【第15話 雲の狭間】
初執筆、初投稿、良い歳したおっさんなので完走できるように長い目で見守ってください。
月曜日が基本固定休なので、月曜日更新を目指していきます。
スカイハウルのデザインめっちゃ悩んで投稿が遅れました。
※2026/01/13 イラストを変更しました
【第15話 雲の狭間】
――風が、裂けた。
スカイハウルの外殻をかすめる気流が火花のように散り、
鋼の翼が夜明け前の雲を切り裂いて進む。
遠くに、冷たい光が三つ。護送船団の灯りだ。
「前方、高度三千。三機編隊、中心機は……軍用輸送艇の改造型だな。」
バルドが操縦桿を握り、視界の端で義眼を光らせた。
「まるで古い時代の亡霊が空を飛んでやがる。」
「亡霊の中には、生きてる奴もいる。」
ルコールは副座に座り、銃剣を分解して整備していた。
刃の根元には、弾丸のような魔導結晶が埋め込まれている。
光の残滓を帯びた結晶が、彼の指先でわずかに震えた。
「距離、六千。レーダーに引っかかってやがる。どうする?」
「構うな。反応を絞れ。真正面からは行かねぇ。」
ルコールは計器盤の下に体を沈め、
床に固定された黒いケースを開いた。
中には、手製の魔導爆薬と発煙弾が整然と並んでいる。
「いつの間にそんなもん作ったんだよ。」
「拾ったスクラップは使う主義だ。」
バルドは苦笑し、操縦桿を倒した。
スカイハウルが急降下に入り、雲海の中へ姿を消す。
機体が揺れるたび、軋む音が金属の悲鳴のように響いた。
だがその音は、不思議と懐かしくもあった。
バルドは計器に手を置き、低く囁く。
「吠えろよ、老獣……まだ終わっちゃいねぇ。」
鋼が応えるように低く唸る。
エンジンの鼓動が、まるで心臓のように甲板全体を震わせた。
機体は古い。だがまだ飛べる――そう主張するように。
雲の下には、灰色の空と遠くに連なる山脈。
護送隊のエンジン音が風の隙間に滲む。
「距離四千……三千。迎撃来るぞ。」
警告音が鳴ると同時に、
空を切る光弾が走った。
白い閃光がスカイハウルの機体をかすめ、翼端が焦げる。
「チッ、気づかれてやがる!」
バルドが怒鳴り、舵を切る。
重力が機体を押し潰すようにのしかかる。
ルコールは座席を蹴って立ち上がり、
背後のハッチを開けた。
怒涛の風が吹き込み、外套がはためく。
「何してやがる!」
バルドが叫ぶ。
「見てろ。」
ルコールはロープで腰を固定し、
銃剣を外の風に向けて構えた。
刃先が空気を裂く。
照準に合わせ、トリガーを引く。
銃剣の先端から迸る弾丸が、風の軌跡を描いて放たれた。
瞬間、敵機の片翼が爆ぜ、炎の花が空に咲く。
轟音とともに爆煙が広がり、編隊が乱れる。
「よくもまあ、そんな芸当を……!」
バルドが舌を巻く。
ルコールは返事をせず、もう一発を装填した。
銃口がきらめくたび、敵の光がひとつずつ消えていく。
「ルコール!」
バルドが警告する。
「中心機が動かねぇ……!」
その言葉と同時に、中央の輸送艇の船腹が開いた。
内部から放たれる光。
それは銃火でも魔導でもない。
“何か”が起動していた。
「……まさか、あの中に。」
ルコールは眉をひそめた。
ペンダントの欠片が、胸の内で強く光る。
冷たい青の輝きが外套の隙間から漏れ出した。
「おい、ハンター。お前の玩具が反応してやがるぞ。」
「玩具じゃねぇ。」
ルコールは低く言った。
その声には、決意というより――願いがあった。
「――“光”が、あそこにいる。」
スカイハウルが旋回に入る。
雲の裂け目の向こうで、金属の巨体が光を放つ。
青と白の閃光が空を満たし、風が爆ぜた。
轟音の中で、バルドが短く呟く。
「帰るところがある奴は、無茶をするんだな……」
ルコールはその言葉に、わずかに笑った。
だがその笑みは、遠い空の彼方に溶けていった。
(第15話 了)
よろしければ、評価と気に入っていただければブックマークをお願いします。
執筆の励みになります。




