの怒号が響く。

 「両腕の回路、オーバーヒートだ! 冷却系が完全に死んでる!」


 ルコールは息を吐き、焦げた金属を見下ろした。

 表面は歪み、装甲の継ぎ目から赤い光が漏れている。

 それでも彼の声は静かだった。


「……まだ燃えてやがるか。まったく、しぶとい機械だ。」


 パネルの表示は真っ赤に点滅していた。

《出力系統過熱 / 強制停止中》


 フォティは唇を噛みながら、焦げた外装を見つめた。

 融けかけた導線が火花を散らし、

 まるで“痛みに耐えている”ように見えた。


「……泣いてるみたいだ。」


「坊主、触るな!」

 バルドの声が飛ぶより早く、フォティは一歩踏み出していた。

 彼の指先が、赤熱した装甲にそっと触れる。


 瞬間――青い光が走る。

 光は導線を伝い、金属の奥へ染み込むように流れ込んでいった。


《システム再起動開始 冷却モード稼働》


 カチリ、と小さな音。

 次の瞬間、クロウギアの排熱弁が開き、

 白い蒸気が静かに噴き出した。

 高温の空気が吹き抜け、

 赤熱していた装甲が徐々に沈静していく。


「……ったく、燃費の悪ぃ骨董品だ。」

 バルドが苦笑しながら肩をすくめた。


 だが次の瞬間、計器の警告色が一転する。

 真っ赤だったメーターが一斉に緑へと変わった。


《エネルギー残量 100% / 温度安定》


「……は? おい、死神、見ろよこれ。」

 バルドが目を疑い、思わず計器を叩いた。

 「フルチャージ? 何の冗談だ、さっきまで空っぽだったぞ。」


 ルコールは眉をひそめ、右腕をゆっくりと握る。

 掌の内部から、低い駆動音が戻り始めていた。


「……蘇ったな。」


 フォティは小さく笑い、光の消えた掌を見つめた。

「……あったかかった。まだ、生きてたんだ。」


 ――そして、雲を抜けた先に戦場があった。


 眼下に広がるのは黒焦げの平原と、

 その中央にそびえる巨大な建造物。

 鋼鉄と石を組み合わせた異形の要塞。

 かつて《世界救済団体》第七支部と呼ばれた研究区画だ。


「……静かすぎる。」

 操縦席のバルドが呟いた。

 モニターに映る映像には、煙すら立ち上っていない。

 まるで全てが“終わった後”のような、不気味な静寂。


「第七支部は完全に封鎖されてる。

 残存エネルギー反応は……一箇所だけ。」

 フォティが目を閉じ、感覚を研ぎ澄ます。

 その小さな身体から、淡い光がわずかに漏れた。


「感じるか。」

 ルコールが短く問う。


「うん……“呼ばれてる”。あの奥だ。

 でも、なんか違う。セナの光じゃない……。」


 フォティの声がかすかに震えた。

 ルコールは銃剣アッシュフォールを握り直す。

「どのみち行くしかねぇ。」


 スカイハウルの側面ハッチが開いた。

 強風が吹き込み、砂と灰が舞う。

 外は夜明け前――地平線の向こうで雷雲がまだ光っている。


「降下ルート、風速安定。

 ただし……敵影反応、複数。」

 バルドが低く言った。

 「死神、先に行け。俺が空で援護する。」


「了解。」

 ルコールは一言だけ残し、背の外套を翻した。

 黒い影が風を切り、空へと溶けるように落ちていく。


「……ルコ兄……!」


 フォティが思わず立ち上がる。

 バルドが片手を伸ばし、制止した。

「やめとけ、坊主。お前には無理だ。地上まで持たねぇ。」


 だが、フォティは首を振った。

 目に宿る光は、恐怖ではなく“確信”だった。


「……大丈夫。いけそうなんだ。」


 その瞬間、彼の足元で淡い光が広がる。

 空気が震え、重力がふっと軽くなった。

 フォティの身体が――浮いた。

 ほんの2秒。

 それでも確かに、彼は“空中に留まっていた”。


「お、おい……今、浮かなかったか!?」

 バルドが目を見開く。

 フォティはそのまま光の尾を残し、風に乗って飛び出した。


 夜明けの空へ、光が駆け抜けた。


挿絵(By みてみん)


「坊主ゥ! いけそうって、そういう意味だったのかよッ!」


 バルドの叫びが、風にかき消される。

 ルコールは下方で戦闘態勢に入りながら、

 頭上を掠めた光の影に一瞬だけ目を奪われた。


「……なんだ今の。」


 地上。

 焼けた土の上に、フォティが着地した。

 膝をつきながらも、しっかりと立っていた。

 呼吸が荒い。汗が額を伝う。

 それでも、その瞳はまっすぐだった。


「ルコ兄……僕、来たよ。」


 ルコールがため息をつき、肩をすくめる。

「勝手な真似しやがって……だが、よくやった。」


 その瞬間、地面が震えた。

 金属音――地下から何かがせり上がる。

 瓦礫を突き破って現れたのは、

 半分が人間、半分が機械の兵士たち。

 ――第一世代《祈りの器ヴェッセル》。


「……来やがったな。」

 ルコールが銃剣を構える。

 フォティの周囲に、再び淡い光が揺らめく。


 祈りの器たちは無言のまま、ゆっくりと剣を構えた。

 その胸部には白金の紋章――《世界救済団体》の象徴。


挿絵(By みてみん)


「行くぞ、フォティ。」

「うん……!」


 閃光と銃声が交錯する。

 ルコールの銃剣が金属を貫き、

 フォティの光弾が空を裂いた。


 祈りの器たちは数で押してくる。

 その全てが、どこか“悲しげな”瞳をしていた。


「……壊したくねぇもんだな。」

 ルコールが歯を食いしばりながら呟く。

 だが、その手は止まらない。

 銃剣が唸りを上げ、再び光が走る。


 戦いの中、フォティが何かを感じ取った。

 要塞の奥――地下深くに、微かに“人の光”がある。


「ルコ兄! あの奥だ! 誰かが――!」


「行くぞ。」


 戦場を駆け抜け、二人は瓦礫の中へと突き進んだ。

 朝焼けが空を染め始め、崩れかけた塔が光を反射する。


 スカイハウルの上空で、バルドが苦笑した。

「……ったく、血は繋がっちゃいねぇが、

 兄貴に似てやがる。」


(第22話 了)

よろしければ、評価と気に入っていただければブックマークをお願いします。

執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
カチリ、と小さな音。  次の瞬間、クロウギアの排熱弁が開き、  白い蒸気が静かに噴き出した。  高温の空気が吹き抜け、  赤熱していた装甲が徐々に沈静していく。    ↑ここのメカ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ