【第18話 残響の果て】
初執筆、初投稿、良い歳したおっさんなので完走できるように長い目で見守ってください。
月曜日が基本固定休なので、月曜日更新を目指していきます。
イラストが難航中です。二章の終わりまでは一応小説は書き終わっています。
※2026/01/14 イラストを更新しました
【第18話 残響の果て】
――世界が、眩しすぎた。
崩れた山の斜面を、フォティはよろめきながら下っていた。
視界の奥にまだ白い残光が残っている。
まぶたの裏が熱い。
心臓の鼓動が耳の奥で鳴り続け、身体の奥を光が走る。
呼吸が荒い。
胸に抱えた割れたペンダントが、ひどく熱い。
何かが、自分の中で膨張している。
焦げた草と土の匂いが鼻を刺し、世界が軋むように歪んだ。
「……これが……俺の……?」
右手を見つめる。
指先から細い光の糸が立ちのぼり、
空気を焦がす。
熱い。だが、それは痛みではなく、**生きている証**のようだった。
風が鳴る。
その音に混じって、低い呻きが聞こえた。
瓦礫の陰で、金属の塊が動く。
焦げた装甲、黒い腕、そして……人の目。
フォティは息を呑んだ。
それは、教団の護衛兵――生体と機械を繋げた残骸だった。
全身は焼けただれているのに、まだ生きていた。
兵の片眼がフォティを捉えた瞬間、
喉の奥から異形の音が漏れた。
咆哮とも、泣き声ともつかない、壊れた魂の音。
「……やめろ……もう、戦うな……!」
フォティは叫ぶ。
だが兵は、制御の切れた機械のように腕を伸ばした。
刃が、月光を弾く。
――その瞬間、世界が白く閃いた。
フォティの手から、光が爆ぜた。
反射的に目を閉じたとき、
熱が、音をも呑み込んで消えていった。
静寂。
風の音だけが残った。
目を開けると、そこにはただ焼けた跡だけがあった。
敵の姿も、影も、何も残っていない。
焦げた匂いと、自分の震える息だけ。
「……俺が……やったのか……?」
膝が崩れる。
地面に手をついたフォティの肩が小刻みに震える。
掌の中の光はもう消えていた。
残ったのは、血の味と喉の痛み。
「違う……こんなはずじゃ……!」
目の前が滲む。
涙なのか、焼けた空気なのか分からない。
胸に残る温もりだけが、彼を現実につなぎ止めていた。
――光は人を救う。
そう信じていた。
けれど、今の光は、誰も救っていない。
そのとき、背後から声がした。
「……ずいぶん派手にやったな。」
フォティが振り返ると、
煙の向こうから二つの影が歩いてきた。
黒い外套に身を包んだ男と、無精髭の老人。
――ルコールと、バルド。
フォティの瞳が大きく揺れる。
言葉が出ない。
ただ、その姿を確かめるように一歩踏み出した。
「ルコ兄……!」
その声に、ルコールがわずかに目を細めた。
焦げた風の中で、口元に薄い笑みを浮かべる。
「……ルコ兄、ねぇ。
俺もいつの間に兄貴になったんだか。」
バルドが煙を吐きながら、にやりと笑った。
「悪くねぇ呼び方だろ、“死神”。
お前みてぇな奴には似合いすぎて笑えるがな。」
「うるせぇ、ジジイ。」
軽口のあと、ルコールの視線がフォティを射抜く。
しばらく無言のまま、彼は少年の瞳を見つめた。
「……見えるのか。」
短い言葉。けれど、その声には確かな感情が滲んでいた。
フォティは一瞬きょとんとし、すぐに微笑んだ。
「ええ。……今は、はっきり。」
ルコールの目がわずかに揺れる。
表情は変わらない。けれど、その奥で何かが解けていく。
「そうか。――ならもう、迷わねぇな。」
フォティは頷いた。
胸の奥で、静かに光が脈を打つ。
そのやり取りを見ていたバルドが、ふと目を伏せる。
口元の煙草を軽く弾き、灰を落とすように呟いた。
――あれが、“光の坊主”か。
話には聞いてたが、まさか生きて動く姿を見るとはな。
……お前さん、本当に化け物を拾ってきやがったな、“死神”。
バルドの心に、かすかな笑みが浮かぶ。
けれどそれは、どこか哀しげな色を帯びていた。
山を越えて、朝日が射した。
光が三人の影を長く伸ばす。
焦げた空の下で、またひとつの旅が始まる。
(第18話 了)
よろしければ、評価と気に入っていただければブックマークをお願いします。
執筆の励みになります。




