【第16話 墜落の残響】
初執筆、初投稿、良い歳したおっさんなので完走できるように長い目で見守ってください。
月曜日が基本固定休なので、月曜日更新を目指していきます。
職場で風邪もろうたぽいっすね。
※2026/01/13 イラストを更新しました
【第16話 墜落の残響】
――空が、軋んでいた。
黒雲の裂け目を抜けたスカイハウルは、
護送隊の中心機を追い詰めながらも、激しい迎撃を受けていた。
閃光が飛び交い、爆風が尾を裂く。
空全体が、金属の悲鳴で満たされていた。
「右翼、損傷! 燃料ラインが切れてる!」
バルドの怒声がコクピットに響く。
計器盤が赤く点滅し、煙が噴き出した。
「持たせろ! まだ終わってねぇ!」
ルコールは声を張り上げ、
外套の中のペンダント欠片を押さえた。
光が激しく鼓動し、まるで何かを急かすように震えている。
「……やべぇ、完全にロックされてやがる!」
バルドが操縦桿を引く。
敵機の魔導砲が唸りを上げ、光弾が一直線に迫った。
瞬間、ルコールが身を乗り出し、
銃剣を構えてハッチを開く。
外気が爆音と共に流れ込み、世界が白に弾けた。
「撃つ気か!? バカ言うな、ここで撃ったら――!」
「――やるしかねぇ!」
銃口から閃光が迸り、
弾丸が空を裂いて敵機の機関部に突き刺さる。
爆発が起こり、閃光が二人を包んだ。
だが衝撃の一部はスカイハウルの側面をも巻き込んだ。
右翼が折れ、プロペラが火を噴く。
「クソッ、バランス取れねぇ!」
バルドが叫び、警告灯が一斉に点滅する。
機体が傾き、雲の中へと沈んでいく。
「高度を落とす! このままじゃ――!」
「いい、行けるところまで行け!」
ルコールが叫ぶ。
機体の軋みが悲鳴に変わる。
だがバルドの顔には、諦めの色はなかった。
「吠えろ、老獣……まだ飛べるだろッ!」
その瞬間、左翼の推進機が再点火する。
青い魔導光が雲を貫き、スカイハウルが再び浮上する。
だがそれも束の間、機体は再び失速し、
山岳帯の影に向かって落下していった。
閃光。衝撃。音が消え、世界が遠ざかる。
――静寂の中。
バルドがかすかに笑う声がした。
「なぁルコール……俺たち、どこに帰るつもりだったんだろうな。」
「……そんなもん、行き先を決めた奴が“帰る場所”だろ。」
「へっ、説教くせぇな。だが悪くねぇ。」
彼らの言葉は、崩れる雲の中に溶けていった。
――同じ頃。
護送機〈ルーベリア二号〉の内部。
静寂の中、ラドクリフが計器に目を落としていた。
少女の脈拍が安定していたはずの波形が、
突然乱れた。
「……何だ?」
警報が鳴り響く。
計器が狂い、光が弾ける。
眠る少女の胸元――割れたペンダントが、強く光を放った。
「光因子、共鳴反応!? 出力が上がっている……!」
ラドクリフが叫ぶ。
青白い光が室内を満たし、計器が次々と焼き切れていく。
まるで光が、何かを拒絶しているようだった。
「目を覚ますな……今はまだ――」
その声を遮るように、
少女のまぶたが震えた。
闇の中に、声があった。
――フォティ、逃げて。
幼い記憶の残滓。
セナのまぶたの裏で、あの日の鐘の音が響いた。
“あの子を守りたい”――ただそれだけが、胸の奥で脈を打つ。
唇が動く。
「……ルコ……」
その名を呼んだ瞬間、封じられた光が弾けた。
閃光が機体全体を包み、
護送機の片翼が爆発する。
空が燃え、鋼が裂け、
光が涙のように流れ落ちていった。
燃える残骸の間を、ひとすじの光が走る。
それは祈りにも、願いにも見えた。
――そして。
遠く離れた地上で、一人の少年が空を見上げた。
雲の切れ間を渡るように、光の残滓が流れていく。
フォティは胸に手を当て、息を呑んだ。
そこに何かが、確かに触れた気がした。
あたたかくて、懐かしい――誰かの“光”が。
(第16話 了)
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